ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが16日、大阪府立体育会館で行われ、王者の山中慎介(帝拳)が挑戦者の同級7位ディエゴ・サンティリャン(アルゼンチン)に7R36秒KO勝ちを収め、8度目の防衛に成功した。山中は序盤から右ジャブを繰り出して機先を制し、徐々に左をヒットさせる。6Rにワンツーでダウンを奪うと、続く7Rで再び左を炸裂させ、相手を倒し切った。また、前座試合では元WBC世界バンタム級王者・辰吉丈一郎の次男・寿以輝がプロデビューを果たし、2R2分45秒KOで勝利した。
 世界戦7度目のKO勝利。挑戦者を沈めたのは過去6度と同様、“神の左”だった。
 7R、右アッパーをのぞかせながら、サンティリャンのアゴを完璧にとらえた。
「タイミングはどんぴしゃ。たぶん立ってこんやろうなと思った」
 自画自賛の一撃に、リング中央で倒れた相手は観念したかのようにしゃがみこみ、レフェリーのテンカウントを聞いた。

 サンティリャンは23戦無敗のチャレンジャー。身長は山中が10センチ上回るにもかかわらず、リーチは挑戦者の方が長い。長い右を思わぬところから繰り出し、“幽霊”の異名をとる。

 しかし、7度の防衛を果たし、心技体の充実した王者に、幽霊など恐るるに足りなかった。「序盤からジャブが冴えていた」と本人が振り返った通り、まずは右を相手の顔面に散らし、ペースをつかむ。1Rの終盤には早くもワンツーが決まり、サンティリャンを後退させた。

 2Rには早くもアルゼンチン人の鼻から出血がみられ、涼しい顔の山中との優劣は明らかになる。
「打ち急がず、12Rある。その中で倒せばいい」
 冷静な王者は的確に右ジャブを当てつつ、ここぞという場面を左を突き刺した。カウンターで一発逆転を狙う挑戦者を無理に深追いせず、うまく距離をとって反撃を許さない。序盤の4Rを終え、ジャッジはフルマークで山中を支持した。

 以降も展開は一方的。5Rには山中のコンビネーションに、サンティリャンの顔面が飛び、足元はぐらついた。ジャブを受け続けた挑戦者の左目は腫れあがり、出血で顔は真っ赤に染まった。 
 
 そして6R、前に出てきた相手の出足をジャブで止め、ガードの間から左拳をねじ込む。必殺の左ストレートが顔面を直撃し、サンティリャンからダウンを奪った。

「勝ち方は問題なかった。精神的にもレベルアップした」
 試合後、再びベルトを巻いた王者は胸を張った。フィニッシュに持ち込むまでの試合運びは非の打ちどころがない。KOを期待されて、きっちりと倒せる強さは、やはり本物だ。

「もっともっと注目される試合がしたい。もっともっと進化して楽しんでもらえるように頑張る」
 本人が熱望する統一戦や米国進出は機が熟しすぎるほど熟したと言ってよい。“神の左”が真の強敵に対して放たれる瞬間を多くのファンが望んでいる。