第136回 やってみないとわからない。だから面白い!?
先日、都内の中学校でパラスポーツの活動のお話する機会をいただきました。私たちSTANDがパラスポーツを通して共生社会を目指し、取り組んできた活動について話しました。
終了後、参加者の生徒さんたちから質問や感想をたくさんいただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。いただいた質問や感想は、どれも多くのことを教えてくれるものばかり。私にとって、とても勉強になる機会となりました。
ある生徒がこんな感想を書いてくれました。
「私はこれまで、“失敗はしてはいけない”と思っていました。でも伊藤さんのお話を聞いて、“早くたくさん失敗しておけばいいかも”と思いました。失敗を目指して頑張ります」
もちろん、私は「失敗を目指してください」とは言っていません。ですが、こうした言葉を紡ぎだしてくれたことが、本当に嬉しかったです。
私が当日、お話したのは以下のような趣旨のことでした。
「やってみないとわからない。パラスポーツの事業は、前例がなかったから、経験も知見もないから。だから、やってみないとわからない。初めて生中継をした時には『おまえら、障害者をさらし者にしてどうするつもりだ』とご批判を受けました。果たして、これは失敗だったのでしょうか?」
失敗かどうかではなく、“やってみないとわからない”と、失敗を恐れずチャレンジすることの大切さを伝えたくて、この話をしました。
とはいえ“失敗してはいけない”と思う気持ちも理解できないわけではありません。
数十年前、パラスポーツの現場で活動するボランティアメンバーが毎週交代で、ラジオ番組に出演する機会がありました。収録は毎月1回。4人が集合し、1人1本ずつ収録します。5分の番組の収録に1時間以上かかったAさん。真っ赤な顔でスタジオから出てくると「私、だめだめです」と、ひどく落ち込んでいる様子でした。一方、Bさんは、あっという間に終わって出てきました。まわりのメンバーからは、「速いねー、すごいねー」と褒められていました。
ところが、後日、番組を担当したディレクターさんに話を聞くと。
「Aさんはやればやるほどに伸びる。いろんな話し方にチャレンジしていて、少しアドバイスすると違う話題を入れたり表現を変えたりする。もちろん、途中でたくさん失敗もする。でも、どんどんいい話になっていく。こちらも面白い。“もっともっと”と思い長くなってしまうんです」
ではBさんは?
「最初考えたとおりに、失敗しないように無難に話していました。同じことを繰り返すので、これ以上変わらない。だから収録が速いんです」
どちらが良い、悪いではありませんが、とても興味深いお話でした。
“やってみないとわからないから面白い”と、私はSTANDでの活動をはじめ、これまで行動してきたように思います。「これ、絶対できます。成功しますからどうぞやってみて」と言われた場合、どうでしょうか? 私は意欲が湧きません。だって上手くいくってわかっているなんて、面白くないじゃないですか。
「失敗を目指して頑張ります」
中学生の感想は、私に新鮮な思いを与えてくれました。“やってみないとわからない。だから面白い”。中学生になった気持ちでどんどんやってみようと思った次第です。
<伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>