28日、世界陸上競技選手権(8月、中国・北京)の日本代表選考会を兼ねた「第99回日本陸上競技選手権大会」最終日が行われた。男子400メートルは金丸祐三(大塚製薬)が46秒10で制し、11連覇を達成。男子100メートルは、高瀬慧(富士通)が10秒28で優勝した。女子は福島千里(北海道ハイテクAC)が11秒50で6連覇。5年連続で100&200メートルの2冠を成し遂げた。男子やり投げは新井涼平(スズキ浜松AC)が84メートル13の大会新で2連覇。男子走り幅跳びは菅井洋平(ミズノ)が4年ぶりに制した。女子5000メートルは尾西美咲(積水化学)が3連覇を達成し、男子5000メートルは村山紘太(旭化成)が初優勝を収めた。金丸、新井、菅井、尾西、村山は世界選手権代表に内定。高瀬、福島は200メートルに続き2種目目の世界選手権代表入りを果たした。
 3日間行われた大会で男子9名、女子7名の計16名が世界選手権代表に内定。明日の日本陸上競技連盟の理事会で追加のメンバーが発表される。また大会MVPには、男子が砲丸投げで日本記録をマークした畑瀬聡(群馬綜合ガード)が、女子は短距離2冠を達成した福島千里(北海道ハイテクAC)が選ばれた。


 ゴールに突き出した右手で、11連覇を掴み取った。男子400メートルの第一人者・金丸が、今年も王座を守り抜いた。

 金丸は昨日の予選で45秒22の好タイムをマークしており、世界選手権参加標準記録(45秒50)をクリア。優勝すれば北京行きを切符を手にできる。その余裕からか、スタート直前の選手紹介のところでは、カメラの前で両手人差し指を立てて、「11」をアピール。号砲を待った。

 いつも通りのルーティン、上半身を大きく揺らす「金丸ダンス」で位置につくと、勢いよく飛び出した。第7レーンと、アウトレーンだった金丸は序盤から飛ばす展開。一旦は先頭に立つが、インレーンである第3レーンを走る佐藤拳太郎(城西大)に最後の直線に入ったところで逆転される。

 最後の直線で必死に佐藤を追いかけ、徐々に差を詰めていく。フィニッシュは胸から飛び込もうとする佐藤に対し、金丸はゴールに向かって右手を突き出した。1000分の1秒を争う中で、“切り札”を打った。金丸によれば、高校3年のインターハイのレースで競り負けた時、敗れた相手に使われた手。自らが使ったのは4年前の大邱国際で逆転優勝した以来だという。

 わずか100分の2秒差で、先着したのは金丸だった。「負けると思った」と正直な思いを明かしたが、意地で伸ばした右手で11度目の優勝と世界選手権代表の切符を掴み取ることに成功した。

 今シーズンはケガの影響もあって、満足のいく結果を残せていなかった。自らのレース前には母校の法政大でともに練習を積んでいる後輩の岸本鷹幸(富士通)が400メートルハードルの決勝で、惜しくも5連覇を逃していた。「不安になった」と語ったものの、“必死のフィニッシュ”で意地を見せた。

 金丸の日本選手権11連覇は、室伏広治(ミズノ)の20連覇が今回で途切れたため、継続中のものでは最長となった。後輩の岸本は「並大抵のことじゃない。意識や考えは別次元。本当に尊敬できる」と舌を巻いた。王座を守った金丸の次なる目標は6年間止まったままの自己ベスト(45秒16)の更新だ。
 
 最終日の主な決勝結果は次の通り。

<男子100メートル>
1位 高瀬慧(富士通) 10秒28
2位 サニブラウン・アブデル・ハキーム(城西大城西高) 10秒40 ※順位は着差による
3位 川面聡大(ミズノ) 10秒40

 

<男子400メートル>
1位 金丸祐三(大塚製薬) 46秒10
2位 佐藤拳太郎(城西大) 46秒12
3位 田村朋也(住友電工) 46秒58

<男子5000メートル>
1位 村山紘太(旭化成) 13分37秒22
2位 大迫傑(NikeORPJT) 13分37秒72
3位 出口和也(旭化成) 13分39秒52

<男子走り幅跳び>
1位 菅井洋平(ミズノ) 7メートル88
2位 嶺村鴻汰(モンテローザ) 7メートル81
3位 小田大樹(日本大) 7メートル79

<男子砲丸投げ>
1位 畑瀬聡(群馬綜合ガード) 18メートル78 ※日本新
2位 中村太地(国士舘クラブ) 17メートル32
3位 鈴木孝尚(オークワ) 17メートル08

<男子やり投げ>
1位 新井涼平(スズキ浜松AC) 84メートル13 ※大会新
2位 村上幸史(スズキ浜松AC) 77メートル84
3位 高力裕也(鳥取陸協) 76メートル25

<女子100メートル>
1位 福島千里(北海道ハイテクAC) 11秒50
2位 宮澤有紀(富士大) 11秒77
3位 土井杏南(大東文化大) 11秒83

<女子5000メートル>
1位 尾西美咲(積水化学) 15分18秒77
2位 鷲見梓沙(ユニバーサル) 15分21秒07
3位 鈴木亜由子(JP日本郵便) 15分24秒14

※選手名の太字は世界選手権代表に内定

(文・写真/杉浦泰介)