今季、埼玉武蔵ヒートベアーズの監督として3年目のシーズンを迎えます。創設以来ずっと選手、コーチ、監督と立場を変えながら関わってきたこともありチームの成長をひしひしと感じています。例年以上の手応えを持って迎える開幕が今から非常に楽しみですね。

 

 1試合を大事にする理由

 昨シーズンはNPBドラフト会議で2人(松岡洸希・埼玉西武3位、加藤壮太・巨人育成2位)が指名を受け、チームとして一定の成果があったと思います。また監督就任時から掲げている「負けに慣れない」「勝ちぐせをつける」という方針も選手に繰り返したことで浸透してきました。

 

 毎試合、「勝つぞ」という気持ちで臨んでいるわけですが、当然、リーグ戦ですから負ける試合もあります。でも「勝つ」という気持ちを持つことは重要です。選手には「自分たちにとっては70試合のうちの1つだけど、お客さんにとっては1回きりの試合かもしれない。そう考えてプレーしろ」と常に言っています。そうしたことを意識して試合に臨むのが、「負けに慣れない」「勝ちぐせをつける」ことの本当の意味だと考えています。

 

 今季、注目の選手としては愛媛マンダリンパイレーツから移籍の外野手・梶栄斗。あと2年目の内野手・吉田大就ですね。投手では宮川将(コーチ兼任)と辻空。投手の2人はNPB経験者ですから、「今季こそ」との気持ちでシーズンに臨んでもらいたいですね。

 

 今季はチームの平均年齢が過去2シーズンより高く、技術の面では何も言うことがありません。オフも早い段階から動き出していて、選手のモチベーションも高い。監督になってから選手たちの自主性を重んじ、「自分たちで考えて行動する」ことを意識させていて、それも浸透してきました。今季、半数近くの選手が入れ替わりましたが、ずっと武蔵にいる選手が自主的に練習でも何でも行うことで、新人も「自分たちもやらなきゃいけない」と考え行動する雰囲気が作られています。こうしたことが積み重なって武蔵の伝統、チームカラーになっていくんでしょう。

 

 昨年のドラフトで西武から指名された松岡は武蔵に入団してから伸びた選手です。加藤が初めからNPBを狙える選手だったとすれば、松岡は予想外の伸びを見せてドラフトにかかった。うちはBCリーグで一番の練習量を誇るので、そこで松岡も伸びたんだと思っています。今年も練習、そして試合でグーンと伸びる、そういう選手が出てくることを期待しています。ファンの人にもそういう選手を是非見つけてほしいですね。

 

 現場、フロントが一体となって地域密着、地元のファンを喜ばせるために戦っていきます。選手は試合に勝つのはもちろんですし、それ以外にもファンサービス、地域貢献などひとりのプロ選手、社会人としての自覚を持って日々を過ごしてもらいたい。監督3年目の今季、チームに手応えもあり、勝負の年だと思っています。埼玉の人たちに夢を与えられるようなプレーを見せたい。選手一丸となって頑張りますので、埼玉武蔵ヒートベアーズへ今年も熱烈な応援をよろしくお願いいたします。

 

<角晃多(すみ・こうた)プロフィール>埼玉武蔵ヒートベアーズ監督
1991年1月13日、神奈川県出身。東海大相模中から同高野球部へ進み、4番として活躍した。甲子園出場は果たせなかったが高校通算36本塁打をマーク。卒業後、08年秋のドラフト会議で千葉ロッテから育成3位指名を受けて入団。プロ入り3年目の11年、育成選手として初のイースタンリーグ月間MVP(3・4月)を受賞。翌12年に支配下選手として登録された。14年オフ、戦力外通告を受け、15年にBCリーグ武蔵(当時)へ入団。シーズン途中からキャプテンに就任し、15年ベストナイン受賞。16年、野手コーチ補佐、17年限りで現役を引退し、翌18年から監督に就任した。

 

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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