北信越BCリーグは17日でレギュラーシーズンの全日程が終了しました。新潟アルビレックスBCの初年度の成績は18勝52敗2分。残念ながら大きく負け越し、最下位となってしまいました。
 本格的に始動した3月31日から約6カ月半、選手たちはよく頑張ったと思います。これまでにない程の努力をした選手も少なくないでしょう。実際、開幕当初から比べれば、技術的にもレベルアップしていることは間違いありません。
 とはいえ、結果が求められるのがプロの世界。他の3球団と比べても基礎体力、テクニック、精神力……全ての面で劣っていたと認めざるを得ません。来季に向けてメンバーがガラリとかわる可能性は決して否定できないと思います。

 プロとは弱肉強食の世界です。海外のリーグでは、結果が出ない選手をシーズン途中で戦力外にすることは珍しいことではありません。特に一日一日が勝負の独立リーグでは、毎日のようにメンバーが入れ替わります。
 しかし、解雇される選手がいるからこそ、また次の選手にチャンスが巡ってくる。一見、非情とも思えるこうした代謝システムが、より多くの選手にチャンスを与えることにつながっているのです。

 選手の士気を高めるためにも、厳しさは必要でしょう。人間、誰しもそうですが、ぬるま湯につかっている状態ではなかなかモチベーションは上がりません。ところが、「ここで結果を出さなければ、明日は職を失ってしまう」となると、必死にならざるを得ないわけです。そうなれば、自然とチームは強くなり、リーグのレベル向上を図ることもできます。

 また、一度解雇されたら終わってしまうかというと、そうではありません。独立リーグはもちろん、MLBでも過去の成績は一切、関係なくなります。その時の選手の実力だけがものを言う世界。力があれば復帰のチャンスはいくらでもありますし、解雇された翌日に他のチームと契約が成立することだってあり得るのです。

 例えば、桑田真澄投手はマイナーからメジャーに昇格し、そしてシーズン途中で突然、戦力外通告を受けました。しかし、桑田投手は来季も再び挑戦すると公言しています。NPBではあまりないことだと思いますが、海外ではよくあることです。
 つまり、力なき者は切り捨てられる厳しい世界ではあるけれども、一方でチャンスは非常に多い。「まだ、自分はやれる」と思えば、いくらでも挑戦できるのです。だからこそ、選手はやりがいを感じ、常に高いモチベーションを維持できるのだと思います。

 僕は10代半ばの頃、いろいろな事情で野球をやることができなくなりました。しかし、それが僕の独立リーガーとしてのスタート地点でもあります。「明日には解雇を言い渡されるかもしれない」という厳しさの中に身を置いてきたからこそ、「一日でも長くユニホームを着たい」という思いが自然と芽生えたのでしょう。そして、それがプロ意識につながっているのだと思います。

 BCリーグはまだ1年目を終えたばかりですから、改善の余地はたくさんあります。さまざまな意見を出し合い、「野球事業を通じて地域の活性化」という理念に近づけられるようなリーグに発展していってほしいと願っています。僕自身も実際に独立リーグでプレーしてきた選手として、これからも貢献していきたいと考えています。


根鈴雄次(ねれい・ゆうじ)プロフィール>:新潟アルビレックスBCプレーイングコーチ
東京都出身。日大藤沢高を中退し、米国へ単身留学する。その後、新宿山吹高に再入学。23歳で法政大に進学し、東京六大学野球で活躍した。00年春、エクスポズ(現ナショナルズ)傘下のマイナーチームに入団。一時は3Aまで上り詰めるも、メジャー昇格には至らなかった。その後、米国、カナダ、オランダなどの独立リーグを経て、今季より新潟アルビレックスBCのプレーイングコーチに就任した。


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 今回は新潟・根鈴雄次プレーイングコーチのコラムです。「BCリーグ来季への課題」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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