(写真:5回無失点と好投し、移籍後初戦を白星で飾った藤田)

 3日、第54回日本女子ソフトボールリーグ1部が各地で開幕した。兵庫・ベイコム野球場では2試合が行われ、3連覇を狙うビックカメラ高崎BEE QUEENが昨季8位のシオノギ製薬ポポンギャルズを3-0で破った。昨季7位の伊予銀行VERTZと同4位の豊田自動織機シャイニングベガの一戦は、伊予銀行が3-1で逆転勝ちを収めた。今季はリーグ戦10節(各チーム22試合)を行い、11月にリーグ戦上位5チームによる決勝トーナメントで優勝を争う。

 

 1番・市口、先頭打者弾含む2安打(ベイコム野球場)

ビックカメラ高崎BEE QUEEN 3 = 2000100

Honda Reverta         0 = 0000000

勝利投手 藤田(1勝0敗)

敗戦投手 吉井(0勝1敗)

本塁打 (ビ)市口1号ソロ、内藤1号ソロ

 

 来年春には新リーグ開幕が予定されている女子ソフトボール。今年は夏に東京オリンピックが控えており、これまで以上に注目の高いシーズンがスタートした。

 

(写真:1番セカンドの市口。守備でもチームを牽引した)

 昨季、チーム移管後初の連覇を達成したビックカメラ高崎。今季は太陽誘電ソルフィーユから日本代表の藤田倭が加わった。就任5年目、3度の優勝に導いている岩渕有美監督は藤田を早速4番DPでスタメン起用した。

 

 1回表、1番に起用された日本代表の市口侑果が核弾頭としての役割を果たす。1-1からの3球目をライトへ。先頭打者アーチで先制点をもたらした。「チームに勢いを付けられる一打を打てて良かった」と市口は胸を張った。

 

 2アウト後、打順が回ってきた藤田はセンター前に弾き返し、移籍後初ヒットを放った。続く日本代表の山本優はレフトへのヒット。レフト前にバウンドした打球は、神藤美樹の頭上を越えた。藤田が一塁からホームへ還り、打った山本は三塁に到達した。

 

 先発マウンドは投手でメンバー表に名を連ねていた濱村ゆかりから、藤田へと代わった。リエントリー(再出場)が可能なソフトボールならではの起用法と言えよう。“開幕投手”を任された藤田は、期待に応え序盤をゼロで抑えてみせた。

 

(写真:昨季ベストナイン(一塁手)の内藤はクリーンアップできっちり仕事)

 好投の藤田に援護点が加わったのは3回表だ。3番でキャプテン2季目の内藤実穂がライトへの一発を見舞う。内藤は「1打席目は全然合っていなかった。とにかく振りにいこう」との意識で打席に入った。「打った瞬間に“行ったな”と思った」という当たりで、1点を追加した。

 

「自分らしい思い切ったピッチングをすることを心掛けた」。藤田は5回を2安打無失点でお役御免となった。「質の良い、飛ばされないボール」(藤田)を意識して磨いてきたストレートを日本代表でもバッテリーを組む我妻悠香のミットに投げ込んだ。「昨年にはなかった力のあるボールに手応えを感じた」。藤田によれば、日本代表のエースでチームメイトの上野由岐子からも「ストレート系のボールがすごく良くなった」と声を掛けられたという。

 

 藤田からバトンを受け取ったのはリエントリーの濱村。1死一、二塁のピンチを背負ったが、連続三振で凌ぎ切った。岩渕監督が「試合に展開によっては準備している。すべての試合で登板の可能性はゼロではない」と話す上野や、若手の勝股美咲もベンチに控えていたが、最終回のマウンドも濱村が上がった。締めくくりを任された右腕は、三者連続三振で試合をシャットアウトした。

 

「今年のチームがどういう試合をしてくれるか期待と不安があった。とりあえず1勝できてホッとしています」と岩渕監督。今季のスローガンは“一致団結!!!”だ。上野をはじめ日本代表の主力を多く揃え、個の能力は高い。それをチーム力に繋げられれば、リーグ3連覇の可能性は一層高まるだろう。

 

 庄司、4回途中から好リリーフ(ベイコム野球場)

豊田自動織機シャイニングベガ 1 = 1000000

伊予銀行VERTZ           3 = 000003×

勝利投手 庄司(1勝0敗)

