1月19日にサンフランシスコ・ジャイアンツへの入団が発表された青木宣親を尊敬してやまない選手がいる。友永翔太だ。プロ野球選手としては小柄ながら、俊足、巧打の外野手と、2人のタイプは似通っている。そんな友永には、彼独特の野球観がある。果たして、友永翔太とはどんな考えをもった選手なのか。
 目標は常に高く、かつ2つ以上持つ

―― ドラフトで名前を呼ばれた時の気持ちは?
友永: 正直、自分では「もしかしたら……」というくらいで、まさか本当に指名されるとは思っていなかったんです。それなのに3位と上位で指名されたので、嬉しいというよりも驚きの方が大きかったです。

―― 指名されると思っていなかったのはなぜ?
友永: もちろん、「プロ野球でやる」ということを目標にしてやってはきましたが、それでもまだ自分はそのレベルには達していないと思っていたんです。2014年シーズンは要所で打てていたので、「前年よりは評価してもらえるかな」とは思っていました。それでも、プロに行くにはまだまだだと思いながらプレーしていたので、名前を呼ばれた時は、夢を見ているような感覚でした。

―― プロになると自覚したのは?
友永: 入団会見の時ですね。初めて中日の帽子をかぶって、自分の名前と背番号が入ったユニフォームに袖を通した時に、「あぁ、もうスタートしているんだな。ここからなんやな」という思いが湧きあがってきました。

―― プロでの目標は?
友永: 目標は高く、「3割、30盗塁」を目指していきたいと思っています。社会人時代に思ったのは、目標がないとうまくならないなと。それと目標をひとつにしてしまうと、達成してしまった時に、何もなくなって「もうこれでいいや」となってしまう。だから、常に目標は目の前のものと、遠くのものと、少なくとも2つは持つようにしているんです。それに、目標は届かないくらいのところにある方がいいかなと。

―― 目標を常に2つ以上もとうとしたきっかけはあるのでしょうか?
友永: 例えば、外をランニングしていて、目の前に横断歩道があったとしますよね。その時に「青信号のうちに渡ってしまおう」と思ってバーッと勢いよく走ると、渡り切ったとたんに安心してペースダウンしてしまう。これは「渡り切る」という目標を達成したとたんに、目標がなくなってしまうからなんです。でも、もし渡り切った後にも次の目標があれば、もっと先までペースダウンせずに走っていくことができると思うんです。それって野球にも当てはまるんじゃないかなと。

―― 目指す選手像は?
友永: 青木宣親さんを目標にしています。特に青木選手のバッティングがとても好きなんです。ホームランを打てる力はありますが、それでもアベレージヒッターに徹している。自分の特徴や役割を理解しているところが、とても尊敬できるなと。身長も僕とほとんど変わらないのに、メジャーリーグでもあれだけ活躍しているので、自信になりますよね。

 実感した外野手の難しさとやりがい

―― 一番のアピールポイントは?
友永: 一応、足とは言っているのですが、僕自身は打つ、走る、守る、そのすべてのプレーを見てもらいたいと思っているんです。守備では外野での動きとかバックホーム、打撃においても野手の間を抜けていく打球とか……。そして足をいかして三塁打にしたり、二塁から一気にホームに返ってきたり……。どれも疎かにしてはいけないと思ってこれまでやってきたので、僕の野球はどれかひとつというものではないんです。

―― 現在は外野手ですが、大学の途中までは内野手でした。
友永: 大学2年に外野に転向しました。ずっとショートをやっていたのですが、大学時代は僕のひとつ上に守備の巧い先輩がいたんです。僕自身もその選手は抜けないなと思っていました。そしたらある日、監督さんから「来季、オマエを使ってみたいから、外野をやってみろ」と言われたんです。それで「センターならできます」と。

―― センターの経験は?
友永: あったといえばあったのですが、小学生の時に少しやったくらいでしたから、正直「できるかな?」という不安はありました。最初はみんなに聞きながらやっていましたね。それでも2年の秋にはベストナインをいただきました。それからずっとセンターです。

―― 外野の守備で最も難しいのは?
友永: フライを捕ることと、正確にボールを投げることですね。フライが上がって、「ここだ」と瞬時に判断して打球の落下地点にパッと行くのは、なかなか難しいんです。とにかく練習でたくさん打球を見ることが大事です。だから、バッティング練習の時も、ずっと打球を追いかけていましたね。打球の軌道を読んで、パッとスタートが切れるようになったのは、4年になってからです。もちろん内野は難しいですけど、ひとつのミスで失点しまう危険性がある外野の守備も同じくらい難しいということが、やってみてわかりました。

