深澤旬子(パソナハートフル代表取締役社長)<前編>「個性を活かす働き方」

facebook icon twitter icon

 パソナグループの特例子会社であるパソナハートフルは、“才能に障害はない!”をコンセプトに、働く意欲がありながら就労困難な障がいのある人が働ける環境づくりを進めている。具体的には障がい者アートによる就労支援を行う「アート村」や、野菜や果物を栽培する「ゆめファーム」など、各々の才能・能力に応じた職域の開拓に取り組んでいる。代表取締役社長の深澤旬子氏に同社の取り組みについて訊いた。

 

伊藤数子: 今回はインタビュー前に御社内にある「アート村工房」「パン工房」をご案内いただきました。深澤社長のお話ぶりから、その熱意が伝わってきました。

深澤旬子: ついつい熱くなり過ぎてすみません(笑)。学校を卒業したばかりの方たちは、いわば原石です。社会に出て、仕事を通じて磨かれることによってダイヤモンド、エメラルド、メノウなどになっていきます。その過程に関われることは、とても楽しい。輝き方、魅力は人それぞれ。人の才能の発掘には、終わりがないんです。

 

二宮清純: まさに“才能に障害はない”と。パソナグループは「人を活かす」ことを企業理念とされていますが、それは特例子会社である御社も同じということですね。

深澤: おっしゃる通りです。そもそもパソナグループは「社会の問題点を解決する」という企業理念の下、誰もが自由に好きな仕事を選択し、一人ひとりの人生設計に合わせた働き方ができる社会を築くことを使命としています。その特例子会社であるパソナハートフルは、障がいのある人の雇用促進にフォーカスしています。どんな方たちに対しても特別なフィルターをかけて雇用をすることはありません。誰もが必ず優秀な能力があり、キラリと光る才能がある。そう思って私たちは事業を進めています。

 

二宮: 2007年からアーティスト社員制度を導入されていますが、アーティスト社員になるためには審査があるんですか?

深澤: その点はあまり厳密なルールを設けたくないと思っています。パン工房で働く社員が入社から7年後に「絵を描きたい」と申し出たことで、パン工房の仕事からアーティスト社員に異動するケースもありました。才能が花開くタイミングは人それぞれなので、最初から決めつけるようなことはしたくないんです。

 

 特別視はしない

 

二宮: なるほど。最初から「アーティスト社員」として雇用するわけではないのですね。

深澤: はい。はじめからアーティストとして雇用するわけではなく、社員の能力を伸ばす過程で、そのような業務についてもらうという考え方です。絵を描く才能があると気付いたので、アート制作活動がメインの業務となったというだけです。

 

二宮: 社員の能力に合った業務を、ということですね。

深澤: 制作がメインではありますが、私たちは絵を描くだけでいいとは思っていません。短い時間でも、デスクワークなどの他の業務をしてもらうようにしています。一般業務を先輩や上司と一緒に行うことによって、緊張感を味わい、組織としての規律を勉強する。工房でのアーティストとしての活動と、デスクワークなどの業務を並行してやっていくことが、人間性を育てていくことに繋がると考えています。

 

二宮: その教育メソッドはパソナグループが構築してきたものでしょうか?

深澤: そうですね。ゼロから試行錯誤でつくりました。「個性を大切にしよう」という考えの下で、アート制作の仕方もいろいろと悪戦苦闘しながら進めていきました。

 

伊藤: 障がいのある社員に対し、昇格や昇給のない企業があると聞きます。

深澤: 弊社では昇格試験がありますし、年2回の目標設定をクリアできたかどうか上司と面談する機会もあります。先ほどお話した絵を描くことを仕事にしている社員の9割は障がいのない社員と変わらない給与水準です。最初からイコールパートナーとして、きちんと評価します。障がいのある人だから加点しよう、または減点しようという発想ではありません。これは私がパソナグループで人事担当の頃からやっていたことです。特別視はしない。当社は一人ひとりの才能を活かした人材育成を目指しています。そのためのフェアな評価はブレずに続けていきたいと思っています。

 

(後編につづく)

>>「挑戦者たち」のサイトはこちら

 

深澤旬子(ふかさわ・じゅんこ)プロフィール>
株式会社パソナハートフル代表取締役社長、株式会社パソナグループ取締役副社長執行役員Pasona Way 本部長兼社会貢献室担当。三井東圧化学株式会社(現・三井化学株式会
社)、株式会社電通を経て、1981年、株式会社テンポラリーセンター(現・株式会社パソナ)入社。1989年、障がい者の雇用促進を企業内ベンチャーとして提案。特例子会社パソナハートフルを設立し、代表取締役社長に就任。2007年株式会社パソナグループ設立と同時に人事部・広報室・企画制作室・社会貢献室担当取締役専務執行役員に就任。2018年より現職。他、株式会社ベネフィット・ワン取締役会長を務めている。

 

>>パソナハートフルHP

>>パソナグループHP

facebook icon twitter icon

NPO法人STAND

公式サイトcopy icon

NPO法人STAND代表の伊藤数子さんと二宮清純が探る新たなスポーツの地平線にご期待ください。

Back to TOP TOP