3月5日、東京・国立代々木競技場第一体育館で新格闘技イベント「戦極−SENGOKU−」の旗揚げ大会が開催された。第7試合のメーンイベントでは吉田秀彦(吉田道場)がジョシュ・バーネット(フリー)に3R3分23秒、ヒールホールドで一本負けを喫した。
 前日会見で乱闘寸前となった藤田和之(藤田事務所)とピーター・グラハム(オーストラリア)は藤田が1R1分23秒、スピニングチョークで一本勝ちをおさめた。  
(写真:吉田(右)を関節技で攻め込むジョシュ)
 国内の試合は1年2ヵ月ぶりとなった五味隆典(久我山ラスカルジム)はドゥエイン・ラドウィック(アメリカ)の打撃を警戒しながらの慎重な立ち上がりとなったが、1R中盤、強烈な左ストレートがラドウィックの顔面を捉える。ダウンしたラドウィックはすぐに立ちあがったが、顔面からの流血が止まらず、ドクターストップ。1R2分28秒で五味がTKO勝利をあげた。
 試合後、リング上でマイクを手にした五味は、「1年ぶりのリング。叱咤激励してくれる大切な人たちが自分の周りにはいてくれる。会場に集まってくれた人たちも大切な人たち。本当にありがとうございました。これからも頑張ります」と涙ぐみながら挨拶。その後のインタビューでも「試合をしないと誰とも関わりがない。試合が決まって、お世話になっていたジムなどへ行くとみんな喜んでくれるし、交流が生まれる。格闘技を通じて、頑張ることで楽しいことがあるというのを感じた1年だった。目標がなく1年を過ごして、誰に会っても後ろめたい感じだった。厳しい、苦しい世界だが、格闘技のおかげで充実した人生を送ることができる」と、久しぶりのリング復帰に感慨を寄せた。
(写真:五味は勝利後、マイクパフォーマンスで感きわまる場面も)

(写真:敗れたグラハムは藤田の手をあげて称えた)
 藤田とグラハムの一戦は、グラハムの空手仕込みの強打をガードしながら接近した藤田が鋭いタックルでテークダウンを奪うことに成功。サイドポジションからマウントポジションに移行すると、すばやくスピニングチョークを極め、グラハムからタップを奪った。
 リング復帰は昨年4月8日以来、06年大みそか以来の勝利を手にした藤田は「いろいろなことがあったが、無事に復帰戦を終えることができた。(復帰戦まで時間があいたが)この日を信じてやってきたので問題はなかった」と振り返った。
 前日会見で乱闘寸前となった両者だが、「リングで拳を交わし、お互いの気持ちをぶつけあったらノーサイド。彼は試合前から闘争心むきだしで最高のファイター」(藤田)、「レスリング対立ち技の勝負だった。僕たちはスポーツマン。(藤田への)うらみなどは全くない」(グラハム)と、試合後にはお互い健闘を称え合った。

 1年3ヵ月ぶりのリングに注目が集まった吉田は、痛い黒星を喫した。
 試合前から投げ技を出すことを宣言していたジョシュは、開始早々、吉田を豪快なバックドロップを見舞う。吉田はその後もジョシュにマウントポジションを許す苦しい展開。打撃でジョシュの動きを止める場面もあったが、2R以降は劣勢が続く。
 3Rも、吉田はジョシュの攻撃に防戦一方となり、最後はヒールホールドを決められる。格闘技人生初のタップで、3R3分23秒、痛恨の一本負けを喫した。
 吉田に完勝したジョシュは試合後のインタビューで「ヨシダさんは、予想通りの選手だった。身体的にもとてもタフな選手。思うように技がかけられない場面もあったが、それを含めて予想通りだった」と語り、「とても楽しく試合ができた。終わってみて、友人のヨシダさんをあのように攻撃するのは辛いなと思ったが、スタンドでは強いフックなどパンチをもらったのでお互いさまかなと(笑)」と笑顔で振り返った。
 一方、敗れた吉田は試合後、病院に直行したためノーコメント。新たな主戦場の旗揚げの試合で結果を出せず、試練の再スタートとなった。
(写真:試合後のインタビューに臨むジョシュ)

 大みそかの秋山成勲戦がノーコンテストの裁定となった三崎和雄(GRABAKA)は、第5代修斗世界ライトヘビー級王者のシアー・バハドゥルザダ(アフガニスタン)に2R2分2秒、フロントチョークで一本勝ち。試合後には「シアー選手の強い気持ちが向かい合ったときに伝わってきた。自分もリングに上がるまでは怖い気持ちがあるが、花道に立ったときには『ここで生き残るんだ』という気持ちになる。今後も本物の戦いを見せたい」と熱く語った。
(写真:シアー・バハドゥルザダを下した三崎)

 このほか、川村亮(パンクラスism)はアントニオ・ブラガ・ネト(ブラジル)の寝技に苦しみながら判定勝ち、大みそかの「やれんのか!」で実力者ムリーロ・ブスタマンチに判定勝利をあげた瀧本誠(吉田道場)は、エヴァンゲリスタ・サイボーグ(ブラジル)にヒールホールドによる一本負けを喫した。

 この日、会場には1万5千人のファンが集結。「戦極」第2回大会(5月18日・有明コロシアム)、第3回大会(6月8日・さいたまスーパーアリーナ)の開催決定と、ホジャー・グレイシー、ケビン・ランデルマンの参戦が発表された。ファイターたちの新たな戦いの場としてスタートした「戦極」の今後の方向性、興行に注目だ。

試合結果は以下のとおり。

<第1試合>
○ニック・トンプソン(アメリカ/フリースタイル・アカデミー)
判定3−0
×ファブリシオ“ピットブル”モンテイロ(ブラジル/グレイシーバッハ・コンバットチーム)

<第2試合>
○川村 亮(パンクラスism)
判定3−0 
×アントニオ・ブラガ・ネト(ブラジル/グレイシー・フュージョン)

<第3試合>
○エヴァンゲリスタ・サイボーグ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー)
一本 1R4分51秒 ※ヒールホールド
×瀧本誠(吉田道場)

<第4試合>
○藤田和之(藤田事務所)
一本 1R1分23秒 ※スピニングチョーク
×ピーター・グラハム(オーストラリア/A・E FACTORY)

<第5試合>
○三崎和雄(GRABAKA)
一本 2R2分2秒 ※フロントチョーク
×シアー・バハドゥルザダ(アフガニスタン/ゴールデン・グローリー/)

<第6試合>
○五味隆典(久我山ラスカルジム/PRIDEライト級王者)
TKO 1R2分28秒
×ドゥエイン・ラドウィック(アメリカ/ハイ・アルティチュード)

<第7試合>
○ジョシュ・バーネット(フリー)
一本 3R3分23秒 ※ヒールホールド
×吉田秀彦(吉田道場)
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