女子やり投げ・北口榛花、2年連続MVP!「もっと遠くに飛ばしたい」 〜JAAF ATHLETICS AWARD 2024〜

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 19日、日本陸上競技連盟(JAAF)は「JAAF ATHLETICS AWARD 2024」を都内で行い、年間最優秀選手賞にあたる「アスリート・オブ・ザ・イヤー」にパリオリンピック女子やり投げで日本人初の金メダルを獲得した北口榛花(JAL)が2年連続で選ばれた。2007年にスタートした同アワードで、2年連続のアスリート・オブ・ザ・イヤーは2011~12年の室伏広治以来、2人目。優秀選手賞は男子35km競歩で世界新記録をマークした川野将虎(旭化成)、パリオリンピック男子110mハードル5位入賞の村竹ラシッド(JAL)、同男子走り高跳び5位入賞の赤松諒一(SEIBU PRINCE)が選出された。

 

(写真:笑顔がトレードマークの北口。この明るいキャラクターも彼女の魅力のひとつだ ©日本陸上競技連盟/フォート・キシモト)

 女子とはしては初の2年連続のMVPだが、今年の活躍ぶりを見れば、異論の余地はないだろう。夏はパリオリンピックで女子フィールド種目初の金メダル獲得、ダイヤモンドリーグ・ファイナル2連覇。女王の名を欲しいままにする北口は黒のドレスを纏い、式典に参加した。受賞スピーチでは「こんなに晴れやかな場所で言うことではないと思うんですが」と前置きし、こう今シーズンを振り返った。


「競技成績は今年もすごくうれしい結果ばかりだったんですけれど、今シーズンを通して、すごく苦しくて“できればこのような1年は、もう2度と来なくていい”と思うぐらいの1年だった。周りの方々のおかげで、何とかオリンピックにも出られ、最後までダイヤモンドリーグも回ることができました」
 フィールド、メディアの前で見せる屈託のない笑顔の裏には、人知れぬ苦悩があった。だからこそ“このような1年は、もう2度と来なくていい”という言葉に表れたのだろう。

 

 受賞に際しては、北口が憧れる女子バスケットボール日本代表の髙田真希よりビデオメッセージが送られた。
「輝かしい成績の裏には、たくさんの困難や苦難があったと思いますが、日々のたゆまぬ努力で結果を出し続けてきたことを尊敬しています。これからさらにたくさんの人の期待を背負うことになると思いますが、榛花ちゃんらしさを忘れず、たくさんの人々を魅了してください。これからも応援しています!」
 これを受けて北口は「すごくうれしいです」と喜んだ。


 世界陸上競技選手権大会(世界陸上)、オリンピック、ダイヤモンドリーグの年間チャンピオン、世界一と呼べるタイトルは獲り尽くした。彼女を支えるのは「やりをもっと遠くに飛ばしたい」というアスリートとしての欲求だ。2024年は自己ベスト(日本記録)の更新はなかった。
「陸上は記録があるから、タイトル関係なく上を目指せることがひとつの魅力。今年は自己記録が出ないシーズンを過ごした。金メダルはもちろんうれしいのですが、何よりうれしく感じるのは自己記録を更新した時だなと、この1年で感じた。上を目指すものはたくさんあると思っています」

 

 そのひとつの目標が自身が持つ日本記録67m38の更新で、その先に見据えるのが、これまで女子選手で5人しか達成していない70mの大台突破である。
「世界記録を出した選手がいる種目は盛り上がる。たくさんの人が観に来ようと思う。ダイヤモンドリーグでも女子やり投げはプレセッションに入ることが多い。その意味で記録に挑戦していくことが、より多くの方々に知ってもらうためにも必要なことだと思っています」

 

(写真:日本初の記録を次々と打ち立てている北口<右>。来年はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか ©日本陸上競技連盟/フォート・キシモト)

 北口は探求心旺盛で様々な競技からヒントを取り入れる。このオフは柔道やハードルを学んだという。柔道の“師”は2008年北京&16年リオデジャネイロオリンピック女子52kg級銅メダリストの中村美里さん。柔道は学生時代の体育でも受けていなかった「マジの初心者」と言う北口は、中村さんから一度受け身を教わった。「実際、やりを投げる時は斜めの動きを使う。そうなった時に体操の前転や後転よりも前回り受け身は斜めに回転するので、今後に生きるかもしれないというので始めました」

 

