28日、東京パラリンピック陸上競技2日目が東京・国立競技場で行われた。男子走り幅跳び(義足T63)は、ヌタンド・マーラング(南アフリカ)が7m14をマーク。自らが持つT61(両足義足)の世界記録を更新して優勝した。リオデジャネイロパラリンピック銀メダリストの山本篤(新日本住設)は6m75の日本新を叩き出し、4位に入賞した。小須田潤太(オープンハウス)は自己ベストの5m95で7位入賞を果たした。女子400m(上肢障がいT47)決勝はリオパラリンピック同種目銀のアンルネ・ウェイヤーズ(南アフリカ)が56秒05で制した。リオパラリンピック銅の辻沙絵(日本体育大大学院)は58秒98で5位だった。

 

 女子走り幅跳び(義足T64)はフルール・ヨング(オランダ)が6m16の世界新記録で金メダルを獲得した。中西麻耶(阪急交通社)が5m27で6位、高桑早生(NTT東日本)が4m72で8位だった。中西は3大会連続、高桑は2大会連続の入賞となった。男子5000m(車いすT54)決勝はリオパラリンピック銀メダリストのマルセル・フグ(カナダ)が10分29秒90で優勝。樋口政幸(プーマジャパン)は10分31秒28で8位に入賞した。

 

 前日の初日は4個のメダルを獲得した日本陸上チームだが、2日目は誰ひとり表彰台に届かなかった。過去世界選手権を2度制しており、パラリンピックではこの種目で2個の銀メダルを手にしている山本は、惜しくも4位だった。

 

 日本の第一人者は、1本目から自己ベスト(6m70の日本記録)に迫る6m62の好記録をマークした。しかし、世界の強豪たちはそのさらに上をいった。T61(片足義足)の世界記録保持者レオン・シェーファー(ドイツ)は6m70で山本の記録を超えた。ダニエル・ワグナー(デンマーク)は7m07のビッグジャンプ。さらにマーラングも7m02で続いた。1本目終了時点で山本は5位につけた。

 

「世界の選手と本気で勝負ができた。久々に楽しかった」と山本。踏み切りで攻め、5本目には6m75を跳んだ。日本記録を0m05塗り替え、この時点で3位に躍り出た。一躍、表彰台圏内に食い込んだわけだが、シェーファーに7m05の大ジャンプで抜き返された。最終跳躍でマーラングは7m17、シェーファーは7m12まで記録を伸ばした。

 

 山本はリオに続く、この種目3個目のメダルは手にできなかった。

「目標である最高のジャンプ、自己ベスト更新はできた。ちょっとメダルが見えた中で逆転されたのは悔しさが残る」

 表彰台に上がった3人はすべて7mジャンプ。山本は「世界はどんどん成長している。僕はちょっとずつ。その差は開いている」と冷静に分析する。

 

 とはいえ39歳での自己ベスト更新に「まだ伸びる」との手応えを感じているのも事実だ。それはレース後、現役続行を明言したことからも窺える。その一方で、若手の奮起に期待する。「僕を踏み台にして世界に羽ばたける選手を」と語った。

 

 リオパラリンピックで銅メダルを手にし、一躍名を上げた辻だったが、本人によれば「いいことばりではなくつらい日もあった」という。「辞めた方が楽と思う日々もあった」と振り返る。

 

 初出場のパラリンピックは怖い者知らずで挑めた部分もあったのだろう。「勢いだけでメダルを獲って、この競技の特性やタイムを出すことの難しさを知った」。前述したように心折れそうになったこともあった。苦しい時間を支えてくれた人たちがいたからこそ、「自分ひとりでは辿り着けなかった」との言葉が出た。

 

 この4月に自らの日本記録を塗り替えるなど、調子は上向きだった。だが、それ以上に世界との差は顕著だった。自己ベストはファイナリストの中で5番目。この日の5位も妥当な結果と見ることもできる。「今ある自分の力は出し切った」と辻。ベストは尽くした。

 

 中西&高桑もリオ超え届かず ~女子走り幅跳び(義足T64)~

 

 北京から4大会連続の中西とロンドンから3大会連続の高桑。5年前のリオデジャネイロパラリンピックは中西が4位、高桑が5位だったが、自国開催でその順位を上げることはできなかった。

 

 T64(片足義足)の世界記録保持者でリオパラリンピック金メダリストのマリアメリ・ルフュル(フランス)も出場したこの種目、ハイレベルな優勝争いとなった。オランダのヨングは1本目で6m16をマーク。自身の持つT62(両足義足)の世界記録を塗り替え、T64の記録をも上回るものだった。

 

 一方で日本勢は記録を伸ばせない。高桑は1本目から助走が噛み合わず。中西はファウルに終わる。3本終了時点で上位8人まで入れば、計6本を飛べる。中西は5m12で6位、高桑は4m88で8位。残り3本での巻き返しを狙った。

 

 中西は5本目で5m27。記録を伸ばしたが、自身の持つアジア記録(5m70)の更新はならなかった。高桑も最後までリズムに乗ることができず、2本目の4m88のまま。順位は中西が6位、高桑は8位。3本目を終えた時点での順位のまま競技を終えた。

 

 高桑が「なんとか6本飛ぶことができて良かった。ただ記録に関しては不本意。実力不足を痛感」と語れば、中西は「今までパラリンピックで一番苦しい大会でした」と振り返った。

 

(文/杉浦泰介)