(写真:修斗とのフェザー級2冠を手にした斎藤)

 21日、格闘技イベント「RIZIN.25」が大阪城ホールで行われた。RIZINフェザー級王座決定戦は斎藤裕(パラエストラ小岩)が朝倉未来(トライフォース赤坂)を判定で下した。斎藤は初代フェザー級王者に輝いた。朝倉はRIZIN参戦8試合目にして初黒星を喫した。リオデジャネイロオリンピックのレスリング銀メダリスト太田忍の総合格闘技転向を発表。「RIZIN.26」(12月31日、さいたまスーパーアリーナ)で所英男(リバーサルジムとの対戦することが決まった。

 

 新設されたRIZINフェザー級のベルトを懸け、修斗王者の斎藤とRIZIN7連勝中の朝倉が戦った。

 

 8月の「RIZIN.23」(神奈川・横浜ぴあアリーナMM)で摩嶋一整(毛利道場)をTKOで下した斎藤。RIZINのフェザー級戦線に浮上すると、当日解説を務めていた朝倉が「オレがやってまりましょうか」と対戦をアピールしたことから両者の拳は交じり合うこととなった。

 

(写真:朝倉<左>の打撃が空を斬る場面も何度か見られた)

 2016年に修斗の世界王座を獲得した実力者の斎藤だが、朝倉の方が全国メディアの露出も多く、知名度は上だった。試合前からも朝倉の“上から目線”で発言し、斎藤が冷静に応えるという構図だった。当日の煽りVTRでは“成り上がりvs.叩き上げ”と表現された。

 

 リング上で対照的な人生を送ってきた2人が向かい合う。張り詰めた緊張感が場内に漂った。1ラウンドは朝倉が圧力をかける前に出て、それを斎藤が受けるように足を使う展開。手数が少ない立ち上がりとなった。まず静寂を破ったのは斎藤の左。朝倉の顔面を襲った。ここは大きなダメージは見られなかった。

 

(写真:終盤の打撃戦に大阪城ホールは大いに沸いた)

 すると試合が動いた。「自分は左ローから入ることが多い」と語っていた朝倉だが、インローを襲ったキックが斎藤の急所を直撃するアクシデント。斎藤の回復を待つため、一旦インターバルが与えられた。このラウンドは共に決定打が出ないまま終了した。

 

 2ラウンド序盤には斎藤の右ローがローブローに。斎藤がタックルによるテイクダウンを狙った。一発目は朝倉がすぐに立ち上がり、膠着状態に陥っため、レフェリーからブレークを指示された。今度は打撃から組み付き、ロープ際に押し込んだものの、朝倉が粘りを見せる。一連の攻防で朝倉がロープを掴むなどしたため、レフェリーから警告を受けた。

 

 最終ラウンドは斎藤が朝倉はタックルでテイクダウンを奪うも、そこからの展開がなく、スタンディングに戻された。残り1分半を過ぎたところで、互いにパンチを刺し合う。斎藤はグラつく場面もあったが、怯まず手数を出し続けた。結局、15分間の攻防でダウンはなく、勝負の行方は判定に委ねられた。

 

(写真:トロフィーを掲げ、歓喜の表情を浮かべた斎藤)

 両者が勝利をアピールし、判定を待った。ジャッジ全員が斎藤を支持。内容としては僅差だったと思われるが、斎藤が3-0で初代フェザー級チャンピオンに輝いた。

「人生いいことばかりじゃないですけど、一生懸命やれば何か結果が残せると実感しています。これからもっと試合をして実力を証明していきたい」

 斎藤は言葉を詰まらせた。「紙一重だった」。目が腫れ、鼻血で赤く染まった顔は激闘の証だった。

 

(写真:朝倉は「今からでも戦いたい」とダイレクトリマッチを熱望した)

 試合前に挑発を繰り返していた朝倉にすれば、まさかの敗戦となった。「斎藤選手が強かった」。2018年に参戦したRIZINでの初黒星を付けられた。来年2月の開催が決まったフロイド・メイウェザー・ジュニア(アメリカ)の対戦相手とも噂されるが、本人は現時点でのオファーを否定。「オレは聞いていない。そんなこと言っている場合じゃなくて斎藤選手にやり返したい」とダイレクトリマッチを望んだ。

 

「このリングで戦い続ければ、また出会うかもしれません」と斎藤。再戦の可能性を匂わせた。元KSWフェザー級王者クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が参戦を希望しているRIZINフェザー級戦線は、さらなる盛り上がりを見せてきた。

 

(文/杉浦泰介、写真/藤村のぞみ)