男子100m・セビル(ジャマイカ)、9秒77で今季最速スプリンターと前回王者破る ~世界陸上東京大会~
14日、東京2025世界陸上2日目のイブニングセッションは東京・国立競技場で男女100m決勝などが行われた。男子100mは世界陸上2大会連続4位入賞のオリビク・セビル(ジャマイカ)が9秒77(追い風0.3m)で初制覇。2位は0秒05差で今季最速タイム(9秒75)を持つキシェーン・トンプソン(ジャマイカ)、3位には0秒12差で、前回王者のノア・ライルズ(アメリカ)が入った。女子100mはメリッサ・ジェファーソン・ウッデン(アメリカ)が10秒61(追い風0.3m)の大会新記録で優勝。今年限りで引退を表明しているシェリーアン・フレイザープライス(ジャマイカ)は11秒03で7位入賞・男子1万mはジミー・グレシエ(フランス)が28分55秒77で金メダル。日本勢は鈴木芽吹(トヨタ自動車)が20位(29分33秒60)、葛西潤(旭化成)が22位(29分41秒84)だった。

(写真:男子100mのメダリスト<左からライルズ、トンプソン、セビル> ©Dan VERNON for World Athletics)
男女400m予選が行われ、男子の中島佑気ジョセフ(富士通)が44秒44の日本新記録をマーク。2位に入り、着順(各組3位以内)での準決勝進出を決めた。男子の佐藤風雅(ミズノ)と女子の松本奈菜子(東邦銀行)は予選落ち。男子走り高跳び予選は赤松諒一(SEIBU PRINCE)、瀬古優斗(FAAS)が2m25を跳び、決勝進出。2m25で3回失敗した真野友博(九電工)は予選敗退となった。
陸上競技の花形、男子100m。この種目がどれだけ特別であることは、スタンドに設置されたメディア席の様子を見ても窺い知れる。各国の記者が揃って立ち上がる。わずか10秒足らずの勝負の瞬間を見逃すまいという気概よりも“誰が一番速いのか”との好奇心の方が強いのではないか。多くの者がスマートフォンのカメラを起動し、スタートライン方向に構える。
会場の国立競技に詰め掛けた5万人超の観客が固唾を飲んで見守る。直前の女子100mで大会新記録が出ようが、熱狂のスタジアムも静寂に包まれた。
前回大会3冠(100m、200m、4×100mリレー)でパリオリンピック王者のライルズ、パリでライルズに惜敗したものの今季世界歴代6位となる9秒75をマークしたトンプソン。レツィレ・テボゴ(ボツワナ)は前回大会銀メダリスト、セビルは22年オレゴン、23年ブダペスト大会でいずれも4位の実力者だ。
号砲は2度打ち鳴らされた。フライング――。会場がざわめく。ビデオチェックの後、8レーンのテボゴに審判員からレッドカードが提示された。最速スプリンターを決める一戦は、図らずして7人に絞られた。

(写真:身長170cmの小柄なスプリンター・セビル<左端>が自身初の金 ©Mattia Ozbot for World Athletics)
仕切り直しのスタート。号砲が打ち鳴らされると、7人が一斉に飛び出した。最速のリアクションタイム(0秒157)を見せたセビルが弾丸のようにゴールまで駆け抜けた。フィニッシュタイムは自己ベストを塗り替え、世界歴代10位タイとなる9秒77。興奮のあまりユニフォームを破ってイエローカードをもらうおまけ付きとなった。
「国内大会が自信に繋がった。自分自身にプレッシャーをかけ過ぎず、自分ことに集中していた」
母国の英雄ウサイン・ボルト氏が見守る前で、ジャマイカに15年北京大会以降、明け渡していた世界大会の“最速”の称号をもたらした。トンプソンとのワンツー。「私たちがここにいることで、歴史を塗り替えた」とセビル。トンプソンも「ジャマイカの力」と胸を張った。
(文/杉浦泰介)