―― 外野手はどこを見て打球を判断するのでしょう?
友永: 僕はまず、バッターのスイングを見ています。体が開いているバッターなら、打球がシュートしたりするんです。バットの軌道と同時に、ピッチャーの球筋も見ています。ボールがシュート回転するピッチャーがインコースに投げたら、「詰まって前に落ちるな」とか、体が開いているバッターにカーブを投げたら「大きいのがあるかもしれない」などと、どんな打球が来るかを頭の中で常にイメージしています。

―― 外野手としてのやりがいは?
友永: ダイビングキャッチとか、バックホームでランナーを刺した時は、やりがいを感じますね。ただ、攻守交代して、自分が先頭打者の時は、長距離を全力ダッシュしてベンチに戻らなければいけないので、正直疲れます(笑)。

 社会人で可能となった試合中での修正

―― 打撃面では打席で構えた時に、バットを一度、前後に大きく振っています。その理由は?
友永: 新日鉄住金かずさマジックの補強選手として出場した14年の都市対抗で、思い切って何か変えてみようかなと思ったんです。自分のチームだと与えられた仕事に徹しなければいけませんが、補強は結構自由にさせてもらえるので、いいチャンスかなと思ったんです。その時に、同じチームから補強で来ていた澤村幸明さんが前後に大きく振っているのを見て、自分もやってみようかなと。そしたら、振り出す前にバットのヘッドを感じることができたんです。それを自分の間に来たときにピタッと止めて、そこから打ち出した時に、思った以上にうまくはまった。思えば、これまでも調子のいい時には打席でタイミングをとる時にバットが動いているのに、調子が悪くなるとバットが止まると指摘されていたんです。

―― 調子が悪くなるとバットの動きが止まるのはなぜ?
友永: おそらく調子が悪くなると、「タイミングをとろう、とろう」という意識が強すぎて、待とうとするんでしょうね。でも、止まった状態からタイミングをとるのは案外難しいんです。守備もそうですが、動きの中で自分の間があってこそタイミングを合わせることができるんです。

―― 都市対抗で変えようと思った理由は?
友永: 特にこれといった理由があったわけではありません。僕はよくタイミングのとり方を変えるんです。バットを回してみたり、前後に振ってみたり……。そのシーズン、その試合、その打席に合ったタイミングのとり方をするんです。だから試合中でも、途中で足を上げてみたり、すり足にしてみたりして試行錯誤することがよくあります。要は振り遅れるからバットを短く持つのと同じで、そのピッチャーに合うタイミングを模索して、試合の中でも修正するんです。社会人に入ってから、それができるようになりましたね。


 実感した打席前の準備の重要性

―― 社会人で学んだこととは?
友永: 準備することの大切さですね。打席に入る前のルーティンがあって、バットを軽く振って、体に染み込ませてから打席に向かうのですが、疲れてくると、それを怠ることがあるんです。でも、そういう時は決まって凡打して、後から「何でやらなかったんだろう」と。こういう小さなことの積み重ねが後々、大きな敗因になったりするんですよ。振り返ると、僕が打っていれば勝てた試合はたくさんあったと思うんです。そういう後悔をプロではしないようにしなければいけないと思っています。

―― 一番の後悔は?
友永: 最後の日本選手権です。最後の打席はサードゴロだったのですが、2ストライクに追い込まれていたということもあって、ちょこんと当てにいってしまったんです。あそこでもっと割り切って打席に立って振れていたら、もっといい当たりの打球になって、外野に抜けていたかもしれません。追い込まれた状況でも、気持ちの面で追い込まれてはいけないなと。そういう部分においても強い選手になりたいと思います。

―― 今の気持ちを言葉で表すと?
友永: 「全力」です。プロ1年目は、今ある勢いを大事にして、持ち味である全力プレーで思い切りぶつかっていきたいと思っています。

友永翔太(ともなが・しょうた)
1991年4月1日、神奈川県生まれ。東海大相模高から国際武道大に進学。2年時に内野手から外野手に転向し、同年秋に打率3割4分1厘、5打点をマークしてベストナインに選出された。4年秋にも2度目のベストナインを受賞。2013年に日本通運に入社し、2年目の日本選手権、2回戦では5安打4打点の猛打賞。50メートル5秒8の俊足の持ち主。170センチ、76キロ。右投左打。

(聞き手・斎藤寿子)

☆プレゼント☆
 友永翔太選手の直筆サインボールを抽選で2名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の冒頭に「友永翔太選手のサインボール希望」と明記の上、住所、氏名、連絡先(電話番号)、この記事への感想をお書き添えの上、送信してください。当選は発表をもってかえさせていただきます。なお、締切は2015年2月10日(火)とさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。