2007年のメジャーリーグの最後を締めくくるワールドシリーズが25日、第1戦を迎える。アメリカンリーグを3年ぶりに制し、その時以来の世界一を目指すボストン・レッドソックスと、球団創設15年目にして初めてナショナルリーグの優勝を飾ったコロラド・ロッキーズの顔合わせ。両軍にはレッドソックスに松坂大輔と岡島秀樹、ロッキーズ・松井稼頭央と日本人選手が在籍しており、みどころの多いシリーズとなりそうだ。
ボストン・レッドソックス
★今季成績
96勝66敗、勝率.593(東地区優勝)
チーム防御率 3.87 (1位)
チーム打率 .279 (5位)

 キーマンはやっぱり松坂?
 前半に独走態勢を築き、宿敵ニューヨーク・ヤンキースの猛追を振り払って12年ぶりの地区優勝を勝ち取った。プレーオフではリーグチャンピオンシップでクリーブランド・インディアンスに1勝3敗と土俵際まで追い込まれながら、3連勝で逆転Vを果たした。
 
 中軸を打つデービッド・オルティスやマニー・ラミレスを中心に打線は活発だ。特に2番を打つケビン・ヨーキリスがリーグチャンピオンシップで28打数14安打、打率5割をマークした。選球眼もよく出塁率が高いため、ロッキーズにとって非常に厄介なバッターだ。ヨーキリス封じが成功するかどうかは、シリーズのひとつのポイントとなるだろう。

 打線以上に今季、レッドソックスの好調を支えているのは投手陣だ。防御率リーグ1位、失点は両リーグ合わせて最小(657点)。シーズン20勝をあげたエースのジョシュ・ベケットはプレーオフでも3勝負けなし。今季のインターリーグで、ロッキーズに6失点KOされた点は不安材料だが、初戦を任せるのはこの右腕しかいない。
 セットアッパーの岡島、抑えのジョナサン・パペルボンもポストシーズンは無失点ピッチングを続けている。後ろがしっかりしているだけに、先発がゲームをつくれば勝利は近づく。

 それだけにベケットに続く先発陣が重要だ。現時点では、01年のシリーズMVPで百戦錬磨のカート・シリングが第2戦、松坂が第3戦に先発予定。特に敵地の初戦に登場する松坂のピッチングはシリーズの流れを左右するといっても過言ではない。現状の松坂はシーズン中同様、万全の内容ではない。リーグチャンピオンシップ第7戦で勝利投手になったとはいえ、ボールが甘くなり、痛打を浴びるケースが目立つ。シリーズがもつれれば、ローテーション順では第7戦に再び松坂の出番がやってくる。今年1年、メジャーの環境になかなか適応できなかった背番号18が、初体験となる標高1600メートルのクアーズ・フィールドのマウンドを味方につけられるか。

 04年に86年ぶりの世界一を手にした際は、メジャー史上初の3連敗からの4連勝でリーグチャンピオンシップを制し、ワールドシリーズは土つかずの4連勝で頂点に立った。崖っぷちからの逆転優勝という点で状況は似ている。ホームのフェンウェイ・パークで迎える1、2戦でロッキーズの勢いを止め、ルーキー右腕にバトンをつなぎたいところだ。

コロラド・ロッキーズ
★今季成績
90勝73敗、勝率.552(ワイルドカード)
チーム防御率 4.32 (8位)
チーム打率 .280 (1位)

好調の投手陣 攻撃のポイントは松井か
 22勝1敗。レギュラーシーズンも含めた最近のロッキーズの成績である。まさに驚異的な数字だ。この勢いでワイルドカード争いを勝ち抜き、プレーオフも負け知らずでリーグチャンピオンに輝いた。ただ、チャンピオンシップを4連勝したチームが、そのままワールドシリーズを制したのは95年のアトランタ・ブレーブスのみ。リーグチャンピオンシップから中7日と間があいた点がどう作用するか。

 神がかり的な快進撃の立役者はなんといっても投手陣である。プレーオフのチーム防御率は2.08と、味方が3点取れば負けない計算だ。エース左腕のジェフ・フランシスはディビジョン・シリーズとリーグチャンピオンシップでいずれも初戦に先発。勝ち投手となっている。今季のインターリーグでもレッドソックスを5回無失点に抑えており、196センチの長身から投げ下ろす速球とカーブは打ちづらい。

 また第2戦の先発が予定されているドミニカ出身のユバルト・ヒメネスも好調だ。シーズンはわずか4勝で防御率も4点だった右腕がプレーオフでは防御率1点台。150キロ台後半のストレートで相手を力でねじ伏せる。
 さらには故障で夏場から戦線を離れていたアーロン・クックが戻ってくる。第4戦の先発が予定されている右腕は、勢いをさらに加速させる存在となるに違いない。

 一方でやや不安なのは打線だ。リードオフマンのウィリー・タベラスは右足を痛めていた影響もあり、プレーオフの打率は1割台と低迷している。5番に座るギャレット・アトキンズも同じく打率1割台で打点はわずかに1。レッドソックスと比べると実戦から遠ざかっている点も、バッターには不利な状況といえる。レギュラーシーズン、リーグナンバーワンのチーム打率を誇った打線に早く火をつけたいところだ。

 その点、2番に座る松井はプレーオフ7試合の打率.310。いい状態で大舞台に臨めている。先頭のタベラスが本調子に戻らなければ、次の松井にチャンスメイクを期待する部分は大きくなる。得意の足で相手をかき回すこともできるだけに、背番号7の働きはロッキーズ世界一への重要なウエイトを占めるかもしれない。

 プレーオフでの連勝記録は04年にレッドソックスがマークした8連勝(リーグチャンピオンシップ第5戦〜ワールドシリーズ第4戦)。流れを変えないためにも、まずは敵地での初戦をとって、その記録に並びたい。いい形で3戦以降が開催される本拠地に戻ってくれば、悲願の最高峰到達へ視界はぐっと開けてくる。


 日本人投手がワールドシリーズに登板するのは初めてのため、日本人対決が実現すればもちろん史上初の出来事。松坂VS松井の元ライオンズ対決はもちろん、終盤の勝負どころでの岡島VS松井も見ごたえがあるだろう。どちらが勝っても05年の井口資仁(当時ホワイトソックス)、06年の田口壮(カージナルス)に続き、3年連続で日本人選手がチャンピオンリングを指にはめることになる。ここ10年、第5戦までに勝敗が決したケースが6回と、あっけなく終わる傾向の強いワールドシリーズだが、日本人対決を堪能する意味でも今年は第7戦までもつれる熱戦がみたい。

<ワールドシリーズ日程>

第1戦 10月25日(木) フェンウェイ・パーク 9時
第2戦 10月26日(金) フェンウェイ・パーク 9時
第3戦 10月28日(日) クアーズ・フィールド 9時
第4戦 10月29日(月) クアーズ・フィールド 9時
第5戦 10月30日(火) クアーズ・フィールド 未定
第6戦 11月1日(木) フェンウェイ・パーク 未定
第7戦 11月2日(金) フェンウェイ・パーク 未定

※一方が4勝した時点で終了。日時はすべて日本時間
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