三浦愛華(陸上・世界リレー日本代表/愛媛県競技力向上対策本部)第1回「スタート得意のスプリンター」
女子4×100mリレー日本代表は、バハマ・ナッソーでパリ行き切符を掴めなかった。
「個人としても、チームとしても悔しさが残る大会でした」
そう語るのは初日、2日目と第1走者を務めた三浦愛華(愛媛県競技力向上対策本部)である。今、日本スプリント界で勢いに乗る選手の1人だ。
世界リレーでは14位以内に入ればパリオリンピックの出場枠を獲得できるため、初日の予選で各組上位2着以内に入れば文句なしに出場権を手にできた。3着以下でも2日目のレースで各上位2着以内に入ればいい。日本は初日、アメリカと同組。44秒16で7着と決勝に進めなかった。2日目はタイムを少し縮めて43秒63だったが順位は6着。この大会でのオリンピック出場権獲得はならなかった。
「1本目からあのタイムを出していたら、次の日は変わっていたのかもしれないとも思います」
大会直前にエース格の君嶋愛梨沙(土木管理総合試験所)がケガで離脱するアクシデントがあったとはいえ、他国との実力差を見せつけられたかたちだ。それでも三浦は下を向かず、前を見据えている。
新社会人となってからはピンクを基調としたユニホームを纏い大会に出場する。颯爽とトラックを駆け抜ける姿は、どこか桜の花びらを連想させる。三浦愛華の名を轟かせたのは、パリオリンピックシーズンの春だ。今年4月の日本グランプリスプリント初戦の吉岡隆徳記念出雲陸上だ。世界リレーの日本代表選考会も兼ねていた女子100mで、君嶋、鶴田玲美(南九州ファミリーマート)といった日本のトップスプリンターを差し置いて優勝。予選では11秒45の自己ベストをマークした。
桜の季節に開花した才能
スタートが武器のスプリンター。世界リレーに向けた日本代表合宿で、信岡沙希重・女子リレーコーチも「元々力はありましたが、今回の出雲で開花した印象があります。いい時も悪い時もあった中で、しっかり力を付けてきた。スタートからの加速は出雲でもずば抜けていました」と高く評価していた。
本人に聞くと、春の好成績はある種必然だという。
「“パリオリンピックに出たい”という思いが去年からありました。そこに出るためには、まず出雲で世界リレー代表に入らなけばいけないと思っていました。そのための準備を冬期から積んでいましたから」
開花の予感は去年からあったという。しかし、前年の出雲陸上で2連覇を果たしたが、「もうちょっとタイムが出そうやな、と思っていたところでケガをしてしまったんです」と日本選手権出場も叶わなかった。
園田学園女子大学を卒業し、今年4月からは新社会人となった。愛媛県競技力向上対策本部に所属する。奈良県奈良市生まれで、大学も兵庫県。「関西生まれ、関西育ちの彼女がなぜ愛媛に?」との疑問をぶつけると、「園田では毎年3月に愛媛で合宿をさせてもらっているんです。その繋がりからですね」と笑顔で答えてくれた。これまで歩んできた道で繋がった縁が、これから先の道を拓いていく。
スタートダッシュを得意とする彼女だが、陸上人生のはじまりは中学生からと、それほど早くない。中学時代は全国大会と縁がなかった。三浦愛華というスプリンターの源流を辿る――。
(第2回につづく)
<三浦愛華(みうら・まなか)プロフィール>
2002年2月14日、奈良県奈良市出身。中学生から陸上を始める。添上高校を経て園田学園女子大学に進んだ。2年時の3月には日本室内選手権女子60mで、7秒38のU20室内日本新記録をマークして優勝。3年時から日本グランプリの出雲陸上競技大会で、女子100m3連覇中。4年時にはワールドユニバーシティゲームズでは4×100mリレー日本代表に選出され、4位入賞に貢献した。今年5月の世界リレーで4×100mリレーの日本代表として出場した。100mの自己ベストは11秒45。憧れのアスリートはフィギュアスケートの浅田真央。身長158cm。
(文・写真/杉浦泰介)