(写真:今季キャリアハイのPG曽我部。彼女の出来もプレーオフ上位進出のカギを握る)

 第22回Wリーグ(バスケットボール日本女子リーグ)は2月28日でレギュラーシーズンを終え、6日からプレーオフがスタートする。セミクォーターファイナルはイースタンカンファレンス(東地区)3位の日立ハイテククーガーズとウエスタンカンファレンス(西地区)4位のトヨタ紡織サンシャインラビッツ、西地区3位の三菱電機コアラーズと東地区4位のシャンソン化粧品シャンソンVマジックが対戦する。

 

 セミクォーターファイナル、クォーターファイナルはいずれも愛知・スカイホール豊田を舞台に一発勝負で行われる。昨シーズンはコロナウイルス感染拡大の影響により、実施できなかったプレーオフ。2年ぶりの大舞台に各チームが意気込む。

 

 昨季9位からの躍進を遂げたのは、内海知秀HCが就任した日立ハイテクだ。シャンソン化粧品からCF谷村里佳、トヨタ紡織からCF佐藤奈々美ら実力者が加わった。選手層の厚みが増し、従来のメンバーの成長にも繋がった。レギュラーシーズンの勝敗は昨季の3勝13敗から10勝6敗にジャンプアップした。

 

(写真:かつてENEOSを常勝軍団に引き上げ、日本代表を率いた経験も持つ内海HC)

 内海HCが就任し、バスケットボールのスタイルが変わった。キャプテンのGF北村悠貴は「アーリーからのセットというオフェンスの流れがある。まずはブレイクでプッシュする。中と外のバランスを取りつつ、頭をすごく使います」と語る。

 

 指揮官は戦術の浸透度を「走るバスケに関しては70点。もっと走れると思う」と言い、こう続けた。

「ようやくバスケットにアタックを仕掛けられるようになってきた。最終的には1対1の強さ。それがコートに出てこなければいけないし、まずはアタックする意識を植え付けなければいけない。そのことは口を酸っぱく言ってきました」

 

(写真:インサイドから力強い突破を試みる谷村。ここ一番での決定力もある)

 新加入で出色の出来なのが谷村だ。1試合平均得点20点、同10.63リバウンドはいずれもリーグ2位。タイトルこそ獲得できなかったものの、彼女なしには今季の成績はあり得なかった。インサイドで抜群の強さを発揮するエースの存在はプレーオフでも頼りになるはずだ。

 

 プレーオフでは谷村、北村という柱はもちろんだが、攻撃を操る司令塔の曽我部奈央の出来が勝敗を左右する。PGは勝敗のカギを握るポジションだ。今季は全16試合でスターター起用され、得点、アシストとキャリアハイの成績を残した。持ち味であるアグレッシブなディフェンスも健在。トヨタ紡織の攻撃のリズムを崩すことも重要な役割だ。

 

 日立ハイテクは2度目のプレーオフ進出を果たし、目標の4位以上を狙う。「チームは『JUMP OVER A HURDLE』を掲げているので、力強くハードルを越えていきたい」と北村。トヨタ紡織を破ることができれば、東地区2位の富士通レッドウェーブがクォーターファイナルで待っている。町田瑠唯、篠崎澪のガードコンビによるスピーディーな攻撃が持ち味で、今季はスリーポイントもあり、対戦相手を苦しめる。レギュラーシーズンの対戦成績は2勝2敗。一発勝負だけに勝機は十分にある。

 

(写真:25歳の小池<右端>を中心に若い力の活躍が目立つシャンソン化粧品)

 もうひとつのセミクォーターファイナルに出場するシャンソン化粧品は日本リーグ時代を含む16度の優勝を誇る名門だ。今季は日本代表のF 本川紗奈生(デンソーアイリス)、谷村らが抜け、大幅な戦力ダウン。ロスター平均年齢22.1歳はプレーオフに出場する8チームの中で一番若い。前半戦は少ない選手層でさらにケガ人を抱え、5対5の練習を組めないほど苦労した。フル出場を強いられる選手もいた。

 

 若手を使わざるを得ない状況とはいえ、G小池遥、 CFディヤイ・ファトー、CF野口さくら、F水野妃奈乃が大きく成長を見せた。いずれもキャリアハイの成績を残した。昨年秋には入社3年目の小池と2年目の水野は日本代表候補、高卒2年目の野口は3×3の日本代表候補に選出された。15シーズンぶりに復帰した李玉慈HCは「どのチームより若い。これから良くなる期待感がある」と手応えを感じている。

 

 特に勢いを感じるのは後半戦に入ってからだ。3勝3敗と勝敗は五分だが、そのうちの1勝が女王ENEOSサンフラワーズに今季初めて土をつけた試合である。得点力も前半戦(10試合)が平均67.8点なのに対し、後半戦(6試合)は同71.5点と上がっている。

 

(写真:八雲学園高時代の同期・佐藤と共にアーリーエントリーながら主力に定着した吉田)

 その立役者と言えるのが、アーリーエントリーの拓殖大学4年F吉田舞衣である。1試合平均16得点。Wリーグデビューから6試合連続スターターで、2ケタ得点を続けている驚異の22歳だ。「(アーリーの4人が加わり)得点力が伸びました。吉田はいいところでスリーを決めてくれますし、アシストの面で頼りになる」とキャプテンの小池。積極的にスリーポイントを狙う吉田が警戒されれば、他の選手にもチャンスが巡ってくる。

 

 対戦相手の三菱電機は西地区3位とはいえ、15勝(5敗)を挙げた強敵である。1位のトヨタ自動車アンテロープスとは勝ち点差はわずか2だ。「チーム力が高く、中と外のバランスが良い。スピードがあり個人の1対1の能力も高い」(小池)。個人ランキングの得点部門に5人がランクインしている。成長著しい新生シャンソンの真価が問われる。

 

 シャンソン化粧品と三菱電機の勝者は、西地区2位のデンソーとクォーターファイナルに臨む。日本代表のC髙田真希、F本川を擁する。イースタン1位の女王ENEOSへの挑戦権を得るためには、リーグ最少の1試合平均62.5点という分厚い壁を崩さなければならない。

 

 14日スタートのセミファイナルからは場所を東京・国立代々木競技場第二体育館に移し、2勝先勝方式に変わる。勝ち上がったチームは各カンファレンスの1位チームと対戦する。

 

(文/杉浦泰介、写真/©Wリーグ)