「ダンサーの夢が詰まった舞台で踊れることに感謝しています」

 プロダンサーのKTRこと後藤慶太郎はそう声を弾ませる。彼の言う「ダンサーの夢が詰まった舞台」とは、今年1月に華々しく開幕した日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」のことだ。9チームが初代王座を巡り、バトルを繰り広げている。6月7日現在、総合順位でトップを走るのが、KTRがサブリーダーを務めるFULLCAST RAISERZである。

 

 RAISERZは各ラウンドの順位による得た勝ち点は81ポイント。2位のavex ROYALBRATSには6ポイント差をつけ、上位4チームまでが進めるチャンピオンシップの“ポールポジション”にいる。KTRは現状をこう振り返る。

「チャンピオンシップに近い位置にいることは“よし”と思うところはありますが、目指しているところは頂点です。ROUND.6を制した時、『あまり喜んでいないよね』と言われることが多かった。もちろん勝ったことはうれしかったのですが、チームの中でもひとつのラウンドで勝つことがゴールではないと捉えています。だから、そう映ったのかもしれませんね」

 

 RAISERZはダンスの実力もさることながら、オフィシャルアプリの有料会員の投票によるオーディエンスジャッジで、毎回高得点を集める人気チームだ。KTRは「オーディエンス票で順位が一気に入れ替わる。(ここまでの好成績も)皆さんのおかげです」と感謝を述べる。ファンの存在は「ダンスで皆さんに元気を与え、世界を明るくしたい」と考えるKTRにとってもなくてはならないものだ。

「『KTRのダンスを観ていたら頑張れるわ』と言っていただけることもある。それが自分の糧になっています」

 

 エナジーや感情を表現するダンス

 

 KTRが所属するRAISERZは、パワフルな動きが特徴のKRUMPをベースにダイナミックな動きを魅せるブレイキン(ブレイクダンス)、アクロバットを組み合わせたパフォーマンスが売りだ。ここまでD.LEAGUEの各ラウンドで、ストーリー性があるSHOWを披露し、独特な存在感を示している。チームの公式HPには<KRUMP特有の表現と熱量が最大の武器!>と記されており、こう続くのだ。

<団結力をモットーに、エナジー溢れる魂のダンスと見る者を惹き付けるパフォーマンスで勝負する>

 

 RAISERZのパフォーマンスの軸となるKRUMPは、アメリカ・ロサンゼルス発祥のストリートダンスである。KRUMPとは「Kingdom」(神の国)「Radically」(素晴らしい)「Uplifting」(精神的高揚)、「Mighty」(偉大なる)、「Praise」(神への賞賛)の頭文字からとっている。ストンプ(足を踏み鳴らす)、チェストポップ(胸を突き出す)、アームスイング(腕を振り下ろす)という3つの動きがベース。エナジーや感情などを表現するダンスと言われ、全身を大きく使ったアグレッシブでパワフルな動きが特徴だ。

 

 どちらかと言えば、“剛”のイメージが色濃いKRUMPERの中において、KTRは異彩を放つ。本人が「細かくてクリアなキレのあるダンスが自分の強み」と口にするように、彼のパフォーマンスからは力強さの中に繊細さを併せ持つ印象を受ける。「一般の方が見ても“カッコイイ”と思うKRUMPを」。KTRは誰しもに刺さる“カッコイイ”を追い求める。それがKRUMPに魅せられた男のこだわりである。

 

 KTRがダンスを始めたのは、高校3年からだ。キャリアはもう10年以上あるが、そのスタートは決して早くない。小学校はソフトボール、中学高校は野球部に所属していたからだ。愛媛県宇和島市に住む野球少年が、ダンスに目覚めたきっかけとは――。

 

(第2回につづく)

 

KTRプロフィール>

1990年11月18日、愛媛県宇和島市生まれ。本名は後藤慶太郎。高校3年時からダンスを始める。2013年には日本最高峰のダンスバトルイベント「DANCE@LIVE JAPAN FINAL HIPHOP SIDE」で準優勝。翌年、ドイツで行われたKRUMP世界大会「GERMANY 1 on 1 KRUMP BATTLE. CALL OF BATTLE」で準優勝した。15年にはパリでの「KRUMP BATTLE PARIS ILLEST」でベスト24に入るなど、繊細でクリアな動きとキレのあるパフォーマンスを武器に、様々なコンテストやバトルで好成績を残してきた。日本KRUMP界を代表するダンサーで、国内に留まらず海外からの評価も高い。現在は日本発のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」のFULLCAST RAISERZに所属し、サブリーダーを務める。韓国の人気グループ「東方神起」のLIVE振付を任されるなど、アーティストの振付も行う。モデルとしても活躍するなどマルチに活動している。身長179cm。

 

(文/杉浦泰介、写真/©D.LEAGUE 20-21)

 


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