3日、東京パラリンピックの陸上競技が東京・国立競技場で行われた。ユニバーサルリレー4×100m決勝は、アメリカが45秒52の世界新記録で金メダルを獲得した。銀メダルは1秒98差でイギリス。日本は3着(イギリス)と0秒48差の4着だったが、のちに2着の中国が失格となり、繰り上がりで銅メダルを獲得した。

 

 この日、国立競技場の空は一日雨雲に包まれていたが、ユニバーサルリレーの日本代表にとっては、曇りのち晴れの銅メダルだ。

 

 今大会からのパラリンピック新種目ユニバーサルリレーは4つの異なる障がいのある男女2人ずつが、バトンパスではなくタッチで繋いで走る。第1走が視覚障がい、第2走が機能障がい、第3走が脳性まひ、第4走が車いすと定められているが、男女2人ずつであれば組み合わせは自由だ。

 

 日本は予選を澤田優蘭(マッシュホールディングス)、大島健吾(名古屋学院大)、高松佑香(ローソン)、鈴木朋樹(トヨタ自動車)の順で走った。上位4予選第2組3着だったが、47秒94の日本新記録をマーク。予選3組が終わった結果、全体4位のタイムで決勝進出に滑り込んだ。

 

 決勝も同じオーダーを組み、予選で46秒02の世界記録を塗り替えた中国、予選2位のアメリカと同3位のイギリスに挑んだ。日本は最も内側の1レーンを走った。1走の澤田は「縁石の恐怖心があったが、ケガをしようが全力で届けるつもりだった」とガイドランナー塩川竜平と共に駆け抜けた。

 

 2走の大島も力強い走りで、イギリスのジョニー・ピーコックらトップスプリンターたちを追いかける。3走の高松もアンカーの鈴木に繋いだ。鈴木も懸命に前を追いかけたが、結果は47秒98の4着。3着のイギリスには0秒48及ばなかった。トップはアメリカ。各種目のメダリストを揃えた強力な陣容で新種目の頂点に立った。フィニッシュタイムは世界新記録の45秒52。2着には0秒51差で中国が入った。

 

 レース後、目標とした表彰台に届かず日本の選手たちは「すごく悔しい」と口を揃えた。しかし、女子400m (脳性まひT38)予選に出場していた高松を除く選手、ガイドランナーによるミックスゾーン(取材エリア)対応中に朗報が。中国の第1走者のガイドランナーが第2走者へのタッチワークの際、伴走した選手を引っ張ったとの判定で失格となったのだ。イギリスが2位、日本が3位に繰り上がった。

 

 ミックスゾーンは改めて、メダル獲得の喜びを語る場に転換した。「決勝に上がれたからこその銅メダル」と澤田。塩川は「繋げば何が起きるかわからない」と信じて走ったという。チームを統括する高野大地コーチは「どう喜んだらいいかわからない」と語り、続けた。「まず(メダルへの)第一条件としてゴールすることを目標とした」。皆が言うように、決勝に残ったこと、大きなミスなく完走したからこそ得られた勲章である。

 

 日本は個の走力ではまだ海外の強豪に劣るが、タッチワークを磨いてきた。銅メダルは19年から合宿を行うなど継続的に強化してきた成果だ。アンカーの鈴木がこうまとめた。

「ここに来るまでスタッフの方々たちがしっかり分析し、最後まで繋ごうとチーム一丸となってやってきました。ここにいるメンバーだけじゃなくて他のメンバーと切磋琢磨してやってきからこそ、こういう結果になったんだと思います」

 

(文/杉浦泰介)