クライマックスシリーズが終了し、いよいよ27日からは日本シリーズが開幕します。パ・リーグからは球団史上初の2年連続リーグ優勝を果たした北海道日本ハム。そして、セ・リーグはレギュラーシーズン2位ながらもクライマックスシリーズで第1ステージ、第2ステージともに全勝と短期決戦での強さを見せた中日。奇しくも、昨年と同じ対戦カードとなりました。
 正直なところ、私はシーズン開幕前に日本ハムが優勝するとは思っていませんでした。報道でもよく言われていたことですが、チャンスに強く随一の人気を誇った新庄剛志、打線の要だった小笠原道大、貴重なセットアッパー岡島秀樹と主力3選手が抜けたことで、投打ともに戦力ダウンは否めなかったからです。

 しかし、逆にそのことでチームの士気が高まった部分もあったのでしょう。チームに残った選手たち一人ひとりが「オレたちがやらなければ」という気持ちを強くもったはずです。開幕当初はそれが気負いとなって空回りし、なかなか結果を出すことができませんでした。一時は最下位に低迷したこともありました。

 転機となったのは交流戦でした。交流戦がスタートするや否や、巨人に2連勝したのを皮切りに怒涛の12連勝を記録。結局18勝5敗と無類の強さを見せ、交流戦では初優勝を遂げました。そのおかげで順位も交流戦前の4位から一気に首位に躍り出たのです。

 昨季の優勝経験によって培った“自信”によって、ますます勢いに乗ったのでしょう。途中、2位に転落したことも何度かありましたが、8月に入って再び首位に立つと、そのまま最後までキープし続けました。その結果、昨年に続いてのリーグ優勝。後半は本当に見事な戦いぶりだったと思います。

 一方、中日は昨季と比べて戦力の面ではさほど変わっていません。本来、個々の力があるチームだけに今季も優勝争いの中心になるだろうと予測していました。シーズン途中で主力の福留孝介がケガで戦線離脱し、チームには不安もあったでしょう。しかし、それが逆にチームに結束力をもたらしのだと思います。リーグ優勝こそ逃したものの、クライマックスシリーズの戦いを見ていても、やはり日本シリーズ進出にふさわしいチームです。

 クライマックスシリーズでは主砲ウッズの活躍が光っていました。阪神との第1ステージでは第1戦の初回に先制の2ランを放ち、チームを勢いづけました。さらに巨人との第2ステージでも第1戦での決勝2ランに加え、日本シリーズ進出を決めた第3戦で逆転3ラン。こうした大事な場面での彼の一発が、中日の5連勝を呼び寄せたのです。

 さて、日本シリーズですが、今回は日本ハムの本拠地・札幌ドームから始まります。札幌ドームでの日本ハムの応援は非常に熱く、まさに選手とファンに一体感があります。また、昨年の日本シリーズではホームで3連勝をし、一気に日本一を決めています。その敵地に中日は乗り込まなければなりません。雰囲気にのみこまれず、クライマックスシリーズの勢いのまま自分たちの野球ができるかが第1、2戦のカギとなるでしょう。

 また、両チームにとってターニングポイントとなるのが第3戦です。第1、2戦を連勝できれば第3戦目で王手がかかりますし、逆に連敗していれば、絶対に負けられない試合となります。1勝1敗でもどちらが先に勢いづくかという点で大事な一戦となるでしょう。

 過去の日本シリーズを見ても、4番打者の活躍なくして日本一の座をつかむことはできません。中日のウッズはクライマックスシリーズの調子を維持できれば問題ないでしょう。不安なのは日本ハムのセギノールです。クライマックスシリーズ第2ステージでは第3戦まで15打数2安打0打点と不振が続いていました。最後の第4戦こそ4打数3安打3打点1HRと火を噴きましたが、ここにきてシーズン中に痛めた右ヒザがよくないという情報もあります。日本シリーズまでにどれだけ回復するかが気になるところです。

 一方、両チームともに投手陣は安定しています。中でもダルビッシュ有のピッチングには目を見張るものがあります。クライマックスシリーズでも全く問題ありませんでした。日本シリーズでもおそらく第1戦で先発することでしょう。しかし、その絶対的エースが負けるようなことがあれば、日本ハムにはこれ以上ない痛手となります。中日としては、調子のいいウッズ、森野将彦を中心に何としてもダルビッシュを攻略したいところですね。

 中日の投手陣は、先発、抑えがしっかりしています。先発投手からストレートに抑えの岩瀬仁紀にリレーできれば、それほど大崩れすることはありません。唯一不安なのは岩瀬につなぐセットアッパーが不安定だということです。カギを握るのは岡本真也でしょう。彼がきちんと抑えることで、岩瀬への負担もグッと減りますから、非常に重要です。

 昨季は日本ハムが4勝1敗で44年ぶりに日本一に輝きました。その日本ハムが球団史上初の2連覇を達成するのか。それとも、中日が昨季の雪辱を果たし、半世紀以上ぶりに日本一の座を奪還するのか――。どちらが優勝するにしろ、熱い戦いが繰り広げられることを期待したいと思います。

佐野 慈紀(さの・しげき) プロフィール
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。
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