現地時間7日(スイス)、トーマス・バッハ会長はIOC理事会後の記者会見で、2021年夏に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックについて「安全な五輪開催に自信を持っている」と語った。また大会組織委員会が報告した52項目の簡素化による約300億円の開催経費削減案を「大きな成果。ポストコロナの世界に五輪が対応するものだ」と高く評価した。当HP編集長の二宮清純は今年7月、組織委の森喜朗会長に対し、延期に伴う追加経費や大会の簡素化についてインタビューを行った。それを3回に分けて掲載する。

 

<この原稿は『スポーツニッポン』2020年7月23日付けに掲載されたものです>

 

二宮清純: 約3カ月ぶりです。お元気でしたか。

森喜朗: 体は元気だけど、何だか憂鬱だね。

 

二宮: 憂鬱ですね。コロナの暗雲の下にいるようで。

: 野球ができるかどうかって、空模様を見ながらキャッチボールしてる感じだね。

 

二宮: 夜の会合とかも減りましたか。

: 一晩に1、2カ所でしたが、今は全くやらない。いつも7時前に家に帰るので女房がびっくりしてる。

 

二宮: お酒はやめたんですか。

: やめてはいないけどすぐ太るから。一時は110キロあったのが、今は80キロ。それでも最近は81~82キロまでいった。

 

二宮: あまり痩せると、かえって貫禄がなくなりますよ(笑い)。

: 二宮さんもそうだろうけど、人と酒を飲みながら食べて話すことによって糧を得ることが多いわけだから。やはり接することができないのはきついよね。

 

二宮: 過日、森会長がおっしゃっていましたが、どうもIOCは簡素化に熱心じゃないと。米テレビ局と契約しているので、違約金を取られると。

: 必ずそういうことを言うんだよ。違約金って。これは今回のメインテーマなんだが、「言うは易く行うは難し」、「総論賛成、各論反対」。競技場も選手の数も全部決まっている中で(簡素化の項目を)削減しろ、というのは五輪の競技本体をぶつ切りにすることなので、簡単にはできない。では、レセプションが多いからまとめるとか、ホテルを節約させるとか、車の数を減らすとか、華々しいことを節約すると言うが、それではたいした(コスト削減の)金額にはならない。

 

二宮: IOCは競技数や選手数の削減には一切、手をつけるなということですね。

 選手もそのつもりでいるのに、(削減するから)あなたは出なくていい、とはいかないでしょう。

 

二宮 開会式と閉会式に関しては。

: 今一番、苦労しているところ。経費削減というよりも、開会式は盛大に、お祭り騒ぎみたいにやるわけですね。これが今の日常この状況の中でやっていいのかどうか。例えばコロナを完全に抑え込んで、そのお祝いも兼ねた五輪だと花火を打ち上げれば、みんな賛成するかもしれない。だけど、何とかコロナは抑え込んだけど、まだ世界の多くの国が苦しんでいる状況なら花火を上げるような話ではない。だから、開会式のストーリーもぎりぎりのところで質素にやるのか、従来のように華々しくやるのか、両方を検討させているんですよ。

 

二宮: 来年の7月がどういう状況になっているか見通せない。

: 2つの考え方を持ちながら収束状況を見て、今年の秋頃までには結論を出していかないといけないと思ってます。

 

二宮: 秋ぐらいに結論ですか。

: 最初のヤマ場だと。

 

二宮: 組織委員会が出した修正計画をIOCがどう判断するか。

: 今、IOCといろいろやってますよ。だいたい(簡素化の検討は)200項目ぐらいあるんですよ。その中でもすぐ着手できるのが50項目ぐらいありましてね。それを順番にやって、こういう案でやろうと思うと問い合わせて、IOCがそれはいいとか、ダメとか言ってきているんですよ。まだ公表はできないんですが、報告を聞いてみると、総論賛成、各論反対と。要はお金の節約になるかどうか。例えば開会式を簡素化というと(時間が)短くなる。五輪とパラリンピックの開閉会式は全部、テレビ会社と契約が済んでいる。そうするとテレビとしては、楽しくないものなら金を返せということになり、やめれば違約金だと。

 

二宮: IOCはそこまで言うんですか。

: 上の方は言わないけど、現場の事務レベルはそう言いますよ。

 

(中編につづく)