8日、第91回競泳日本選手権2日目が行われ、男子100メートル平泳ぎ決勝で小関也朱篤(ミキハウス)が59秒73で2連覇を達成した。2位には立石諒(ミキハウス)が1分0秒04で入り、北島康介(アクエリアス)は1分0秒18で3位だった。小関と立石は派遣標準記録(1分0秒04)を突破し、世界選手権代表に内定した。男子100メートル背泳ぎ決勝では入江陵介(イトマン東進)が52秒99で優勝。2年連続3度目の優勝を果たした入江は、2位に入った金子雅紀(YURAS)とともに派遣標準記録(53秒67)をクリアし、世界選手権代表入りを決めた。その他の種目では男子50メートルバタフライを川本武史(中京大)が、同800メートル自由形を宮本陽輔(自衛隊)が、女子100メートルバタフライを星奈津美(ミズノ)が制したが、いずれも派遣標準記録には届かなかった。
(写真:北島ら五輪メダリストを抑え優勝した小関)
 男子平泳ぎの新エースに名乗り

 平泳ぎ3冠へ向けて、好発進だ。小関がただひとり1分を切り、日本選手権V2を達成した。前日に行われた予選、準決勝をいずれも全体トップで通過。順調に決勝へとコマを進めた。

 迎えた決勝は第4コース。両隣には立石、北島と、2人のオリンピックメダリストに挟まれ、「自分はまだ場数が少ない。気持ちで押された」というが、スタートから抜け出したのは小関だった。身長188センチの体躯を生かしたダイナミックな泳ぎで、残り50メートルで追い上げてくる2人の先輩から逃げ切った。

 昨年ブレークした小関は、平泳ぎを引っ張っていく存在として期待されている。「接戦になることはわかっていた。絶対に負けるわけにはいかない」と意地の連覇。世界選手権行きの切符を初めて掴み取った。「優勝と代表入りはすごくうれしいが、タイムは納得できるものではない」と59秒前半を目指していただけに、59秒73という記録に不満を見せた。

 小関は50メートルと200メートルの平泳ぎ2種目にもエントリー。前回大会では達成できなかった平泳ぎ3冠に挑む。「もちろん狙っているし、200メートルでは世界記録を狙いたい」と豪語した。これまで男子平泳ぎをリードしてきた北島と立石に2年連続で勝った実力は本物だ。「日本の平泳ぎを背負ってメダルを獲りたい」。23歳の大型スイマーが、新エースに堂々と名乗りを挙げる。

「桜のように散ってしまった」。一方で平泳ぎの第一人者・北島は、目標としていた59秒台に届かず、3位で2年ぶりの代表入りはならなかった。今大会はこの種目のみにエントリーしていたため、これで終戦。9月で33歳になる北島は「来年、桜を咲かせたい気持ちもあるが、今は終わったばかりなのですぐには考えられない」と、進退については明言を避けた。

 慌てず動ぜず、王者の余裕

 コースは間違えても、“定位置”は間違えなかった。男子100メートル背泳ぎは入江が連覇を達成。王者が「刺激でしかいないし、脅威でしかない」と語っていた萩野公介(東洋大)は今年はエントリーしなかったため、入江の独壇場となった。

 決勝のスタート前、予選1位の入江がいるはずの第4コースには誰もいなかった。入江はコースを勘違いし、第5コースのスタート台の後ろでイスに座り、集中を高めていたのだ。ふと自分の間違いに気付いた時には後続が詰まっていた。「人生初です」というミス。それで慌てるほどヤワな男ではなかった。

 レースはスタートから金子らに先行を許した。それでも背泳ぎのエースは「想定内」と動じない。すぐに抜いて、先頭でターン。バサロで金子に一度はかわされ、再び追う展開となったが、浮き上がってからすぐに抜き返した。終わってみれば体半分ほどの差をつけての1着。自らの持つ日本記録には0秒75及ばなかったが、52秒99でゴールした。

 オフからスピードを強化してきたが、まだレースでは「噛み合っていない」という。納得のいく泳ぎができたのはラスト15メートルのみ。「ここはあくまで選考会。夏への課題を見つけられた」と悲観はしていない。今大会は、エントリーしていた9日の50メートルは棄権。10日からの200メートルに照準を合わせる。

 2日目の主な結果は次の通り。

<男子50メートルバタフライ・決勝>
1位 川本武史(中京大) 23秒60
2位 岸田真幸(アクラブ調布) 23秒63
3位 井田憲吾(自衛隊) 23秒86

<男子100メートル背泳ぎ・決勝>
1位 入江陵介(イトマン東進) 52秒99
2位 金子雅紀(YURAS) 53秒56
3位 長谷川純也(中京大) 54秒00

<男子100メートル平泳ぎ・決勝>
1位 小関也朱篤(ミキハウス) 59秒73
2位 立石諒(ミキハウス) 1分0秒04
3位 北島康介(アクエリアス) 1分0秒18

<男子800メートル自由形・決勝>
1位 宮本陽輔(自衛隊) 7分53秒05
2位 平井彬嗣(明治大) 7分56秒29
3位 山本耕平(ミズノ) 7分58秒33

<女子100メートルバタフライ・決勝>
1位 星奈津美(ミズノ) 58秒62
2位 細田梨乃(コナミ) 59秒06
3位 福田智代(コナミ) 59秒52

※選手名の太字は世界選手権代表内定

(文・写真/杉浦泰介)