31日、東京オリンピック陸上競技2日目が東京・国立競技場で行なわれた。各組3着までが自動で準決勝に進める男子100m予選は、自己ベスト9秒77のトレイボン・ブロメル(アメリカ)、2016年リオデジャネイロオリンピック銅のアンドレ・ドグラス(カナダ)、12年ロンドンオリンピック銀のヨハン・ブレーク(ジャマイカ)ら海外の有力選手は順当に突破。多田修平(住友電工)は10秒22で第1組6着、山縣亮太(セイコー)は10秒15で第3組4着、小池祐貴(住友電工)は10秒22で第4組4着、揃って予選落ちに終わった。

 

 日本人スプリンターたちが世界大会のファイナリストを目指し、世界に挑んだが、その壁は高かった。

 

 第1組に登場したのは、今年の日本選手権王者・多田。得意のスタートで飛び出し、逃げ切りたいところだ。7レーンから、中盤から終盤にかけて差をつけられた。リアクションタイムはこの組トップの0秒130だったが、「自分の思い通りの走りができない感じだった」と多田。10秒22で6着。予選は各組上位3着に加え、4着以下の選手は記録上位3人までが拾われる。この時点では通過ラインギリギリだったが、続く第2組の4着ブロメルが10秒05をマークし、多田の予選敗退が決まった。

 

 第3組には日本記録保持者の山縣。今年6月の布勢スプリントで9秒95の日本新を叩き出している。オリンピック出場は3度目。過去2大会準決勝に進出しており、日本勢で一番安定感のあるスプリンターと言っていい。山縣も得意のスタートで飛び出したいところだった。だが、どことなく硬さが見られるように映った。7レーンから飛び出すと、いつものような淀みない走りができなかった。10秒15でこの組4着。3着に100分の3秒届かなかった。この時点ではタイムで拾われる可能性もあったものの、他の組の結果を受け、予選落ちが決まった。

 

 続く第4組には日本歴代3位タイの記録を持つ小池が挑んだ。他2人の日本人と同じように7レーンを走った小池。後半追い上げを見せたが3着を争ったジェーソン・ロジャーズ(セントクリストファー・ネイビス)に競り負けた。10秒21と10秒22。わずか100分の1秒の差が明暗を分けた。小池は「今できる準備はしてきた。結果がこれだったら実力」と現実を受け止めた。

 

 89年前のロサンゼルスオリンピックで6位入賞した吉岡隆徳以来の決勝進出は叶わなかった。予選7組を終え、4着以下で準決勝に進んだ選手のタイムは10秒05、10秒10、10秒12。もちろん着順での通過が理想ではあるが、これらの記録も決して日本の選手たちに出せないものではなかったはずだ。大舞台で実力を発揮することがいかに難しいかを感じさせられる結果となった。

 

(文/杉浦泰介)