11月に開幕するカタールワールドカップを前に最後の国際Aマッチデーとなるドイツ遠征(23日アメリカ代表戦、27日エクアドル代表戦)に臨む日本代表メンバー30人が発表された。

 

 常連メンバーからは大ケガを負った板倉滉(左ひざ内側側副じん帯の部分断裂)、浅野拓磨(右ひざ内側側副じん帯断裂)の2人が外れ、いまだ戦列に復帰できていない大迫勇也の招集も当然ながら見送られた。メンバーのなかで目を引いたのが、国内組で編成した夏のE―1選手権で活躍した相馬勇紀、町野修斗の2人、そして板倉に代わって選ばれた瀬古歩夢である。瀬古はスイス1部グラスホッパーで出場機会を得ており、安定したパフォーマンスからも評価を上げていた。勢いのある選手の加入はチームの活性化につながるだろう。

 

 本大会のメンバー登録数はこれまでより3人増えて26人になる。基本的には今回選ばれた30人とケガの3人を合わせた33人のなかから26人に絞られるとみておかしくない。

 

 板倉、浅野、大迫の3選手の状況について森保一監督はこう述べている。

「どう回復していくはもちろん分からない部分はあるが、見通しでいくと本大会までには治って選考対象になると聞いている。まずは焦らずにしっかりと治してほしい」

 

 あくまで「見通し」であるため、リスクマネジメントを考えると彼らがいない場合を想定しなければならない。センターバックで言えば瀬古、そしてE―1優勝をキャプテンとして引っ張った谷口彰悟、シュツットガルトで先のバイエルン・ミュンヘン戦でも左ストッパーで奮闘した伊藤洋輝あたりが候補になる。大迫、浅野の常連2枚を欠くフォワードはセルティックで好調を維持する古橋亨梧は〝鉄板〟として、町野、ベルギーに渡った上田綺世、そして古橋とセルティックで同僚の前田大然が争う形となるだろうか。

 

 個人的に注目しているのは、古橋、前田、そして旗手怜央のセルティックトリオだ。大迫の回復が遅れ、浅野が大ケガで離脱している以上、従来の4-3-3システムを踏襲するなら1トップを担うのは間違いなく古橋になる。

 

 肩のケガも大きな問題になっておらず、14日の欧州チャンピオンズリーグ、アウェーでのシャフタル・ドネツク(ウクライナ)戦で先発を果たしている。初戦のレアル・マドリード(スペイン)戦同様に評価を上げたのが旗手。シャフタル戦ではボランチの位置から前に飛び出して相手のオウンゴールを引き出した。広範囲に動いて、運動力も多く攻守にわたって効いていた。戦術理解度も高く、今シーズンにおいて急激に評価を高めている一人だと言っていい。

 

 前田大然にも触れておきたい。シャフタル戦では後半開始から右のサイドハーフに入ってプレー。相手を封じるプレスバックと、チャンスになると一気に出ていくスプリントと疲れ知らずのスピードでチームに対する貢献は計り知れない。ハードワークをマストに置く森保ジャパンとの相性が悪いわけがない。もちろん1トップもこなせるだけに、今回の遠征は彼にとっても大きなアピールの場となる。

 

 カタールワールドカップはこれまでの大会と違って、準備期間が圧倒的に短い。欧州の主要リーグが中断して約1週間後には開幕を迎えるのだから、連係を合わせる時間も限られることになる。筆者は折に触れてこのことを記しているのだが、普段から一緒にトレーニングを積んでいる選手たちをユニットとして考えることはアリだ。古橋をエースとして起用するなら、代表でも旗手、前田をセットでテストしてもいい。その機会となるのが今回のドイツ遠征であり、森保一監督も当然、ミッションの一つに入れているのではないだろうか。

 

 本大会の26人にはどのような要素が求められるのか。

 グループリーグ第2戦の相手コスタリカ代表こそ守備に重心を置いているチームと言えるが、世界列強のスペイン代表、ドイツ代表との戦いを考えると守備機会が増えることも想定してメンバーを編成していくと思われる。タフに粘り強く戦えないと「いい守備からいい攻撃」は生まれない。その意味においても北中米カリブ海予選で総得点数2位のアメリカ代表と、南米予選でアルゼンチン代表と並んで総得点数2位のエクアドル代表とここで戦える意義は大きいと考える。

 

 結果、内容ともに良ければドイツ遠征のメンバー、そしてケガで離脱している選手のなかから本大会のメンバーが選ばれるだろうが、逆に悪ければ指揮官もメンバーの入れ替えを検討することになるだろう。かつて日韓ワールドカップ前のノルウェー代表戦で大敗を喫し、フィリップ・トルシエ監督がチームをまとめる役割として中山雅史、秋田豊の両ベテランを本大会メンバーに加えたように、問題が見えたら手を打つのは当たり前。収穫と課題、どちらが大きいかによってメンバー選考に影響する可能性がある。森保監督も会見の席で「まだまだ可能性のある選手もリサーチしている」と述べている。

 

 ドイツ遠征のメンバーに選ばれたことでカタールに近づいたのは間違いない。しかしながら「確定」ではないことも付け加えておきたい。


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