センバツが開幕し、プロ野球の開幕も目前。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でセンバツは中止、プロ野球の開幕は延期になりました。ようやく"いつもの春"が戻ってきたなという感じです。でも油断は禁物です。今後も感染拡大防止に務めながらプロ野球シーズンの完遂と、夏のオリンピック・パラリンピック開催に向かいたいものですね。では、今回も私の球論にお付き合いください。

 

 虎新人・佐藤の大物感

 センバツは大会2日目に母校・天理(奈良)が登場し、宮崎商を7対1で下しました。長身(193センチ)のエースとして注目されている達孝太投手、去年の秋と比べると成長がうかがえました。マウンドに立ったときのバランスもしっかりしていて、力みもなかった。変化球も低めに決まって、10奪三振はお見事。課題は球数ですね。宮崎商戦では161球を投げました。この後、勝ち上がっていくと連投になるから球数が多いと苦しくなる。省エネピッチに取り組んでもらいたいですね。

 

 ここまで見ていて他校では小園健太投手(市立和歌山)が良かったですね。中学時代からバッテリーを組んでいた松川虎生捕手との相性も抜群で、一回戦は130球で完投。最速152キロがどこまで伸びるのか。夏、そして秋のドラフトが楽しみです。

 

 プロ野球は明日(26日)から開幕です。恒例の順位予想ですが、今年は結構、両リーグともに悩みました。

 

鈴木康友の2021年順位予想
セ・リーグ
①巨人
②阪神
③中日
④東京ヤクルト
⑤広島
⑥横浜DeNA

 

パ・リーグ
①東北楽天
②福岡ソフトバンク
③オリックス
④千葉ロッテ
⑤埼玉西武
⑥北海道日本ハム

 

 セ優勝が巨人、パ優勝が東北楽天というのは希望も含めてです。震災から10年目の年に田中将大が日本球界へ復帰した。そうなると8年ぶりの巨人対楽天の日本シリーズで、菅野智之との投げ合いが見てみたい。そう思っているのは私だけではないでしょう。当時は新人だった菅野とマー君が第2戦と第6戦で対決し、1勝1敗。その再戦が実現したら野球界だけでなく、スポーツ界、社会全体が盛り上がると確信しています。

 

 私が順位予想をするときに重視しているのは投手力です。巨人は菅野残留が何よりもプラスだし、楽天は田中復帰によって先発の枚数が増えたことと、投手陣全体への好影響が期待できます。涌井秀章や則本昂大が田中を手本にしているわけですから、若手が見習わないわけがない。キャンプから田中塾が開講されていたようですし、その効果たるや。黒田博樹復帰で広島が強くなったように、"田中効果"も当然、あるでしょう。

 

 投手力という意味ではパ・リーグ3位にはオリックスを入れました。昨季最下位ですが投手陣は強力ですよ。山本由伸、山岡泰輔、宮城大弥、田嶋大樹を軸に榊原翼、K-鈴木、山﨑福也がいて、さらに平野佳寿がメジャーから戻ってきた。平野の加入で終盤に逆転されて落とす、ということも減ってくるでしょう。Aクラスを千葉ロッテと争う形になると見ています。

 

 セ・リーグの予想、Aクラスは山本昌と同じでした。マサは阪神優勝だった気もしますが、私もそれも"あり"と思います。阪神は中継ぎが分厚いですからね。巨人、阪神、中日の老舗3球団が強いと、やはりセ・リーグは盛り上がるんですよ。そこに他3球団がどう意地を見せるか、です。東京ヤクルトは優勝を何度も経験している内川聖一の加入でチームがどう変わるのか。横浜DeNAは新監督・三浦大輔のお手並み拝見。そして広島は、丸佳浩がいなくなってから、どうにも勢いがありませんね。チームの中心選手が鈴木誠也だけですから、今年も苦しそうです。

 

