9日、第91回競泳日本選手権3日目が行われ、男子200メートル自由形決勝で萩野公介(東洋大)が1分45秒82で優勝し、3連覇を達成した。萩野は派遣標準記録(1分46秒94)を突破し、8月の世界選手権(ロシア)代表に内定。3年連続で自由形2種目を制した。女子100メートル平泳ぎでは、渡部香生子(JSS立石)が1分6秒45で連覇。渡部は派遣標準記録(1分7秒22)をクリアし、2大会連続の世界選手権代表を決めた。女子200メートル自由形決勝は五十嵐千尋(日本体育大)が制し、3位には中学3年の池江璃花子(ルネサンス亀戸)が入った。五十嵐と池江は個人での派遣標準記録(1分57秒37)突破はならなかったが、持田早智(ルネサンス幕張)、青木智美(STSC.YW)とともにリレーでの代表入りを果たした。その他の種目は男子50メートル背泳ぎは古賀淳也(第一三共)が、同50メートル平泳ぎは崎本浩成(コナミ)が、女子100メートル背泳は赤瀬紗也香(日本体育大)が優勝したが、いずれも派遣標準記録には届かなかった。女子50メートル自由形準決勝で内田美希(東洋大)が24秒97の日本新記録をマークし、決勝に進出した。
(写真:この日は200M個人メドレーにも出場し、計3レース泳いだ萩野)
 もはや勝つこと自体に驚きはない。それほどまでに萩野と渡部は、日本競泳界の顔となりつつある。折り返しとなる大会3日目に萩野が自由形2冠、渡部は平泳ぎ2冠を達成した。

「今大会で一番気持ちよく泳げた」。200メートル自由形決勝を萩野はこう振り返った。レース序盤は日本記録を上回るペースで坂田怜央(イトマン近大)が飛ばす。萩野は「自分は落ち着いていこう」と最初の50メートルは、坂田と0秒67差で入った。50〜100メートルは力を抜いたという萩野。なおも日本記録を更新するペースで泳ぐ坂田と1秒以上の差が開いた。

 後半が持ち味の萩野。ここから本領を発揮する。残り50メートルで0秒12まで差をつめると、最後は身体ひとつ分ほど抜け出してフィニッシュした。優勝タイム1分45秒82は、自らの日本記録には及ばなかったが「ギリギリOKライン」と本人も納得している。決して本調子ではないが、「やっと身体が使えてきたイメージ」とレースをこなしながら仕上げてきた感がある。

 この種目の3連覇を決め、残すは本職の個人メドレー2種目だ。4冠について「自分のレースをすれば勝てると思っている」と自信を窺わせる。日本新記録を連発した過去2大会に比べると、今のところインパクトは小さい。徐々に調子は上向いてきているだけに、自身のレースパターン同様に後半から爆発するのか。

 一方、渡部は100メートル背泳ぎ決勝で快勝。北京五輪代表の金藤理絵(Jaked)とロンドン五輪代表の松島美菜(セントラルスポーツ)や、今井月(本巣SS)と宮坂倖乃(コナミ北浦和)の勢いのある中学生コンビを寄せ付けなかった。
(写真:レース前、観客席に手を振り、リラックスした表情を見せる渡部)

 渡部は序盤からリードを奪うと、最後まで先頭を譲らなかった。この種目で連覇を達成。大会初日の50メートルと合わせて平泳ぎ2冠目を掴み取った。1分6秒45のタイムでロシア行きの切符は手にしたが、「最低でも5秒台出したかった」と唇を噛んだ。この悔しさは「200メートルの個人メドレーと平泳ぎで晴らしたい」と残りの2種目での力泳を誓う。

 萩野、渡部ともに明日は200メートル個人メドレー決勝を控える。準決勝をトップのタイムで通過した2人に今のところ優勝への死角は見当たらない。


 3日目の主な結果は次の通り。

<男子50メートル背泳ぎ・決勝>
1位 古賀淳也(第一三共) 24秒75
2位 川本武史(中京大) 25秒21
3位 長谷川純矢(中京大) 25秒22

<男子50メートル平泳ぎ・決勝>
1位 崎本浩成(コナミ) 27秒68
2位 野村陵太(濃尾電機) 27秒74
3位 小関也朱篤(ミキハウス) 27秒78

<男子200メートル自由形・決勝>
1位 萩野公介(東洋大) 1分45秒82
2位 瀬戸大也(JSS毛呂山) 1分47秒71
3位 小堀勇氣(東京SC) 1分47秒73
4位 天井翼(東洋大) 1分47秒74
(写真:同い年の天井<右>の代表入りを喜ぶ萩野)

<女子100メートル背泳ぎ・決勝>
1位 赤瀬紗也香(日本体育大) 1分0秒83
2位 稲田法子(セントラルスポーツ) 1分1秒27
3位 高橋美紀(中京大) 1分1秒57

<女子100メートル平泳ぎ・決勝>
1位 渡部香生子(JSS立石) 1分6秒45
2位 今井月(本巣SS) 1分7秒46
3位 金藤理絵(Jaked) 1分7秒61

<女子200メートル自由形・決勝>
1位 五十嵐千尋(日本体育大) 1分58秒12
2位 持田早智(ルネサンス幕張) 1分58秒69
3位 池江璃花子(ルネサンス亀戸) 1分58秒77 ※中学新
4位 青木智美(STSC.YW) 1分59秒80
(写真:五十嵐は400M自由形と合わせて自由形2冠)

※選手名の太字は世界選手権代表内定。瀬戸、小堀、天谷、五十嵐、持田、池江、青木は個人種目の派遣標準記録突破ならずも、リレーメンバーとして代表入り。

(文・写真/杉浦泰介)