6日、東京オリンピック陸上男子4×100mリレー決勝が行われ、イタリアが37秒50で制し、金メダルに輝いた。2位は0秒01差でイギリス、3位には0秒20差でカナダが入った。リオデジャネイロオリンピック銀メダルの日本は、バトンパスに失敗し、途中棄権となった。

 

 スプリント戦線の勢力図が変わろうとしているのか。男子100mを制したモントマルチェル・ヤコブスを擁するイタリアが4継でも頂点に立った。アンカーのフィリッポ・トルトゥでイギリスをかわし、逆転優勝。3連覇を狙ったジャマイカ、陸上大国アメリカは表彰台にすら絡めなかった。

 

 2大会連続のメダル獲得を狙う日本は勝負をかける必要があった。予選は決勝進出チーム中最低のタイム。大外の9レーンに入り、「安全バトン」から「攻めのバトン」に切り替えたのだった。

 

 走順は予選と変わらず、多田修平(住友電工)、山縣亮太(セイコー)、桐生祥秀(日本生命)、小池祐貴(住友電工)だった。自己ベスト9秒台3人(山縣9秒95、桐生と小池9秒98)という過去最速のメンバーに託された。

 

 号砲が鳴ると、勢い良く飛び出した多田。頭を下げたまま前傾姿勢で進む。得意のロケットスタートで先行した。2走の山縣が走るコースはほぼ直線。いかにスピードに乗った状態でバトンを渡せるかがカギだ。

 

 しかし、多田からのバトンは山縣の手にわずかに届かなかった。テイクオーバー・ゾーン内で受け渡しができず日本はここで途中棄権扱いとなった。個のスピードでは劣る日本が勝つにはバトンパスで利得距離を稼ぎ、トップスピードで渡すという緻密な技術が求められていた。

 

 リオでは「攻めのバトン」が功を奏した。予選から足長(次走者がスタートを切る目印)を延ばしたことが銀メダル獲得の快挙達成に繋がった。だが、今回は結果に繋がらなかった。2走の山縣は「『攻めのバトンを』と話し合った。勝負にいった結果」と唇を噛んだ。悲願の金メダルを目指した日本の挑戦は、東京で結実しなかった。

 

(文/杉浦泰介)