 埼玉西武も戦力面では苦戦しそうです。秋山翔吾が抜けた後、野手の底上げができていない上に投手力にも不安がある。強力打線が爆発すれば強いでしょうが、長いシーズンを考えると……。北海道日本ハムはエース有原航平のメジャー移籍が痛い。

 

 オリックスで付け加えておけば、上記のように投手力は盤石だし、打線は吉田正尚がしっかり軸になっている。なぜ、勝てないんだ、と見ていて不思議になりますが、感じるのはチームとしての姿勢ですね。

 

 たとえば先頭打者が初球を簡単に打ち上げてアウトになる。その後のバッターも簡単に打ってしまう。またその次のバッターも……。そういうところが勝てない要因なんじゃないかな、と。選手個々の能力は当然ありますが、2軍からそうした野球を教えてない。もっといえばチーム全体に染み付いていない。だから接戦に弱く、逆転されることが多いんじゃないでしょうか。

 

 強いチームというのは野球にカラーがあるでしょう。広島なら走塁意識が高い、西武なら相手の嫌がる野球とか。オリックスもそういうカラーが出てくると、強くなると思うんですけどね。仰木彬さんが監督だった時代のブルーサンダー打線、強かったですよね。西武のコーチをしていて、オリックスには5勝くらいしかできなかった記憶があります。それくらい強かった。

 

 オリックスの源流を探れば黄金期を築いた阪急ですから、遺産が受け継がれていないのがもったいない。頑張ろう神戸のときを思い出して、もう一度、強いオリックスになってほしいですね。

 

 新人選手では阪神の佐藤輝明の大物感がすごい。甲子園の逆方向に打ってスタンドに放り込むんですからパワーがある。パワーという面では松井秀喜以上なんじゃないでしょうか。ルーキーながら体もしっかりしているし、本職はサードですがコンバートされたレフトの守備も無難にこなしていました。ホーム刺殺もあったし、スローイングも良かったですよ。大学時代に経験があるとはいえ、プロでも無難にこなしているのは立派です。鳥谷敬のように開幕からスタメンに入れ、1軍でどんどん使ったらいい。どんな風に育つのか楽しみな新人です。

 

 センバツ、プロ野球、夏には甲子園と五輪、そして秋には日本シリーズ。今年は1年中、野球が楽しめることを願っています。その願いも込め、4月には故郷・奈良で聖火ランナーを務めてきます。そのご報告は次回。お楽しみに。

 

<鈴木康友(すずき・やすとも)プロフィール>
1959年7月6日、奈良県出身。天理高では大型ショートとして鳴らし甲子園に4度出場。早稲田大学への進学が内定していたが、77年秋のドラフトで巨人が5位指名。長嶋茂雄監督(当時)が直接、説得に乗り出し、その熱意に打たれてプロ入りを決意。5年目の82年から一軍に定着し、内野のユーティリティプレーヤーとして活躍。その後、西武、中日に移籍し、90年シーズン途中に再び西武へ。92年に現役引退。その後、西武、巨人、オリックスのコーチに就任。05年より茨城ゴールデンゴールズでコーチ、07年、BCリーグ・富山の初代監督を務めた。10年~11年は埼玉西武、12年~14年は東北楽天、15年~16年は福岡ソフトバンクでコーチ。17年、四国アイランドリーグplus徳島の野手コーチを務め、独立リーグ日本一に輝いた。同年夏、血液の難病・骨髄異形成症候群と診断され、徳島を退団後に治療に専念。臍帯血移植などを受け、経過も良好。18年秋に医師から仕事の再開を許可された。18年10月から立教新座高(埼玉)の野球部臨時コーチを務める。NPBでは選手、コーチとしてリーグ優勝14回、日本一に7度輝いている。19年6月に開始したTwitter(@Yasutomo_76)も絶賛つぶやき中。2020年東京五輪(1年延期)の聖火ランナー(奈良県)でもある。


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