現地時間18日、MLBのMVPが発表された。アメリカン・リーグはロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平が初、ナショナル・リーグはフィラデルフィア・フィリーズのブライス・ハーパーが2度目の受賞となった。大谷は全米記者協会会員による投票で満票(30人)で1位票(14点)を獲得、2位のブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(トロント・ブルージェイズ)に大差をつける420点で選ばれた。日本人選手としては2001年のイチロー(ア・リーグ、シアトル・マリナーズ)以来のMVP。今季の大谷は投手として9勝2敗、打者として46本塁打、100打点、26盗塁、103得点を記録した。

 

“二刀流”でMLBを沸かした大谷に新たな勲章が加わった。海を渡り、エンゼルス4シーズン目で投打ともにキャリアハイの成績を残した。

 

 打者としてはシーズン終盤までホームランキングをゲレーロ・ジュニア、サルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)と争った。惜しくもタイトルには届かなかったが、リーグ3位の46本は04年に松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース)が放った31本を大きく上回った。リーグ11位タイの103得点、リーグ13位タイの100打点を挙げ、打撃3部門で大台に乗せた。

 

 スラッガーとして対戦相手に恐れられたことは、リーグトップの敬遠四球(20)が示している。四球数は96、死球を合わせればちょうど100。打率は2割5分7厘でリーグ45位だが、出塁率は3割7分2厘とリーグ5位に上がる。メジャーでアピールしたのはパワーだけではない。リーグ5位の26盗塁を記録し、スピードでも魅せた。45本塁打&25盗塁以上はMLB史上6人目の快挙である。

 

 驚くべきは打だけではないことだ。投げては23試合に先発登板し、9勝を挙げた。130回1/3を投げ、防御率は3.18をマークした。156奪三振。打撃3部門(安打、打点、得点)と合わせ、5部門で100を超える“クインティプル100”を達成し、1919年のベーブ・ルース(ヤンキース)の4部門(安打、打点、得点、四球、投球回)を上回ってみせた。

 

 オールスターでも“二刀流”で起用されるなど、センセーショナルな働きぶりを見せた大谷のMVP獲得に異論を挟む者はいないだろう。ついに1シーズン“二刀流”で走り抜いた。リーグMVPのほか選手間投票でのMVP、ア・リーグ最優秀野手賞をダブル受賞。シルバースラッガー賞もDH部門で輝いた。今後発表されるオールMLBチーム(MLBのベストナイン)には先発投手とDH部門で候補入り。ア・リーグの年間最優秀DH選手に与えられるエドガー・マルティネス賞は受賞濃厚と見られている。

 

 来季も投打での活躍が期待される。打ってはホームランキング、投げてはハーラーダービーを制す――。そんな漫画の世界のような夢を抱かせてくれる。2023年のシーズンは、大谷がどんな記録を打ち立てるのか、楽しみである。

 

(文/杉浦泰介)

 

◾️関連記事はこちら

二宮清純「プロ野球の時間」 第729回 日米に夢を与えた野球少年の躍動(2021年10月5日更新)

二宮清純「プロ野球の時間」 第726回 球宴で二刀流・大谷を可能にした特別ルール(2021年8月12日更新)