はじめまして。今季より群馬ダイヤモンドペガサスの監督に就任しました秦真司です。これまでほとんど群馬とは縁のなかった私に、まさか声が掛かるとは……。私自身も驚いていますが、今は自分にできる精一杯のことをやりたいという思いでいっぱいです。
 私が監督を引き受けた理由の一つにはBCリーグの「スポーツ事業を通じた地域振興」という理念に賛同したということがあげられます。そのため、優勝を目指して勝つことはもちろんですが、選手の人間的育成もチームづくりには不可欠な要素です。そこで、私は3つの柱が重要だと考えています。「訓練的柱」「学習的柱」「教育的柱」です。

 まず「訓練的柱」ですが、これは練習や試合を繰り返すことで基本的な技術を体に覚えさせることです。選手たちが最初に取り組まなければいけないのが、この訓練的柱になるわけです。

 次に「学習的柱」とは動作解析や効果的な練習方法、実戦の中での状況判断など、野球というスポーツの専門的知識を身につけることです。もちろんプロ選手として自分のレベルアップにもつながるものですが、それだけではありません。選手の中には将来、指導者となる者も出てくるでしょう。そうした時に適切な指導ができれば、群馬の野球レベル向上にもつながります。つまり、地域スポーツ発展に結びつく大事な要素でもあります。

 そして最後に「教育的柱」ですが、BCリーグではこれが最も重要なことではないかと私自身は感じています。
 ドラフト後、私は選手たちにこう言いました。
「技術的に“すごい”と言われる選手はたくさんいる。しかし、私は君たちに“素晴しい選手”と言われるようになってほしい」

 選手は向上心をもって入団してきます。NPBを本気で目指している選手も少なくないでしょう。しかし、現実は全員がNPBに入れるわけではありません。そうなれば、ほとんどの選手が野球をやめてからの人生の方が長いのです。ですから、BCリーグの理念でもあるスポーツを通して人間力を高めることは、その後の人生において非常に重要となります。

 もちろん、プロですから、勝敗は重要です。ファンのためにも、試合で勝つことは使命の一つであることは間違いありません。しかし、結果の責任は監督が取ればいいのです。選手には競技者としてのゴールだけでなく、人生としてのゴールを頭に描いてほしい。スポーツマンシップを重んじ、ルールを尊重し、体力・知力・精神力を養い、協調性、礼儀、忍耐力、努力することの大事さ等々、さまざまなことを野球を通じて学び、吸収していってほしいのです。

 というのも、こうした選手の人間力を高めることは、やがて群馬の活性化にもつながると私は信じているからです。「人が育てば企業は育つ」――企業において人材育成は不可欠な要素です。それは地域においても同じことが言えるのではないでしょうか。だから社会に通じる人間力を身につけた選手を一人でも多く育てること。これこそが私にできる群馬への最大の恩返しでもあり、使命だと考えています。

 もちろん、1年目からリーグチャンピオンの座も狙っていきます。資本である体づくりは既に始まっており、今月20日からは高崎市で専任のトレーニングコーチと共に合同自主トレが行なわれています。2月1日からは藤岡市および宮崎県でのキャンプがスタートします。さらに3月には四国・九州アイランドリーグの徳島インディゴソックスや香川オリーブガイナーズとの練習試合も組まれています。

 昨季チャンピオンの石川ミリオンスターズをはじめ、今季2年目を迎えるチームとの差がないとは言い切れません。しかし、群馬県民に“おらがチーム”として愛される球団を目指し、私もそして選手も精一杯頑張りたいと思いますので、どうぞ応援よろしくお願いします。


秦真司(はた・しんじ)プロフィール>
1962年7月29日、徳島県出身。鳴門高校3年時には春夏連続で甲子園に出場。法政大学時代の84年、ロサンゼルスオリンピックに野球日本代表として出場し、公開競技ながら金メダル獲得に貢献した。翌年ドラフト2位でヤクルトに入団し、4年目には正捕手として122試合に出場した。その後、外野手に転向し、90年代のヤクルト黄金時代を築き上げる。99年に日本ハム、2000年に千葉ロッテへ移籍し、その年限りで現役を引退した。その後はロッテの打撃コーチや中日の捕手コーチ、解説者として活躍。今季より群馬ダイヤモンドペガサスの初代監督に就任した。





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