4月28日に開幕した北信越ベースボール・チャレンジ・リーグは、新潟、長野、富山、石川の県民の皆さんをはじめ、多くの方々に支えられて無事、初年度を終えることができました。見直すべき点は多々あり、課題は山積みです。しかし、ゼロからスタートした1年目としては成功と言えるのではないかと感じています。
(写真:大勢の観客でにぎわった開幕ゲーム)
「野球事業を通じての地域振興」を第一の運営理念としているBCリーグでは、地元に根ざしたチームづくりが重要です。その成果をはかるバロメーターの一つが観客動員数です。開幕前、私は目標を1試合平均5,000人としました。サッカーJリーグ・アルビレックス新潟の運営に携わっていた過去の経験から、試合方式やイベントなど工夫次第で十分に見込める数字だと考えていたのです。

 しかし、現実はそう甘くはありませんでした。各県での開幕戦(4月28、29日)こそ新潟が4,538人(三条市民球場)、長野が6,832人(長野オリンピックスタジアム)、富山が6,592人(富山アルペンスタジアム)、石川が4,100人(石川県立野球場)と最高の滑り出しを見せたものの、5月のGW明けからは徐々に減少傾向を辿りました。1,000人に達しない試合もあり、リーグ全体での1試合平均は1,790人という結果となったのです。

 とはいえ、この数字が決して失敗に値するとは考えていません。むしろ、1年目としてはまずまずの成功という見方もできるのではないかと思っています。最も反省しなければならない点は、5,000人という目標を簡単に掲げてしまったことです。考えてみれば、アルビレックス新潟は10年以上かけて、あれだけの人気を築いてきたわけです。それをわずか1年足らずでやってしまおうというのはあまりにも無謀だったと反省せざるを得ません。

 もちろん、時間をかけずに数字を上げる方法はあります。例えば、剛速球を投げるピッチャーや豪快なホームランバッターを連れてくれば、すぐに観客の数が増加することは想像に難くありません。しかし、私たちが目指しているのはあくまでも「地域振興」です。興味本位ではなく、心からチームや選手を愛してくれるファンを増やし、球団と県民が一体化することが大事なのです。

 そして、それは一朝一夕で決してできるものではありません。“少しずつ”“丁寧に”継続していくことでしか実現の道はないのです。初年度はそのことを痛感させられた1年でもありました。

 2年目の挑戦

 さて、来年度から新しく群馬と福井が参入し、6球団でのペナント争いが行なわれます。2県とも、他の4県に負けないほど野球熱が高い地域だけあり、県内では非常に盛り上がっているようです。高校野球のレベルも高く、1年目から優勝争いの一角を担う可能性も高いでしょう。

 さらに、2地区制、前後期制、プレーオフ制度を新たに導入します。これは刺激的要素を増やすことで、よりエキサイティングなゲーム作りをするためです。
 まず上信越地区(新潟、信濃、群馬)と北陸地区(富山、石川、福井)の2地区に分け、それぞれ優勝を争います。これは移動の負担軽減ということもありますが、それ以上に近隣県同士で争うことによって、ライバル感を強めるという目的があります。実際、今シーズン最後まで熾烈な優勝争いをした富山と石川には、隣県ということもあり、まるで巨人阪神のように「絶対に負けられない相手」という意識が既に強く芽生えているようです。隣県同士の試合を多く組むことでガチンコ勝負が数多く見られるのではと期待しています。

 また、前後期制は消化試合をできるだけ減らしたいという狙いがあります。例えば、今シーズンの新潟アルビレックスBCのようにゲーム差が大きく開いたとしても、後期からまた新たにスタートラインに立つことができるわけです。そうすれば、ただ試合をこなしていくといったダラダラ感が払拭されます。
 そしてポストシーズン制度は、シーズン終盤の大きな見せ場として、より一層リーグを盛り上げてくれることことでしょう。

 よく「2年目の壁」「2年目のジンクス」といった言葉が使われますが、これはBCリーグにも当てはまると思っています。今後、リーグが成功をするかどうかは来シーズンが大きなカギとなるでしょう。私にとっても、勝負の年です。6球団の運営を安定させ、さらなる集客力を高めること。その目標に向かって、“一つ一つ丁寧に”やっていきたいと思っています。

 11月1日よりリーグ名を「北信越BCリーグ」から「BCリーグ」と改称し、新たにスタートしました。今シーズンの反省をいかし、また新たな歴史をつくっていきたいと思っています。2年目のBCリーグをどうぞ楽しみにしていてください。そして、応援よろしくお願いいたします!

村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。


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 今回は村山哲二BCリーグ代表のコラムです。「開かれたリーグ成功への道」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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