新生AKATSUKI FIVE(バスケットボール日本代表の愛称)の象徴的な選手と言っていいだろう。B.LEAGUEシーホース三河に所属する22歳のSG西田優大は、“3&D”という武器を携え、日本代表における自らの地位を築き上げつつある。

 

「日の丸を背負う喜び」

 

“3&Dプレーヤー”とはスリーポイントシュートとディフェンスに長けた選手を指す。代表的な選手は3度のNBAチャンピオンを経験しているSGクレイ・トンプソン(現ゴールデンステート・ウォリアーズ)、SG/SFダニー・グリーン(現フィラデルフィア・76ers)、昨季フェニックス・サンズのファイナル進出に貢献したSGミケル・ブリッジズなどである。日本人ではトロント・ラプターズでプレーするSF/PF渡邊雄太が代表例に挙げられる。

 

 これまで西田は日本代表候補に選ばれるものの、2021年の東京オリンピックは最終メンバーに残れなかった。同オリンピックで女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHCが昨年秋に男子日本代表の指揮官に就任して以降、西田はコンスタントに試合で起用されている。ホーバスHCはスピーディーなオフェンス、アグレッシブなディフェンス、そしてスリーポイントを積極的に狙うバスケを志向する。その意味で“3&Dプレーヤー”の西田は指揮官のニーズに合った選手と言えよう。

 

「やっと日の丸を背負って、フル代表でプレーできている。そこにプレッシャーはなく喜びしかないです」と西田。ホーバス体制初陣となった昨年11月のW杯アジア地区1次予選window1・中国代表戦は2試合連続で2桁得点(11点、10点)を挙げた。「トムさんのバスケは自分たちの判断が求められる。自由度が高い分、難しさはありますが、このバスケをモノにできれば、相手は止めづらいと思います」。2連敗とはなったが、選手として代表の新たなスタイルに手応えを感じている。

 

 今年2月26日のW杯アジア地区1次予選window2、チャイニーズ・タイペイ代表戦は第4Qだけで13得点を挙げるなどゲームハイの27得点をマークし、76-71でホーバス体制初白星に貢献した。得意のスリーポイントは50%(2/4)の成功率を誇り、2ブロックショットを記録するなどディフェンス面でもアピール。翌27日のW杯アジア地区1次予選window2、オーストラリア代表戦は4得点に終わったものの、2試合連続スタメン出場を果たした。ホーバス体制となってからの公式戦4試合の平均プレータイムは24.6分。指揮官からも厚い信頼を得ているようだ。

 

 名将も期待するポテンシャル

 

 三河のHC鈴木貴美一は、今季からチームに加入した西田を「スリーポイントが打てて、ディフェンスもできる選手。身体が非常に強い」と評価する。三河は前身のアイシン精機時代を含め、国内リーグ戦6度、天皇杯・全日本バスケットボール選手権大会9度制している名門だ。シューターのSF金丸晃輔(現・島根スサノオマジック)、オールラウンダーのSG比江島慎(現・宇都宮ブレックス)という日本を代表するスコアラーもかつて所属していた。

 

 日本代表の指揮を執ったこともある名将・鈴木HCに、2人と西田を比較してもらった。

「シュート力は金丸選手、ドライブは比江島選手の方が現段階では上かもしれない。ただパスは比江島選手と同じくらいのポテンシャルを持っているし、ディフェンス力では2人よりも勝っていると思います」

 3月13日に23歳となる西田は昨年春に東海大学を卒業したばかり。これだけでも彼の潜在能力の高さが窺えよう。

 

 その将来性には当然、鈴木HCも期待を寄せている。

「西田選手は人の話をきちんと聞くし、自分で考えることもできるので、いろいろなことを吸収しながら成長していくことができると思う。もっとスキルを身に付ければ、さらに良いプレーヤーになる」

 

 既に国内のメディアに西田は<新エース><次世代エース>と報じられている。チャイニーズ・タイペイ戦後の記者会見で、本人は「自分の役割をやり続けたことで結果がついてきた。そこは自信にしていいと思います」と語った。今回の日本代表では最年少。「自分を含め若いメンバーが入っているので、チームの底上げを皆で積極的にやっていけたらいい」と意気込んだ。

 

 この数カ月で、新生JAPANの象徴的存在となった西田。彼のルーツは徳島県海部郡海陽町にあった――。

 

(第2回につづく)

 

西田優大(にしだ・ゆうだい)プロフィール>

1999年3月13日、徳島県海部郡海陽町市出身。小学3年でミニバスチームに所属し、本格的にバスケットボールを始める。海陽中学、福岡大学附属大濠高校を経て、東海大学に進学した。東海大在学中の2019-20シーズンは名古屋ダイヤモンドドルフィンズに特別指定選手として加入。大学卒業前の2020年12月には新潟アルビレックスBBとプロ契約を結んだ。2021-22シーズンよりシーホース三河に移籍。日本代表としては2017年に候補強化合宿メンバーに選ばれて以降、コンスタントに招集されている。2021年東京オリンピック代表候補には選出されたものの、本大会出場はならなかった。スリーポイントシュートとディフェンスを得意とするSG。身長190cm、体重90kg。背番号は19。

 

(文/杉浦泰介、写真/© SeaHorses MIKAWA co.,LTD)

 


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