第99回サッカー天皇杯決勝戦・ヴィッセル神戸対鹿島アントラーズの一戦が1日、国立競技場で行われ、神戸が2対0で勝利した。この決勝戦が新しくできた国立競技場での初となるスポーツ公式戦となった。試合は前半18分にオウンゴールで神戸が先制した。さらに38分にFW藤本憲明の左足のゴールで追加点を奪い逃げ切った。神戸はクラブ創設25年目にして、初のタイトル獲得となった。

 

 引退のビジャ、終了間際に出場(国立)

ヴィッセル神戸 2-0 鹿島アントラーズ

【得点】

[ヴィ] オウンゴール(18分)、藤本憲明(38分)

 

 21冠目を狙う鹿島ではなく、初タイトルをかけて戦った神戸に軍配があがった。得意のパスサッカーで主導権を握り、前半で神戸が勝負を決めた。

 

 神戸は10分にFW古橋亨梧、その3分後に藤本に決定機が訪れるがシュートは枠外。得点には至らなかったが、サイドを深くえぐりチャンスを作った。決勝戦ではこのかたちが機能した。

 

 18分、MF酒井高徳が左サイドを深くえぐる。FWルーカス・ポドルスキが酒井からボールを受け取り、角度のないところから左足で強烈なシュートを見舞う。これはGKクォン・スンテが弾くがゴール前にボールがこぼれ、藤本のマークについていた鹿島のDF犬飼智也の足に当たりオウンゴールを誘発した。

 

 追いつきたい鹿島だったが、前線からのプレスがハマらない上、神戸の藤本と古橋にDFラインの裏を執拗に狙われた。彼らのスピードを警戒したためか、全体を押し上げたいが間延びした状態が長く続く。鹿島の迫力あるプレスは鳴りを潜めた。

 

 すると38分。神戸が右サイドからチャンスを演出する。過去、鹿島に所属したMF西大伍が右サイドから低く速いクロスを供給。鹿島の犬飼がクリアーを試みるがボールは股下をすり抜け、ニアサイドに走り込んだ藤本が左足で押し込み、追加点を奪った。

 

 こうなると神戸の思うつぼだった。3バックとGKでうまくパスを回し、鹿島をじらす。鹿島はプレスの圧力を強めたいが、FW、MF、DFの3ラインの距離が遠かった。

 

 後半に入ると鹿島は3バック気味にシステムを変更。神戸と同じシステムでプレスをかけたが、時すでに遅し。終了間際にはこの試合限りで引退を表明しているFWダビド・ビジャも出場させることができた神戸が、クラブ創設25年目で初となるタイトルを獲得した。

 

 試合後、現役生活にピリオドを打ったビジャは、こう口にした。

「リーグ戦最後の磐田戦で全治4週間の大きな怪我をしてしまった。決勝に来るまでも僕の中では戦いだった。何とかピッチに立てて、優勝で終われたことは満足しています。これでキャリアが終わる。クリスマスも天皇杯のために時間を使ったので、これからは家族のために捧げたいと思います」

 

 今後については「マドリードで暮らす」とのことだが「ニューヨークでアカデミーが立ち上がったり、いろいろなプロジェクトがある。そういったものに携わりながらサッカーにかかわっていきます」と語った。

 

 神戸イレブンは世界的FWの引退に、タイトル獲得というこれ以上ないかたちで花を添えた。

 

(文/大木雄貴)