先日、公園に行ったら幼稚園の遠足で子どもたちがたくさん遊んでいた。

 マスクをしないで太陽の下、走り回る姿はキラキラしていて、見ているこちらも幸せな気持ちになれる。

 野球をやっている子どもたちに話しかけられたので、少し立ち止まると、「見て見て、ほら大谷翔平 これ村上(宗隆)、これは吉田(正尚)だよ!」とバッティングフォームのマネを見せてくれた。“あぁ、この子たちにもWBCは大きく影響していたのだなぁ”とあらためて感心させられた。

 

 正直なところ、私はそれほど野球好きではない。

 普段はほとんどプロ野球を見ないし、もちろんやることもない。この数年間でボールを投げたのは息子とのキャッチボールだけ。スポーツニュースもサッカーなら見るけど、プロ野球になるとチャンネルを変えたり、携帯をチェックしたり……。

 

 もちろん今回のWBCにも、さほど興味はなかった。野球なんてほんの一部の国で盛り上がっているだけなのに、世界中が注目しているような報道にはうんざりしたし、海外の友人も、大会があることすら知らなかった。ちょっと驚いたのは、アメリカ人でも興味が薄い人が多かったこと。そういえば開幕前に、ロサンゼルス・エンゼルスのキャンプで大谷翔平選手のプレスカンファレンスがあり、集まった現地記者からは誰もWBCに関する質問をしなかった。さすがに日本人記者が聞いたが、関係者の認識はメジャーリーグこそが本筋で、WBCはビジネス主導のメジャー前座興行みたいなとらえ方だったのかもしれない。

 

 でも、やられた!

 日本代表のひたむきな姿。映画のような試合展開。大会が進むにつれ、どんどん引き込まれていった。日本のプロ野球界の頂点にいるスーパースターたちが、カッコつけずに素直に勝ちへの執念を燃やす姿。純粋にスポーツとして惹かれるものがあった。

 

 今の子どもたちの中では、結果が見えているものにトライするのは意味がないし、分からないことは検索するのが当たり前。日本社会全体でも、「一生懸命に取組む」というより、「効率よく取組む」ほうがスマートとされているが、WBCでは選手たちから「一生懸命やることってカッコいい!」という気持ちが全面に出ていたことも素晴らしかった。

 

 全力を尽くすカッコ良さ

 

 スポーツとは結果のために全力で準備し、挑む。その結果、上手くいくこともあるが、上手くいかないことの方が多い。でもチャレンジしていくことこそが大切で、結果だけでなくプロセスにこそ、その深みや面白さを感じることが多い。

 

 まさに「スポーツを楽しむとはこういうことなんだ」というのを体現しているようだった。

 一生懸命取り組みながらも明るく、刹那的な雰囲気がない。これまでの日本スポーツ界にはあまりないものだ。そう、これがスポーツをPlayすることだ、と表現してくれた。中でも決勝ラウンドの試合は、そんな意気込みがひしひしと伝わってきて、ついつい何度も見てしまう。

 

 そして、決勝で対戦したアメリカ代表にも、勝ちへの強いこだわりが垣間見られたように思う。聞くところによると、現地でもWBCへの注目度はトーナメントが進むごとに高まり、決勝は象徴的だったという。確かにこれほど素晴らしい戦いぶりを見せてくれたなら、盛り上がらないはずはない。

 

 あの姿に刺激され、鼓舞された皆さんが「僕たちはもっと頑張れる」、「一生懸命、泥だらけになりながら取組むことは、結果に関わらずカッコいいんだ」という認識を持ってくれたら嬉しいし、きっとそんな影響は少なからずあるはずだと信じている。

 

 まさにスポーツの力!

 侍ジャパンの選手や関係者、また大会関係者の皆さんに心から感謝したい。

 

 WBC効果で私は今シーズン、プロ野球が気になっています!?

 

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール

17shiratoPF スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。17年7月より東京都議会議員。著書に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)。最新刊は『大切なのは「動く勇気」 トライアスロンから学ぶ快適人生術』 (TWJ books)

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