敗戦投手 エスコベド(0勝1敗)

本塁打 (伊)正木1号3ラン

 

(写真:開幕戦に強い伊予銀行は健在。上位進出へは2試合目以降がポイントとなる)

 新キャプテンの一撃で、今季も伊予銀行は白星スタートを切った。

 

 昨季7位と1部最高成績を残した伊予銀行。今季は4人の新戦力が加わり、9年目の正木朝貴がキャプテンに就任した。開幕前、正木は「姿勢や結果でチームを引っ張っていきたい。勝てるチームを目指していきたいです」と意気込んでいた。

 

 開幕投手は、ここまで3度の大役を果たした庄司奈々がいるが、2年目の黒木美紀が任された。「本人には当日伝えた。昨季は良い結果を出してくれたので、思い切って経験を積ませようと考えました」と秋元理紗監督。昨季は新人ながらリーグ5位の防御率でチーム最多の3勝を挙げた右腕に託した。

 

 しかし、黒木は初回、豊田自動織機に先制点を与えてしまう。先頭をライトフライに打ち取った後、デッドボールで出塁を許す。続く3番の金江爽友に一塁線を破られ、一塁ランナーを還された。

 

 豊田自動織機はエースのダラス・エスコベドを起用。昨季リーグ最多勝とベストナインの2冠に輝いたメキシコ代表の右腕だ。初回に1死満塁からルーキー川口茉奈がセンターフライ。三塁ランナーの松成あゆみがホームを狙ったが、ここは豊田自動織機の守備陣に阻まれた。

 

(写真:毎回出塁を許したものの、4回途中まで1失点と粘りの投球を見せた黒木)

 黒木はランナーを許すものの、バックに助けられながら追加点を許さなかった。2回にはサード飯田瑞希がライナーを飛びついてキャッチ。3回の1死満塁のピンチは、堅い内野陣が4-6-3のゲッツーを完成させた。

 

 4回表、無死一、二塁のピンチになったところで秋元監督は黒木に代えて庄司をマウンドに送った。これ以上、追加点は与えたくない場面。背番号の右腕は、持ち味の打たせて取るピッチングでホームへの生還を許さなかった。

 

「初戦の硬さもあったが、なんとか最少失点で抑えたことが逆転勝利に繋がった」と秋元監督。初回以降、ノーヒットが続いたが、6回裏にようやく試合が動いた。代打に起用された大卒2年目の佐々木彩葉が日本リーグ初ヒットで出塁した。続く飯田は絶妙なセーフティバント。無死一、二塁のチャンスをつくった。

 

 続くバッターが送りバントには失敗したものの、クリーンアップに回った。打席には正木。0-1から抜けたボールがグリップエンドに当たり、ファウルとなった。「見逃したつもりだった。不運でしたが“仕方ないかな”と切り替えられた」。アンラッキーな場面にも慌てなかった。

 

(写真:昨季打率1割台と打撃に苦しんだ正木は、この日2安打の活躍)

 そして3球目、インローのボールを振り抜いた。「ここしかチャンスがないと思っていた。強い打球をイメージしてスイングした」。打球は追走するライトのグラブの先へ。そのままフェンスを越えた。正木の逆転3ランで、伊予銀行が逆転に成功した。

 

 7回表は庄司が無死一、二塁のピンチを招くも後続を抑えた。3-1で伊予銀行が開幕戦を逆転の白星で飾った。秋元監督が就任以降、チームは開幕戦、リーグ初戦で負け知らずだ。

「開幕戦は勝てるというジンクスみたいなものがあり、『今年も白星で飾るぞ』と終盤まで言い続けていました」(秋元監督)

「秋元監督が『リーグの初戦で負けたことがない』ということをおっしゃっていた。その言葉を信じ、自分たちはできることだけをやって戦いました」(正木)

 

 決勝トーナメントには上位5チームまでが進出できる。昨季7位の伊予銀行が食い込んでいくには、2試合目からも勝ち星を重ねていけるかがポイントだ。4日はシオノギ製薬と対戦する。

 

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新キャプテン・正木選手のインタビュー(2021年1月29日掲載)

(文/杉浦泰介、写真/公益財団法人日本ソフトボール協会)