27日、世界陸上競技選手権(8月、中国・北京)の日本代表選考会を兼ねた「第99回日本陸上競技選手権大会」2日目が行われた。男子200メートルは藤光謙司(ゼンリン)が20秒32の自己ベストで優勝。5年ぶり2度目の優勝。藤光は2位タイに入った高瀬慧(富士通)とともに世界選手権代表入りを決めた。また1万メートルの鎧坂哲哉(旭化成)、走り高跳びの戸邉直人(つくばTP)、棒高跳びの荻田大樹(ミズノ)の男子3種目の優勝も世界選手権代表に内定。女子200メートルで5連覇を達成した福島千里(北海道ハイテクAC)も北京行きの切符を手にした。そのほかの種目では20連覇中の室伏広治(ミズノ)が欠場した男子ハンマー投げは野口裕史(群馬綜合ガード)が初優勝を収めた。
 実力者揃いの男子200メートルを制したのは、今シーズン好調の藤光だった。

 藤光、高瀬、高平慎士(富士通)、飯塚翔太(ミズノ)、原翔太(スズキ浜松AC) と5人の優勝経験者が出走した決勝。さらには予選を好タイムで走ったガーナ人の父を持つサニブラウン・アブデル・ハキーム(城西大城西高)、長田拓也(法政大)と勢いのある若手も、そこに加わった。

 世界選手権への選考レースは5月の東日本実業選手権で日本歴代2位となる20秒14を叩き出した高瀬が派遣設定記録(20秒28)をクリアし、一歩リードしていた。それを5月のセイコーゴールデングランプリで日本歴代7位の20秒33をマークした藤光が追う。藤光は参加標準記録(20秒50)を突破しているため、優勝すれば世界選手権代表に決まる。

 午後から降り始めた雨は、決勝のレースを迎える夕方には去っていた。地面は濡れていたものの、天が好記録を出すために、気を利かせたようにも思える演出だった。号砲が打ち鳴らされると、8人が一斉に飛び出す。4レーンを走る藤光は好スタートを切り、「前半でいい位置につけたので、直線で勝負できる」と確信。直線で完全に抜け出すと、あとは他を引き離した。20秒32と自己ベストを更新し、1着でゴールイン。右拳を突き上げた。

 レースを振り返り、藤光は「ラスト50でもがいてしまった」と反省した。「決勝はどちらかというと勝負に徹してしまった。勝ちたい気持ちが強く、力みを生んだ」と分析する。目標タイムも20秒1、2台を狙っていたため、悔しさも少し覗かせた。

 今シーズン初戦となった4月の織田幹雄記念国際陸上では、20秒43で優勝。「昨年の秋口から感覚がよくなり、織田を走ってから段々分かってきた」と自分の走りを確立しつつある。20秒3台を連発している現状に「このタイムで走れる技術はついてきている。これだけ安定すれば、(記録が)もう一発あがるかもしれない」と自身は大きな手応えを掴んでいる。

 5年ぶりに制した日本選手権だが、藤光は「通過点。ただのステップにしか思っていない」と喜びに浸る様子はない。個人種目では2009年ベルリン大会以来、3大会ぶりの世界選手権出場を手繰り寄せた。「ここ数年はリレーでの出場。悔しい思いをしてきた。“自分が出ていれば”との気持ちもあった。ようやく勝負させてもらえる」と口にした。29歳は北京で200メートルのファイナリストを目指す。

 2日目の決勝結果は次の通り。

<男子200メートル>
1位 藤光謙司(ゼンリン)20秒32
2位 サニブラウン・アブデル・ハキーム(城西大城西高) 20秒57
2位 高瀬慧(富士通) 20秒57

<男子1500メートル>
1位 荒井七海(東海大) 3分43秒47
2位 廣瀬大貴(大阪ガス) 3分43秒86
3位 高谷将弘(JR東日本) 3分44秒04

<男子1万メートル>
1位 鎧坂哲哉(旭化成) 28分18秒53
2位 設楽悠太(Honda) 28分31秒32
3位 星創太(富士通) 28分37秒37

<男子走り高跳び>
1位 戸邉直人(つくばTP) 2メートル26 ※順位は試技数による
2位 衛藤昂(AGF) 2メートル26
3位 平松祐司(筑波大) 2メートル23

<男子棒高跳び>
1位 荻田大樹(ミズノ) 5メートル50
2位 土井翔太(三観陸協) 5メートル40
3位 山本聖途(トヨタ自動車) 5メートル30

<男子三段跳び>
1位 石川和義(長野吉田AC) 16メートル30
2位 山本凌雅(順天堂大) 16メートル24 ※セカンド記録(16メートル23)
3位 藤林献明(立命館AC) 16メートル24 ※セカンド記録(15メートル96)

<男子円盤投げ>
1位 堤雄司(群馬綜合ガード) 57メートル15
2位 米沢茂友樹(東海大) 55メートル54
3位 知念豪(ゼンリン) 55メートル51

<男子ハンマー投げ>
1位 野口裕史(群馬綜合ガード) 71メートル98
2位 田中透(チームミズノ) 68メートル80
3位 土井宏昭(流通経済大クラブ) 67メートル64

<女子200メートル>
1位 福島千里(北海道ハイテクAC) 23秒23
2位 藤沢沙也加(セレスポ) 23秒81
3位 市川華菜(ミズノ) 24秒07

<女子400メートル>
1位 青木沙弥佳(東邦銀行) 53秒05
2位 藤沢沙也加(セレスポ) 53秒14 
3位 石塚晴子(東大阪大敬愛高) 53秒44

<女子1500メートル>
1位 須永千尋(資生堂) 4分15秒69
2位 陣内綾子(九電工) 4分16秒10
3位 森田香織(パナソニック) 4分17秒33

<女子100メートルハードル>
1位 柴村仁美(佐賀陸協) 13秒27
2位 田中杏梨(甲南大) 13秒30
3位 青木益未(環太平洋大) 13秒42

<女子走り幅跳び>
1位 岡山沙映子(広島JrOC) 6メートル21
2位 平加有梨奈(北海道ハイテクAC) 6メートル10
3位 永井佳織(長谷川体育施設) 5メートル99

<女子砲丸投げ>
1位 太田亜矢(福岡大) 15メートル65
2位 松田昌己(国士舘大) 15メートル14
3位 郡菜々佳(東大阪大敬愛高) 15メートル07

※選手名の太字は世界選手権代表に内定

(文・写真/杉浦泰介)