8日、東京オリンピック・男子マラソンが北海道・札幌大通公園を発着点に行われ、2016年リオデジャネイロオリンピック金メダリストのエリウド・キプチョゲ(ケニア)が2時間8分38秒で金メダルを獲得した。キプチョゲは史上3人目の同種目連覇を達成。銀メダルは1分20秒差でアブディ・ナゲーエ(オランダ)、銅メダルは1分22秒差でバシル・アブディ(ベルギー)が手にした。日本勢は大迫傑(ナイキ)は2時間10分41秒で6位入賞。中村匠吾(富士通)は2時間22分23秒で62位、服部勇馬(トヨタ自動車)は2時間30分8秒で73位だった。

 

“世界最速”のランナーは最強であることも証明した。2時間1分39秒の世界記録保持者キプチョゲがオリンピック連覇を達成した。女子の倍となる30人が途中棄権したサバイバルレースだったが、ゴール後も涼しい顔。王者の風格を漂わせ札幌の街を駆け抜けた。

 

 午前7時にスタートした男子は106人がエントリー。日本は大迫、中村、服部の3名が出場した。大迫はレース前に自身のSNSで現役引退を表明。東京オリンピックがラストランとなる。気温26度、湿度80%のコンディションで札幌大通公園を飛び出した。

 

 序盤は横にも縦にも長い集団を形成。しかし暑さに強いと言われていた中村は5km通過前にして先頭集団から遅れた。その集団は10㎞通過の時点では約50人。大迫と服部は後方から状況を窺った。

 

 20km通過で服部が脱落。先頭集団は約40人に減り、日本勢で残るのは大迫のみとなった。25km通過は1時間17分24秒。先頭に立ったキプチョゲがレースをつくる。集団はひとり、またひとりと振るい落とされていく。

 

 キプチョゲが30kmを1時間32分31秒で通過した際には、後に続くのは約10人。一度は離された大迫は食らいついていた。しかし、ここでキプチョゲがペースアップ。他を突き放し、勝負を仕掛けた。35km通過で2位以下に30秒以上の差をつけた。

 

 2位集団はナゲーエ、アプディ、ローレンス・チェロノ(ケニア)、アヤド・ラムダセム(スペイン)。8位の大迫はその集団を24秒差で追いかける。36km手前でアモス・キプルト(ケニア)、アルフォンスフェリックス・シンブ(タンザニア)をかわし、6位に浮上した。メダル圏内を視界にとらえた。

 

 40km通過はキプチョゲが2時間1分55秒。2位集団は2時間3分12秒。そして大迫は2時間3分30秒と18秒差に迫っている。キプチョゲはそのまま影を踏ませることなくトップでフィニッシュテープを切った。沿道に手を振る余裕を見せ、60年ローマと64年東京のアベベ・ビキラ(エチオピア)、76年モントリオールと80年モスクワのワルデマル・チェルピンスキー(東ドイツ)に続く男子マラソン史上3人目となる連覇を成し遂げた。

 

 2位集団はナゲーエ、アプディ、チェロノの3人となり、最後の直線でナゲーエとアプディが抜け出した。ナゲーエはオランダ、アプディはベルギーと国籍は違うが内戦下のソマリアを離れた同胞だ。ナゲーエが2位、アブディは3位。2人で表彰台に上がってみせた。

 

 メダルにこそ手は届かなかったが、大迫は6位でフィニッシュ。現役ラストランは終盤まで食らいつき、日本人ランナーの可能性を示した。ロンドンオリンピック以来の日本勢入賞を果たした大迫は言う。「次は後輩たちの番」。パリへのバトンは渡された。

 

(文/杉浦泰介)