(写真:18年8月の初参戦以降、RIZINで6連勝中の朝倉未来 ⓒRIZIN FF)

 今年の2月は妙に暖かい。東京に雪が降る気配もなく、もう春が訪れた感じだ。花粉症持ちの私は、ちょっとビクビクしている。

 

 暖冬とは関係ないだろうが、今年は『RIZIN』の開戦が2カ月早まった。

 例年は第1弾興行が4月開催。だが2020年は、2月22日、浜松アリーナで初戦となる『RIZIN21』が行われる。

 

『RIZIN』が静岡県で開かれるのは今回が初めて。『PRIDE』『DREAM』にさかのぼっても静岡開催は一度もない。『PRIDE』がスタートしたのは1997年だから、24年目にして初の静岡における総合格闘技ビッグイベント。記念すべき大会となる。

 

 オープニングファイトを含め13試合が行われるが、メインを務めるのは、浜松からほど近い豊橋出身のファイター、朝倉未来(トライフォース赤坂)。68キロ契約、ヒジ攻撃有りのルールで、メキシコ人のダニエル・サラスを迎え討つこととなった。

 

『RIZIN』参戦以降、6戦6勝。昨年の大晦日『RIZIN20』では、『Bellator』との対抗戦で大将を務め、ジョン・マカパ(ブラジル)に圧勝した朝倉は、いま乗りに乗っている。

 

 そんな彼は、2月13日に、トライフォース赤坂で公開練習を行い、集まった報道陣に対して、こう話した。

「去年10月頃のサラスの試合を(映像で)観ました。気持ちは結構強くてタフな印象ですね。でも、俺の相手じゃないかなと思う。

 テイクダウンを取られることはないし、打撃は自分の方が強い。ただ、打たれ強さはあります。今回の試合の課題は倒し切れるかどうか。リスクを背負ってでも、判定ではなく倒しにいきたい」

 

 漂い始めた風格

 

(写真:ここ3戦は判定勝ちが続いている。今回はKO勝ちを狙う ⓒRIZIN FF)

 確かにサラスは、それほど強いパンチを持つ選手ではない。おそらくはテイクダウンを狙い、グラウンドでの攻防で勝機を見出す作戦を立てリングに上がることだろう。

 

 試合がスタンドで繰り広げられれば、打撃力と当て勘で勝る朝倉が有利だ。だが、もしサラスがグラウンドに引き込み、優位のポジションを得ることができれば、試合の行方はどうなるかわからない。

 

 今年は年末に向けて『RIZINフェザー級グランプリ』が開催される予定になっている。当然、朝倉も主役格で参戦することになる。そこに向けてもインパクトのある勝ち方が求められよう。

 

 昨年末に朝倉が愛知県内の少年院へ足を運び、在院者たちを前に話している姿を映像で観た。喋りが、とても上手で驚いた。アウトサイダー時代とは随分、違っていた。

 

 自信を宿し、風格が漂い始めている。

『RIZIN』のエースに、そして日本総合格闘技界のトップにのし上がれるか否か。オリンピックイヤーである2020年は、朝倉未来にとって、大勝負の年になる。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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