(写真:優勝セレモニーでカップを掲げ、連覇を喜ぶトヨタ自動車のメンバー)

 17日、女子バスケットボールの第23回Wリーグ・プレーオフファイナル第2戦が東京・代々木競技場第一体育館で行われ、第1戦を制したトヨタ自動車アンテロープスが富士通レッドウェーブを87-71で破り、連覇を達成した。プレーオフMVPはトヨタ自動車のPG山本麻衣が輝いた。同ベストファイブはトヨタ自動車から山本、PF馬瓜ステファニー、Cシラ・ソハナ・ファトー・ジャの3人、富士通からPG町田瑠唯、SG篠崎澪の2人が選ばれた。この日の観客数はリーグ史上最多記録を更新する7151人だった。

 

◇ファイナル第2戦(トヨタ自動車2勝)

 馬瓜ステファニー、14得点10リバウンド5アシスト(代々木第一体育館)

富士通レッドウェーブ 71-87 トヨタ自動車アンテロープス

【第1Q】14-19【第2Q】15-24【第3Q】23-18【第4Q】19-26

 

(写真:アップ時から声がよく出ており、チームの雰囲気の良さが窺えた)

「泥臭いトヨタ」をスローガンに掲げたトヨタ自動車が、力強いバスケットで王座を守った。昨季MVPを獲得したPG安間詩織はドイツへ移籍。スターター5人中3人は昨季ベンチメンバーだった山本、馬瓜ステファニー、シラだ。それぞれが主力に成長し、チームの底上げを感じさせる戦いぶりだった。

 

 前日の第1戦は最大13点差のビハインドをひっくり返したトヨタ自動車。第2戦も同じPG山本、SG三好南穂、SF馬瓜ステファニー、PF馬瓜エブリン、Cシラのスターターで臨んだ。第1戦を落とした富士通はPFを内尾聡菜から内野智香英に代え、PG町田、SG篠崎、SF宮澤夕貴、Cオコエ桃仁花の5人が最初にコートに立った。

 

(写真:今季から正PGとしてチームを牽引した22歳の山本)

 最初の2分間はスコアが動かない重い立ち上がり、先にネットを揺らしたのは富士通だ。エースの篠崎がジャンプシュートを決めた。第1Q中盤までは競った展開で進んだ。富士通は約3分間でチームファウル3つと、徐々にトヨタ自動車の圧力に押されていった。

 

 抜け出したのはトヨタ自動車。14-14と同点の場面でPG川井麻衣のスリーポイントが外れたが、シラがリバウンドし、着実に決めた。残り16秒で山本が相手を引き付けて馬瓜ステファニーにパス。フリーの馬瓜ステファニーがスリーポイントを沈めた。第1Qはトヨタ自動車が5点リードで終えた。

 

 第2Qはトヨタ自動車がスコアを走らせる。インサイドでシラ、馬瓜エブリンらが力を発揮。外からは三好、山本がスリーポイントを射止める。このQだけでシラは8得点、山本は6得点を挙げ、43-29とリードを広げた。一方の富士通は、前半のフィールドゴール成功率36%と攻守両面で苦しんだ。

 

 14点リードでハーフタイムを迎えたトヨタ自動車だったが、第3Qは富士通の反撃に遭う。町田のパスから内野に決められ、篠崎にはスリーポイントを入れられた。特にパスを配給する司令塔の町田には手を焼いた。このQは18-23と点差を詰められる結果となった。

 

(写真:三菱電機から移籍してきた川井も「泥臭さ」を体現していた)

 それでも第4Qの立ち上がりから身体を張ったプレーでトヨタ自動車は「泥臭さ」を体現した。エブリンがドライブでゴール下に切り込み、決める。さらに宮澤のファウルを誘い、バスケットカウント。フリースローも成功した3点プレーは、宮澤4つ目のファウルとなった。

 

 直後、相手ボールのスローインに馬瓜エブリンと山本が激しいプレスをかけ、ボールを奪った。これで得た攻撃権を山本がきっちり沈め、14点差に広げた。「HCの指示。勝負所を見極め、言われたことが遂行できた」と山本。その後もトヨタ自動車は得点を重ね、87-71と快勝した。タイムアップの瞬間、コートに歓喜の輪ができあがった。

 

(写真:富士通の司令塔・町田<10>のシュートをブロックする三好)

 4戦連続で2ケタ得点をマークし、プレーオフMVPに輝いた山本が「最後はチームとなって勝ち切れた。少ない時間でも出た選手が仕事をすることができた」と語ったように、層の厚さを見せつけた。今季限りで引退を表明していた三好は花道を飾った。

「ベンチで見ていても頼もしいと思えるファイナルだった。これで心置きなく任せられます」

 

 レギュラーシーズンは20勝2敗で2位、プレーオフは4試合(セミファイナル、ファイナル2試合ずつ)負けなしと順調なシーズンだったように映るが、皇后杯はベスト8どまりだった。準々決勝で富士通に敗れた後、ミーティングを行い、「泥臭いトヨタ」のスローガンをつくったという。「この言葉があったからいいチームになれた」と馬瓜エブリン。キャプテンのC河村美幸は「約4カ月、妥協することなく取り組んできた。全員で掴み取った優勝」と胸を張った。

 

(文/杉浦泰介、写真/©Wリーグ)