6月19日に東京ドームで行われることが決まっていた那須川天心(TARGET/Cygames)vs.武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)の試合に関する記者会見が7日、都内で開かれた。会見には両選手に加え、大会実行委員を務めるドリームファクトリーワールドワイド(RIZINの運営会社)の榊原信行代表、RISEの伊藤隆代表、K-1の中村拓己プロデューサーが出席した。

 

 完全決着へ――。日本格闘技界注目の一戦は「THE MATCH 2022」と銘打たれた。契約体重(58kg)、開催日、開催地は既に発表済み。この日は興行名に加え、試合時間、ラウンド数が明らかになった。3分3ラウンド+延長1ラウンド。延長ラウンドは、そのラウンドの内容のみをジャッジし、必ず優劣を付けるという完全決着ルールとなった。

 

 RIZIN、RISE、K-1の3団体の長が連なる大会実行委員会としても特別な一戦に鼻息は荒い。

「格闘技界の夢の祭典にできる機会だと思っている」(榊原代表)

「日本の格闘技を再燃するための起爆剤になる」(伊藤代表)

「この熱を大きなものにして、全世界に発信して過去最高のイベントをつくっていきたい」(中村プロデューサー)

 

 榊原代表によれば、会場の東京ドームに約5万席を用意するという。チケット価格は最前列にあたるVVIP1列席を、なんと300万円に設定した。これについてメインを務める両者が「ちょっと高いと思いました」(武尊)、「子どもに優しくないと思いましたね」(那須川)とコメント。「日本のエンタメ史上過去最高額」(榊原代表)と誇る強気な価格設定は、メインイベンターにとって名誉なことだ。武尊が「この試合にそういう価値をつけてくれたことはうれしい。それに見合った最高の試合をして勝つと決めました」と意気込めば、那須川は独特の表現で続いた。

「“これだけの価値があるんだぞ”とみんなに知ってもらえたらうれしい。この試合で歴史の教科書に載りたいと思いました」

 

 教科書に載らずとも、日本格闘技史に刻まれる戦いになることは間違いない。この試合は地上波(フジテレビ)で生中継されることも決まった。武尊は特別な想いを口にする。

「地上波のゴールデンタイムに格闘技を戻すということを目標にしてきました。地上波で放送されると、たまたま観て、格闘技にハマる人もいる。初めて観る人たちにも“格闘技最高だな”と思ってもらえる試合をして、必ず勝ちます」

 

 互いにとっての最高のタイミングは既に逸したかもしれない。だが、これが最後のタイミングと言うこともできる。那須川はボクシングへ転向するため、この一戦を最後にキックボクシングからの“卒業”を明言しているからだ。会見で相手へのメッセージを聞かれると、武尊は「特にない。あとはリングで殴り合って、蹴り合って、どちらが強いかを決めるだけ」と答えた。一方の那須川は「お互いに仕上げて最高のパフォーマンスをしましょう」と応じた。

 

 この日、2人が視線を交わすことはほぼなく、面と向かい合うこともなかった。「THE MATCH」にして、おそらく「LAST MATCH」になるであろう那須川天心vs.武尊戦。リングで向かい合った末、勝ち名乗りを上げるのは、どちらになるのか――。日本最大級のビッグマッチ、ゴングは約3カ月後に打ち鳴らされる。

 

(文・写真/杉浦泰介)