J1の仙台、J2の新潟と不祥事が相次いで発覚し、フロントに対する批判の声が高まっている。

 

 彼らをかばうつもりはない。新潟に関していうならば、事件の発覚と発表の間にタイムラグをつくってしまったのは、明らかなミスだった。クラブの社会的な立場を考えれば、「酒気帯び運転で捕まった? はい、クビね」とやらなければなかった。その上で、ファンから嘆願の声が出るようであれば、また考える――というのが筋だったかな、と。

 

 ただ、組織の一員が酒気帯び運転をしてしまうのは、DVをしてしまうのは、組織の責任なのだろうか。無意味に思える校則よろしく、選手たちをガチガチに縛っておくのが正しいやり方なのだろうか。世の大企業は、末端の社員が不祥事を起こすたびに社長が頭を下げているのだろうか。何でもかんでもフロントの責任っていうのは、ちょっと違う気がする。

 

 本来、彼らが負うべき責任は他にある。

 

 J1では川崎Fが途方もない強さを見せている。1シーズンに10連勝と11連勝? よほど傑出した存在でない限り、これほど勝ちを重ねるのは不可能だと言っていい。

 

 問題はそこ。川崎Fって、傑出した存在なのだろうか。

 

 やっているサッカーの質はズバぬけている。ただ、彼らがチームにかけているお金は、断じてJリーグの1番ではない。

 

 ブンデスリーガでバイエルンMが圧倒的に強いのも、セリエAでユベントスが無双状態なのも、スペインの覇権がバルサとレアルの間で行ったり来たりしているのも、身もふたもない話をしてしまえば、彼らの予算が突出しているから、である。予算があるから、いい選手を、いいスタッフも抱えられる。だから強い。そういうことなのだ。

 

 ところが、我らがJリーグにおいては、資金力の多寡が必ずしも結果に直結していない。というか、優勝に関してほとんど無関係。これほどまでに予算規模No.1のクラブが優勝していないリーグ、世界的に見てもちょっとない。

 

 なぜこんなことになっているのか。一言で言えばお金の使い方が下手なチームが多過ぎる、ということだろうし、もっと言えば、お金やチームの方向性をつかさどる人たち――つまりフロントが未熟なチームがほとんどだということ。

 

 わたしが愛してやまないボルシアMGは、資金力では到底バイエルンMやドルトムントにかなわないが、マックス・エベールという敏腕GMの巧みなやりくりによって、下層階級から欧州CLに出場するまでのチームに変貌した。で、このエベールさんには常に引き抜きの噂がつきまとっている。彼を欲するクラブが多数あるのは事実だから。

 

 プロ野球の場合、長い目で見れば基本的にはお金のあるトコが安定して優勝に絡む傾向があるから(阪神を除く)、日本社会にスポーツマネジメントがなじんでいない、ということではない。極論すれば、Jの資金力豊かなクラブが、欧米のクラブや日本のプロ野球ほどには優秀なフロントを抱えていないということ。育ててもいないし引き抜こうともしていない、ということ。

 

 不祥事の責任より、こっちの方がよっぽど問題だと思いません?

 

<この原稿は20年10月22日付「スポーツニッポン」に掲載されています>


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