皆様、こんにちは。再開2回目の鈴木康友コラムに、今回もお付き合いください。先月の話になりますが、7月21日から23日まで東北楽天対オリックスの解説のために久しぶりに仙台に行きました。6年ぶりの当地は、いろいろと感慨深かったですね。まずはその話から。

 

 野村チルドレン

 楽天のコーチ時代(2012年~14年)以来、6年ぶりの宮城球場。当時はKスタ宮城やコボスタという名称でしたが、今は楽天生命パーク宮城です。新型コロナウイルスの影響でグラウンドレベルに入ることができず、チーム関係者と旧交を温めることはできませんでしたが、それでも6年ぶりのスタジアムは懐かしく、そしてグッとくるものがありました。

 

 肝心の試合の方は解説した3戦は楽天の2敗1分け。いずれも主導権を握りながら、7、8、9回の終盤で追いつかれるという展開でした。先発が打たれて負けるのと、リリーフが打たれて負けるのとでは、チームのダメージが違います。先発なら中6日で週1ですが、リリーフの不調は毎日、影響が出ます。「ちょっと、これはひきずるんじゃないかな」と思っていたら、やはりこの後、勝ちから遠ざかりましたね。

 

 今は持ち直して首位・福岡ソフトバンクに1.5ゲーム差の3位(8月24日時点)。パ・リーグはソフトバンク、楽天、そして千葉ロッテの三つ巴の争いが最後まで続くでしょう。

 

 3チームの中ではロッテに勢いを感じます。安田尚憲や和田康士朗といった若い選手がグッと伸びてきています。ただ、コロナ禍で観客数が少ないのがロッテとしてはもどかしいところでしょう。ZOZOマリンのファンの歓声は、すごく大きな力になりますからね。敵として臨むと「ビジターの声援」というのはやりにくいことこの上ないんです。楽天のコーチ時代はもちろん、巨人時代の甲子園でもそう感じました。特に甲子園は「なんやこれは」というくらいの騒々しさで、野球をやる環境じゃなかったですよ(笑)。

 

 セ・リーグは巨人が首位をキープしています。リリーフ陣に不安があったり、4番・岡本和真の調子が落ちたりとネガ要素はあるものの、首位に踏みとどまっているのは、不思議といえば不思議です。今年のセ・リーグはクライマックスシリーズがありませんから、他球団はエース級を巨人にぶつけるなどして止めないと、このまま逃げ切りを許すことになりかねません。

 

 開幕からここまでを見て楽天の三木肇監督、東京ヤクルトの高津臣吾監督、2人の"野村チルドレン"が監督初年度ながらなかなかの手腕を発揮しています。さすが野村克也さんの教え子、といった感じです。

 

 高津ヤクルトは8月に入って少し息切れしていますが、それでも村上宗隆など若手がのびのびとプレーしているのが伝わってきます。高津監督は2軍監督からの昇格ですから若手のやる気スイッチを押すのがうまいんでしょうね。

 

 三木監督はID野球育ちらしく、ここぞというタイミングでの仕掛けが見事です。ダブルスチールのサインを出すのも「ここは絶対に二塁には投げない」という状況、カウントでパッと仕掛ける。現役時代の実績はありませんが、野球IQの高さが感じられます。残りのシーズンでソフトバンクをどう追い詰めるのか。三木監督のお手並み拝見です。

 

 さて、次は高校野球の話題です。今年は新型コロナウイルスの影響でセンバツが中止になり、夏の甲子園も中止。各都道府県で独自の地方大会が行われました。私がコーチを務める立教新座(埼玉)は埼玉県大会で大宮東に敗れ、3年生の夏が終わりました。3年生にとってはこれが区切りとなりましたが、なんとも特殊な形の夏でしたね。

 

 甲子園ではセンバツ出場が決定していた32校を対象に「甲子園高校野球交流試合」が行われました。母校・天理(奈良)も出場し、広島新庄と対戦。結果は2対4で敗れました。

 

 この試合、天理は3年生の庭野夢叶投手が先発し、8回まで投げました。この日の庭野投手は決して調子が良いとはいえず、四死球から点を取られるなど精彩を欠いていました。9回から2年生の達孝太投手が登板しましたが、もっと早い回から継投しても良かったのかなと思います。

 

 というのも今回は全国制覇を目指すトーナメントではなく1回限りの特別な試合です。ベンチ入りが2人増の20人になったことも含め、高野連など主催者は「思い出をどうぞ」というスタンスでしょう。

 

 ただ、現場としては「1試合しかない。甲子園決勝のつもりで」と発破をかけるのは当然。でも、いつもの夏とは違う特殊な大会で、がむしゃらに勝ちに行くのか、思い出づくりなのか、はたまた新チームのメンバーに経験を積ませるのか? 天理に限らず、どの試合を見ていても各校の監督はその匙加減に苦労したんじゃないかな、と感じましたね。

 

 とはいえ、生徒にとって甲子園で試合ができたことはこれ以上ない喜びです。後輩の天理ナインに甲子園の土を踏ませてくださった関係者の皆さん、そして立教新座が参加した埼玉県大会の開催に尽力いただいたすべての皆さんに感謝いたします。

 

 さて9月に入れば、ペナントレースも大詰めです。来月にはセ、パの状況がどう変わっているのか。私も楽しみにその行方を見守りたいと思います。では、また次回。

 

<鈴木康友(すずき・やすとも)プロフィール>
1959年7月6日、奈良県出身。天理高では大型ショートとして鳴らし甲子園に4度出場。早稲田大学への進学が内定していたが、77年秋のドラフトで巨人が5位指名。長嶋茂雄監督(当時)が直接、説得に乗り出し、その熱意に打たれてプロ入りを決意。5年目の82年から一軍に定着し、内野のユーティリティプレーヤーとして活躍。その後、西武、中日に移籍し、90年シーズン途中に再び西武へ。92年に現役引退。その後、西武、巨人、オリックスのコーチに就任。05年より茨城ゴールデンゴールズでコーチ、07年、BCリーグ・富山の初代監督を務めた。10年~11年は埼玉西武、12年~14年は東北楽天、15年~16年は福岡ソフトバンクでコーチ。17年、四国アイランドリーグplus徳島の野手コーチを務め、独立リーグ日本一に輝いた。同年夏、血液の難病・骨髄異形成症候群と診断され、徳島を退団後に治療に専念。臍帯血移植などを受け、経過も良好。18年秋に医師から仕事の再開を許可された。18年10月から立教新座高(埼玉)の野球部臨時コーチを務める。NPBでは選手、コーチとしてリーグ優勝14回、日本一に7度輝いている。19年6月に開始したTwitter(@Yasutomo_76)も絶賛つぶやき中。2020年東京五輪(1年延期)の聖火ランナー(奈良県)でもある。


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