現地時間31日、ボクシングのWBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチがアメリカ・ネバダ州ラスベガスのMGMグランドで行われ、王者の井上尚弥(大橋)がWBA同級2位ジェイソン・モロニー(オーストラリア)を7ラウンド2分59秒TKOで下した。井上はWBAを4度目、IBFを2度目の防衛を果たした。

 

 井上はWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)を制した約1年後、聖地ラスベガスに降り立った。

 

 WBAスーパー、IBFのベルトを持つ井上は4月にWBO王座をジョンリル・カシメロ(フィリピン)から刈り取ろうとしていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、試合は延期となった。ファイトマネーで折り合いがつかなかったとされるカシメロは9月に防衛戦を実施し、3ラウンドTKO勝ちを収めた。

 

 ひとまず井上の対戦相手はモロニーとなった。タイトルホルダーでないとはいえ、決してヤワな相手ではない。21勝(18KO)1敗の戦績を誇る。唯一の黒星はWBSS1回戦で当時IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)の判定負け。そのロドリゲスを井上はKO勝ちしており、下馬評では井上が有利と見られていた。

 

 1ラウンドはモロニーの動きを見極めるためか、相手の攻撃を受ける場面も見られた。徐々に井上が攻勢を仕掛けると、モロニーも下がらざるを得ない。互いに決定打はなかったが、井上優位に進んでいるように映った。

 

 6ラウンド、ついに試合が動いた。井上はモロニーの左ジャブ連発の間で左のフックを合わせた。モロニーは尻餅をついて倒れる。ダウンを奪った井上は、その後も自らのペースで試合を運んだ。

 

 試合を終わらせたのは7ラウンドだ。ラウンド終了間際、再び鮮やかなカウンターが炸裂した。ワンツーを繰り出してきたモロニーに対し、狙いすました右ストレートを顔面に叩き込んだ。崩れ落ちるようにしてダウンしたモロニーは立ち上がることができなかった。

 

 メイド・イン・ジャパンの“モンスター”が鮮烈なラスベガスデビューを果たした。2つベルトを防衛した井上は「ガードが堅くて、テクニックもあり、崩しにくい選手。2つのパンチは日本で練習してきた。試合で出せてホッとしています」と語った。モロニー対策がバッチリとハマッたようだ。

 

“モンスター”の次の照準は別団体の王座に狙いを定めた。12月に行われるWBCタイトルマッチの王者ノルディ・ウバーリ(フランス)vs.元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)の勝者か、WBO王者カシメロだ。「タイミングの合う方とやりたい」と井上。4団体王座統一へ向け、今のところ死角は見当たらない。そう思わせる強さだった。

 

(文/杉浦泰介)