やはりブラジルは人材の宝庫だな。
 さる1月13日、セリエA第18節ナポリ戦でACミランの18歳のブラジルFWアレシャンドレ・パトがリーグ戦初出場を果たし、初ゴールを奪った。

 パトは俊足に加え、類まれなるテクニックを持つ、次世代のブラジルを背負うストライカー。2006年の冬にはクラブW杯にインテルナシオナルの一員として来日している。
 昨夏、欧州のビッグクラブが争奪戦を繰り広げた末にミランがインテルナシオナルから移籍金2200万ユーロ(約35億円)で獲得した。
 当時、パトはまだ17歳。セリエAの年齢制限に引っかかり、半年間は試合に出場することができなかった。逆に言えば、それでもミランがパトを獲得したのは、不世出のストライカーだと判断したからだろう。

 先発でサン・シーロのピッチに立ったナポリ戦では早速、素質の片鱗を披露した。後半29分、後方からロングボールが放り込まれると、相手DFマウリツィオ・ドミッツィを振り切り、右足インサイドで落ち着いて流し込んだ。持ち味のスピードはもちろんのこと、セリエAの屈強なDFにフィジカルで屈しなかったことは大きな自信につながったのではないか。
 
 ミランは今季、低迷を余儀なくされている。そんな中、ナポリ戦ではパトの活躍もあり、今季ホーム8試合目でやっと本拠地初勝利をあげた。これを復調のはずみにしたいところだ。
 
 パトを先発で起用した監督のカルロ・アンチェロッティは言った。
「(パトは)18歳だが、本物のカンピオーネだ。彼の能力は計り知れない。特にメンタル面が素晴らしいよ。私がセリエAでデビューした時には、あそこまで落ち着いていなかったね」
 そして、こう続けた。
「我々にはパトがいる。(獲得の噂がある)ロナウジーニョ(バルセロナ)は必要ない」
 
 称賛の声は引きも切らない。
「彼は18歳だが、いずれはミランに歴史を刻む選手になるだろう。いつも彼のプレーを目にするたびに感動する」(MFジェンナーロ・ガットゥーゾ)
 故障さえしなければ、2010年に行われる南アW杯は、もしかするとパトの大会になるかもしれない。

 さて、欧州で躍動する10代のストライカーはパトだけではない。
 スペインリーグ・FCバルセロナで活躍する17歳のボージャン・クルキックも注目株だ。 カンテラ出身で俊敏性が高く、得点感覚に優れたボージャンは07年9月、オサスナ戦でリーグ戦デビューを果たしている。
 そして10月20日のビジャレアル戦では初ゴールをあげ、17歳1ヶ月20日のクラブ史上最年少得点を記録した。これにより、フランク・ライカールト監督の信頼を勝ち取り、不調にあえぐロナウジーニョをベンチに追いやった。いやはや大した17歳である。

 バルセロナの前線にはロナウジーニョを筆頭に、カメルーン代表FWサミュエル・サトー、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ、フランス代表FWティエリ・アンリと世界の点獲り屋が名を連ねる。そこに割って入ったのだから、その殊勲はどんなに褒めても褒め足りない。
「ボージャンはいつかオレたちを追い出すだろう」
 エトーやアンリのボージャン評は、もちろん単なるリップサービスではない。

 ついに1月中旬、スペイン代表のルイス・アラゴネスが6月に行われるEURO2008にボージャンを召集したいと言い出した。ボージャンはセルビア人の父を持つため、セルビア協会が狙っていると言われている。それを水際で阻止するため、早めにスペイン代表へ呼ぼうというわけだ。果たして、ボージャンはどちらを選ぶのか。

 翻って我がニッポン。FWに関しては景気のいい話がさっぱり聞こえてこない。
 カターニャの19歳FW森本貴幸は出場機会に恵まれず、史上最年少のJ2得点記録を持つ18歳のFW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)もクラブで定位置を確保するには至っていない。

 この国はやはり“FW不毛の地”なのか。
 敢えて言えば、「天才」はある日、突然生まれるものであって、作られるものではない。

(この原稿は『週刊漫画ゴラク』08年2月15日号に掲載されました)


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