(写真:ケガからの復帰戦を優勝で飾った桃田)

 第74回全日本総合バドミントン選手権大会各種目決勝が27日、東京・町田市総合体育館で行われた。男子シングルスは桃田賢斗(NTT東日本)が3大会連続4度目の優勝を果たした。女子ダブルスは福島由紀&廣田彩花組(丸杉Bluvic岐阜)が永原和可那&松本麻佑組(北都銀行)を下し、2年ぶり3度目の優勝。女子シングルスは奥原希望(太陽ホールディングス)が山口茜(再春館製薬所)を破り、2年連続4度目の優勝を果たした。そのほか、混合ダブルスは渡辺勇大&東野有紗組(日本ユニシス)が4連覇。渡辺は遠藤大由(日本ユニシス)と組んだ男子ダブルスも制し、2年連続3度目の大会2冠を成し遂げた。

 

 全種目でBWF(世界バドミントン連盟)世界ランキング上位入りを果たすなど、近年躍進を遂げている日本。新型コロナウイルス感染拡大の影響でワールドツアーは3月の全英オープン以来の主要大会となった全日本総合は、東京オリンピックのメダル候補が躍動した。

 

(写真:柔らかいタッチは健在。「久しぶりの試合は1球1球不安だった」と大会を振り返った)

 男子シングルスは世界ランキング1位で、金メダル大本命に挙げられる桃田が復帰戦優勝を果たした。1月にマレーシアで交通事故に遭い、負傷。のちに右目の眼窩底骨折と判明し、手術した。今回の全日本総合が約1年ぶりの公式戦だった。
 
 1、2回戦はストレートで勝ち上がったものの、準々決勝は第1ゲームを落としファイナルゲームまでもつれた。準決勝はストレートで勝ったが、いずれも16点を許し、完勝というわけではなかった。
 
 迎えた決勝は日本A代表の常山幹太(トナミ運輸)。世界ランキング11位で桃田に次ぐ2番手に付けている。全戦ストレートで勝ち上がってきており、勢いなら初優勝を目指す常山に分があった。
 
 第1ゲーム、桃田は18-15とリードしながら「焦ってしまった。試合慣れしていなくてバタバタした。点数を欲しがり、ギリギリを狙い過ぎてしまった」と6連続ポイントを許し、18-21で落とした。
 

(写真:チーム関係者のいるスタンドへガッツポーズ。「ホッとしたのが7割」と安堵した)

 それでも桃田は「技術、戦略など関係なく一本でも多く返そうと考えました」と気持ちを切り替えた。第2ゲームを21-12で取り返し、勝負はファイナルゲームへ。点の取り合いとなり、終盤になってもスピードが落ちることなく、21-17で競り勝った。
 
「ギアを上げようとしても上がらなかった」と常山。一方の桃田は「相手の疲れは見えたが、自分はまだまだ動ける」とスピードを上げて相手を振り切った。次戦は来年1月に始まるタイオープンに出場予定だ。「日本のエースの自覚を持って挑んでいきたい」と桃田は前を見据えた。
 
 女子ダブルスと同シングルスはメダル候補の直接対決となった。ダブルスは昨年の決勝と同一カード。世界ランキング2位の福島&廣田ペアと、同3位の永原&松本ペアは東京オリンピックでの金メダル争いも期待されている2組が対戦した。
 

(写真:堅いレシーブと高い連係で相手を圧倒した福島<左>と廣田)

 18、19年の世界選手権決勝と昨年の全日本総合決勝は永原&松本ペアに軍配が上がっている。直近では福田&廣田ペアがデンマークオープン決勝で勝利。試合は意外にもストレートで決着がついた。第1ゲームは21-17と競ったものの、第2ゲームは21-12と福島&廣田ペアが圧倒した。堅いレシーブで相手の強打を凌ぎ切った。
 
 福島と廣田はライバルからのストレート勝ちに揃って手応えを口にした。
「2-0は久しぶり、自分たちにとってプラス」(福島)
「相手はデンマークオープンの反省をぶつけてくる。その中で2-0で勝てたことは大きい」(廣田)
 

(写真:白熱のラリーを繰り広げた奥原<左>と山口)

 シングルスは世界ランキング4位の奥原と同3位の山口が対戦。全日本総合に限らず国際大会でも戦うことが多い2人の頂上決戦となった。奥原は第1ゲームを17-21で落としたが、第2ゲームを21-14で取り返す。ファイナルゲームはデュースの末、22-20で競り勝った。
 
 勝った奥原は「茜ちゃんの攻撃に食らいつくことでディフェンス力が上がっていく。お互いの良さがお互いを伸ばしていく存在」と山口を称し、「バドミントンの奥深い駆け引き。決勝の舞台を楽しくプレーできた」と試合を振り返った。
 

(写真:日本ユニシス対決となった混合ダブルス。渡辺&東野ペア<左>が先輩ペアを下した)

 混合ダブルスと男子ダブルスを制した渡辺は2年連続の2冠達成だ。東野と組んだ混合ダブルスは日本ユニシスの先輩である金子祐樹&松友美佐紀ペアをストレートで下し、4連覇。世界ランキング5位の実力を遺憾なく発揮した。
 
 遠藤と組んだ男子ダブルスでは昨年の世界選手権で銀メダルを獲得した保木卓朗&小林優吾組(トナミ運輸)にストレート勝ち。2年連続3度目の優勝を果たした。「先輩がカバーしてくれた」と渡辺は2種目ともペアを組む先輩のサポートを口にしたが、6日間で9試合というタフなスケジュールをこなした。2種目で金メダルを狙う渡辺は「先を見過ぎず一戦一戦を大事にしたい」と語った。
 

(写真:スタンドには一部の関係者と限られたメディアのみ。6日間の勝負を見守った)

 今大会は新型コロナウイルス感染予防対策のため、無観客試合で行われた。世界トップレベルのプレー、マッチアップが披露されたが、選手への歓声はなく、関係者からの拍手が聞こえてくる程度だった。とはいえコロナ禍での大会開催。リスクを抑えるためには仕方がないことだ。国内の主要大会は軒並み中止を余儀なくされ、ようやく実施できた大会。この日、決勝に出場した選手たちは一様に関係者に感謝の思いを述べた。
 
 来年の全日本総合は東京オリンピックのメダリストたちが躍動し、満員の観客が沸く大会となることを願ってやまない。
 
(文・写真/杉浦泰介)