6月は東京五輪日本代表のメンバー発表がありましたね。18名プラスバックアップメンバーの4名で五輪に臨みます。選出されたメンバーには、選考から惜しくも漏れた選手たちの分の気持ちも背負って戦ってほしい。森保一監督は「金メダル獲得」を目標に掲げていますから、ぜひ頑張ってほしいものです。そして、DF酒井宏樹がマルセイユから浦和レッズに移籍しました。これは楽しみな補強ですね。

 

 18名のリストを見て率直に思ったのは「若い選手たちでも海外組が増えたぁ」と。時代を感じますね。男子はDF吉田麻也、酒井、MF遠藤航とオーバーエイジで後ろを固めています。前線やサイドは若い選手たちに存分に走ってもらいましょう。森保一監督は金メダルを目標に掲げていますが、現実的にはまずは予選突破を狙うべきでしょう。日本は南アフリカ、メキシコ、フランスと同組と非常に厳しいグループです。

 

 理想的な展開としては初戦の南アフリカ戦と2戦目のメキシコ戦は勝利を収めたい。初戦で勝てるとモチベーションもグンと上がります。過密日程において勝利ほど最良の薬はないんです。試合をこなし、中2日で休養、調整し、また試合……。連勝できれば精神的にもストレスなく気持ちよく次の戦いに臨めますからね。

 

 国際大会で優勝を狙うチームは初戦にベストコンディションを持ってこないとも言われています。ですが日本の場合は、厳しいグループに入ったので最初からフルスロットルで行くべきでしょうね。初戦でつまずくと選手を入れ替えたり、システムを変更したりと歯車が狂ってしまう。是が非でも南アフリカから白星をあげたいですね。

 

 三笘はジョーカーで!?

 

 昨年、川崎フロンターレで大ブレイクを果たし今季も好調を維持しているMF三笘薫ですが、メディアでは起用法について論じられています。三笘はスピードとテクニックを駆使したドリブルが武器です。同じ左サイドハーフにはMF相馬勇紀が選出されています。彼は切れのあるドリブルとフィジカルコンタクトの強さが武器ですね。僕が思うに今のところ相馬がポジション争いで一歩リードしていますね。三笘には後半からジョーカーとして流れを変えて欲しい。タイプが違う彼らふたりのドリブラーが左サイドからチャンスを演出しれることを期待しましょう!

 

 そして今月は大きなニュースが飛び込んできました。右サイドバックの酒井が浦和レッズに移籍しました。実に9年ぶりのJリーグ復帰です。現役バリバリの日本代表右サイドバックがJリーグ復帰ですよ。厳しいフランスリーグでプレーしていた酒井は「まだまだJリーグのプレースピードはこんなものか」と思うかもしれないですよね。ただ、そこで酒井がJリーグのスピードに慣れるのではなく、酒井が周囲の選手にプレースピード、判断スピードをあげることを要求するべきでしょう。それが浦和のレベルアップ、ひいてはJリーグのレベルアップにつながると思います。夏以降、浦和に合流した彼のリーダーシップにも注目です。酒井と対峙する相手チームのアタッカーの奮起にも期待したいですね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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