7日、競泳の世界選手権(8月・ロシア)代表選考会を兼ねた「第91回日本選手権競技大会」が東京辰巳国際水泳場で開幕し、決勝4種目が行われた。昨年4冠の萩野公介(東洋大)は男子400メートル自由形決勝を3分45秒19で制し、この種目3連覇を達成した。萩野は派遣標準記録2(3分46秒18)を突破し、世界選手権代表に内定。女子50メートル平泳ぎは渡部香生子(JSS立石)が31秒07で初優勝を果たすが、派遣標準に届かず、この種目での代表内定とはならなかった。女子50メートル背泳ぎは稲田法子(セントラルスポーツ)が初制覇、同400メートル自由形は五十嵐千尋(日本体育大)が3連覇した。その他、男子200メートル平泳ぎでは北島康介(アクエリアス)が準決勝で全体2位に入り、決勝進出を決めた。
(写真:古橋杯を授与された萩野<中央>)
「納得いかない。悔しいです」。大差の3連覇にも、萩野は不満を露わにした。

 過去2大会は6種目にエントリーしたマルチスイマーは、今年は4種目にエントリー。世界選手権で金メダルを獲得の可能性のある個人メドレー2種目と自由形2種目に絞っていた。「種目数が少ないからこそ、質を上げていかなければいけない。もっといいタイムで波に乗って、今大会やっていきたいと思っていたので、最初で悪いタイムが出てしまった」と記録を悔やんだ。

 大会初日は400メートル自由形に出場した。午前中の予選を全体1位で突破。迎えた決勝では、最初から飛ばした。50メートルは25秒25で入り、100メートルは53秒32。昨年自らがマークした日本記録を0秒34上回るペースで泳いだ。後続をぐんぐん引き離し、レースは完全に独り舞台。200メートルを超えて、体ひとつ分のリードを奪い、タイムも日本記録ペースに0秒79の差をつける。

 萩野は国際大会では前半は抑え気味に展開し、後半爆発的なスパートをかける。この日は序盤から飛ばした分、徐々にペースダウンし、300メートルで日本記録ペースをついに下回った。最後の100メートルはペースを上げたが、日本記録からは1秒29遅れる3分45秒19でゴールイン。「最低でも日本記録は上回っていると思った。1秒以上も遅かった」と萩野の感覚とタイムにはズレが生じていた。2位に3秒以上の差をつける圧勝だったが、満足のいく結果とはならなかった。

 競り合う相手がおらず、孤独な戦いだった。東洋大で萩野を指導する平井伯昌コーチは「本人は追いかける方が楽」と語るように、強力な“末脚”の不発には、ライバル不在が少なからず影響したようだ。残りは3種目。萩野はまず1冠を手にしたが、本人の表情はこの日の空模様と同じ、曇り空のスタートとなった。

 初日の主な結果は次の通り。

<男子400メートル自由形・決勝>
1位 萩野公介(東洋大) 3分45秒19
2位 宮本陽輔(自衛隊) 3分48秒58
3位 江原騎士(山梨学院大) 3分48秒70

<女子50メートル背泳ぎ・決勝>
1位 稲田法子(セントラルスポーツ) 28秒36
2位 竹村幸(イトマン) 28秒40
3位 酒井夏海(スウィン南越谷) 28秒55 ※中学新
3位 諸積瑛美(スウィン館林) 28秒55

<女子50メートル平泳ぎ・決勝>
1位 渡部香生子(JSS立石) 31秒07
2位 鈴木聡美(ミキハウス) 31秒15
3位 松島美菜(セントラルスポーツ) 31秒21
3位 宮坂倖乃(コナミ北浦和) 31秒21
(写真:日本記録保持者の鈴木を破り、初優勝した渡部)

<女子400メートル自由形・決勝>
1位 五十嵐千尋(日本体育大) 4分10秒10
2位 地田麻美(東洋大) 4分11秒29
3位 佐藤千夏(スウィン大教) 4分11秒67

※選手名の太字は世界選手権代表に内定

(文・写真/杉浦泰介)