7日、ボクシングのダブル世界戦(9日、さいたまスーパーアリーナ)の調印式が行われた。WBAスーパー・IBF世界ミドル級統一戦はWBAスーパー王者の村田諒太(帝拳)とIBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)が対戦。村田が「素晴らしい試合をお届けします」と口にすれば、ゴロフキンも「見応えのある試合になることを約束します。絶対見逃してはならない」と語った。WBO世界フライ級タイトルマッチで同級2位の山内涼太(角海老宝石)の挑戦を受ける王者の中谷潤人(M.T)は「中谷潤人の名前を覚えてもらう熱い試合をしたい」と意気込んだ。

 

 日本ボクシング史上最大級と言われるビッグマッチが刻一刻と近付いている。オリンピック金メダリストで現WBAスーパー王者の村田と、元3団体統一王者で現IBF王者ゴロフキン。試合を2日後に控えた両者は穏やかな表情で会見に臨んだ。

 

 昨年末に開催予定だった両者の統一戦はオミクロン株の流行により、一度は流れた。9日のリングは、村田は2年4カ月、ゴロフキンは1年4カ月ぶりの試合となる。村田は「こうやってゴロフキン選手と日本で試合ができることはすごくいい巡り合わせ」と語り、開催に尽力した関係者への感謝の思いを述べた。
「いろいろな条件が合わないとできない。ものすごくリスクがある中での試合を組んでくださった方たちに感謝しています。会場に来てくださる皆様にも感謝しています。だからこそ素晴らしい試合をお届けします」

 

 村田vs.ゴロフキン戦が約4カ月の延期となったことは、ポジティブに働いたと両者は口を揃えた。「いいトレーニングが積めた。4月というタイミングになって良かった。いい準備ができた」と村田。ゴロフキンは「対戦相手の研究することができた。それは両者にとって同じ条件である。ますます私たちの試合が見応えのあるものになることを約束します。絶対見逃してはならない、とここで申し上げておきます」と力を込めた。ゴロフキンはこの会見で「いい試合になる」「期待に応える試合」と度々好ファイトを約束する言葉を発した。それだけ調整が順調ということの表れなのかもしれない。

 

 2013年のプロデビュー後から村田は、度々ゴロフキンの名を口にしてきた。プロ通算43戦41勝(36KO)1敗1分けという輝かしい戦績。ミドル級の頂点にいた男と言っても過言ではない。世界最強を目指すなら避けては通れない存在だ。ようやく“挑戦権”を得た村田は、この日を迎えられたことについての感情を問われると、こう答えた。
「今日、明日、明後日でいろいろ感情が動くと思う。一定であることはない。その感情は予測できない。明後日、リングに立つ瞬間にどういう感情になるのか。その場で感じたい。その感情の動きを俯瞰して見れればいいと思っています」

 

 会見後のフォトセッションを終えると、両者は拳を合わせた。トラッシュトークはなく、終始互いに対するリスペクトの念が窺えた。火花を散らすようなものではなかったが、その静けさが余計に2日後、埼玉のリング上で激闘という嵐になる予感を漂わせた。

 

(文・写真/杉浦泰介)