 ハードルの“先生”は所属が同じJALの110mハードルの村竹ラシッドだ。
「元々、ハードルを跳ぶ練習はしていましたが、ハードラーがどう跳んでいるかは知らなかった。どうやって跳び越えるのが理想なのか、どういう感覚でやっているのかを知らず、ただ自己流でやっていた。身近にすごくいい選手がいたので、お願いしました。そこにも生かせる部分があった」

 昨年は水泳のバタフライを学んだことを明かしたが、クロストレーニングを積極的に取り組むのが北口流だ。
「私は小さい頃からいろいろな運動をやってきた。ひとつのトレーニングだけで身体をつくり上げるというよりは、いろいろなスポーツに取り組むことで、様々な刺激を受け、やり投げに繋げていく。それがそもそも好きで、得意な部分でもある。刺激がたくさん合わさることで、いい影響が生まれるんじゃないかなと思っています」


 来年は東京で世界陸上が開催される。日本スポーツ界を代表するヒロインには、世界陸上連覇への期待が集まる。
「多くの方々に競技場に足を運んでいただいて、少しでも多く、良くても悪くても、その時の選手の感情を共感していただける。そんなスタジアムで競技ができることが、すごく幸せなことだと、この1年感じました。来年の東京がそのような場になることを、すごく楽しみにしています」

 

(写真:表彰者のフォトセッション。新人賞は高校生の落合<前列左から2番目)、久保<前列左から3番目>が輝いた ©日本陸上競技連盟/フォート・キシモト)

 新人賞は通常、記者クラブ選出と日本陸上競技連盟選出の2団体から男女各2人が選ばれるが、今回は男女1人ずつ。今年日本選手権を制し、その後日本記録をマークした高校生が選ばれた。男子800mの落合晃は滋賀学園高3年生で、来春、駅伝の強豪・駒澤大学の進学が決まっている。この夏は坊主だったが、髪もすっかり伸びていた。
「今年はパリオリンピックを目標にして1年間、取り組んできました。その目標は叶いませんでしたが、日本記録と1分44秒台を出せたことは成長を感じました」


 雨の中、行われた6月の日本選手権。当時日本記録保持者で7度の優勝を誇る川元奨(スズキ)に1秒以上の差を付けて勝利した。フィニッシュ後、地面を叩いて悔しがっていた姿が印象的だった。初のシニア日本一にもかかわらず、喜ばなかったのはフィニッシュタイムが1分46秒56で、パリオリンピックの参加標準記録(1分44秒70)に届かなかったからだ。

 

 翌月の全国高校総合体育大会(インターハイ)では1分44秒80をマークし、川元らが持つ日本記録を塗り替えた。「この1年の取り組みが間違い出なかったと証明できた」。8月のU20世界選手権では3位に入り、銅メダルを獲得。充実のシーズンだったと言えよう。来年の世界陸上の参加標準記録は1分44秒50。「冬期練習はしっかり積めている。44秒50を切って、世界陸上で勝負できるようにしたい」。18歳の新星は目標を「世界陸上で入賞、メダルを目指して今後頑張っていきたいと思っています」と力強く語った。

 

 女子の久保凛(東大阪大敬愛高2年)も800mをメインに、日本選手権優勝&日本記録更新を達成したホープだ。「シニアの舞台、世界の舞台に出場させていただき、いい経験をさせてもらった。日本新記録も更新することができた。たくさんの支えがあったから成長できたシーズンだったと思います」。競技面での結果を残すことで、注目が集まる機会は増えた。
「最初はたくさん注目していただけることに、どう対応したらいいかという部分もありました。徐々に注目していただけることは、感謝している。その思って、取材にも対応させていただいている」


 久保も落合同様、世界陸上を視野に入れる。「日の丸を背負って戦うことができるよう日々、精進してまいります」。世界陸上の参加標準記録は1分59秒00。久保が7月のインターハイで記録した日本記録(1分59秒93)よりも1秒近く速い。「ちょっとまだ距離はあると思いますが、必ず標準記録を切る。標準記録だけを見過ぎず、徐々にやっていきたい」


 来年は国外のレースに出場し、経験を積もうと考えている。直近では22日に京都で開催される全国高等学校駅伝競走大会に出場する予定だ。久保は「(東大阪敬愛高が目標とする5位)入賞に貢献する走り、個人ではチームに流れをつくる区間賞を狙っています」と意気込んだ。

 

(文/杉浦泰介)

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