22日、格闘技イベント『超RIZIN』(25日、さいたまスーパーアリーナ)のエキシビションマッチに参戦するボクシング世界5階級制覇のフロイド・メイウェザー(アメリカ)が3日後の一戦に向け、都内のフィットネス&ボクシングジムKOD LABでの練習を報道陣に公開した。

 

 開始予定時刻14時になっても姿を現すどころか、到着の目処すら立たない。この日も“メイウェザー劇場”の開演だ。

 

 14時40分頃、先に到着したのはメイウェザーのボディーガードを務め、3日後のメイウェザーvs.朝倉未来(トライフォース赤坂)戦の前座で、皇治(TEAM ONE)と対戦するジジ(イラン)だ。ジジはサンドバックを数分叩き、“場つなぎ”として役割を果たしたとばかりに満足そうな表情を浮かべていた。

 

 主役の登場は予定より1時間以上遅れの15時8分だ。30人以上が詰め掛けた報道陣からの無数のフラッシュを浴びながら何食わぬ顔で、いつものように多くの取り巻きを引き連れてやってきた。上着を脱ぎ、バンテージを巻き、グローブを装着。一通りの準備を終えると早速リングに上がった。リングではミット打ちからスタート。時折おどける様子を見せながらも45歳とは思えぬキレのある動きを披露した。そして鋭い打撃音を響かせた。

 

 リングを下りると、今度はサンドバックを打ち、ミット打ちと交互に行う。小休憩はあったものの、基本的に休みなく打ち続けた。20分以上にも及ぶ公開練習を終えると、今度は通訳込みで約5分の独演会が始まった。

「これだけSNS、配信などで取り上げてもらえてうれしく思う。日本が好きで、来日してからも素晴らしい歓迎を受けた」
「実際に観ていただいたことで、スピードやテクニック、私が持っているすべてのものに関して次元が違うということが分かってもらえたと思う」

「本当はこうやって話すことは予定になかったが、日本の皆さんに練習で来て、無言で帰るということはしたくなかった。だから、こういう場を設けて自分の気持ちを伝えさせてもらった」

 

 通常の公開練習にしては長い時間、汗を流した。それについて、「自分は1987年から現在までやってきていること。だからこれは自分にとって普通の一日」と語った。最後は「今からショッピングに行く」と締め、ジムを去って行った。あくまでマイペース。それはリングの上でも変わらぬはずだ。

 

 3日後、埼玉の地で、このメイウェザーと対戦する朝倉未来。“路上の伝説”から成り上がったMMAファイターがボクシングルールで、ボクシング界の生ける伝説に挑む。RIZINの榊原信行CEOは「いずれにしても3分3ラウンドで倒すか、倒されるかの試合が観たい。緩い感じで3分3ラウンドを終わってニコニコ抱き合う姿は観たくない」とKO決着を望んだ。

 

 今回の公開練習の会場となったKOD LABの代表を務める内山高志氏は、WBA世界スーパーフェザー級王座を11度防衛し、“KOダイナマイト”の異名をとった名チャンピオンだ。「軽くやっていてもすごいと感じますね。動きにブレがない」とメイウェザーの印象を語り、朝倉未来戦の試合展開を、こう予想する。
「普通に考えたら厳しい。今まで世界の名だたるボクサーたちのパンチが当たらなかったんだから。今回、朝倉選手は身体が大きいので、メイウェザーは無理に倒そうとしないはず。無難にパンチをもらわず、うまく3ラウンド、テクニックを見せようかな、という感じではあると思うんです」

 

 では朝倉未来に勝機はないのか。内山代表は「最初から突進してなりふり構わずやる」ことをポイントに挙げる。
「そうすればメイウェザーもムキになって倒しにくるかもしれない。逆にそうさせないとチャンスはないと思います。普通に距離を取って、ジャブを突くという作戦では、そのまま終わってしまう可能性もある」

 

 それは朝倉未来も承知の上だ。11日に行われた公開練習後、「うまくキレイに戦おうとしたら相手の土俵になってしまう。最初から、(相手の攻撃を)もらいながら行きます」と発言している。一方、メイウェザーは「KOを狙うのか?」との報道陣からの問いに、こう答えていた。
「前回(2018年の大晦日、那須川天心戦)、早めに終わらせてしまったので、皆さんが楽しめなかったと思う。気分次第だが、今回は試合数も少ない(超RIZINは4試合)。3ラウンドまで引っ張ろうと思うが、皆さんの希望が早く終わらせてくれ、というのなら早く終わらせる。皆さんにはShowを届けたい」

 

 あくまで上から目線、そしてエキシビションマッチという姿勢を崩さないメイウェザー。果たして、朝倉未来は、この男にひと泡吹かせることができるのか。日本で屈指のスピードを誇る那須川が崩すことができなかった牙城。容易い挑戦ではないが、予定調和をぶっ壊すような、会心の一撃を観てみたい。

 

(文・写真/杉浦泰介)