2008年10月、大きなニュースが飛び込んできた。愛媛FCが、ドイツ・ブンデスリーガ2部の「SCフライブルク」とフレンドシップ協定を締結したというのである。
 愛媛FCのホームスタジアムがある愛媛県松山市とドイツのフライブルク市は、20年間に渡り、姉妹都市としての交流を続けてきた間柄だ。
(写真:SCフライブルクとのフレンドシップ協定締結書)
 そのフライブルク市をホームタウンとして活動するサッカーのクラブチーム「SCフライブルク」は、100年以上の歴史を有す。現在は2部だが、過去にはブンデスリーガ1部への昇格と同カテゴリーでの活動経験を持ち、UEFAカップ本大会にも出場を果たすなど、名門クラブと言えるチームである。
 
 愛媛FCがまだ、四国リーグで活動していた頃には、「愛媛FCがJリーグ昇格を果たした暁には、築き上げた姉妹都市の関係を活かして、SCフライブルクとの強力なパイプを作れないだろうか?」などと、“夢の話”として妄想を働かせていたものである。また、このコーナーでも、その協定構想を提案させていただいたことが過去にも何度かあった。

 それくらい、私にとって「SCフライブルクとの協力体制」は、待ち望んでいたものであり、憧れだったのである。そして今、それが現実となって、とても嬉しく感じている。フライブルク市を通じて「SCフライブルク」へと強力に働きかけてくれた、中村時広(松山市)市長や亀井文雄(愛媛FC)社長には、感謝の気持ちでいっぱいである。
 
 FIFAワールドカップにて3度の栄冠に輝いたドイツ。そのサッカー先進国にあるクラブチームにとってみれば、日本のJリーグ1部での活動経験もないクラブとの協力体制など、何のメリットも感じていないのかもしれない。それでも愛媛FCとしては今回、幸運にも得たチャンスなのだから有効に活用していただきたい。
 
 ブンデスリーガの中にあり、スカウティングや選手育成能力に定評がある「SCフライブルク」。愛媛FCユースチームの選手たちを留学させてみては、いかがだろうか? さらには、チーム指導者の教育にも長けていると聞いているので、コーチングスタッフにも乗り込んでいただき、フライブルクの育成技術を盗んできてもらいたい。また、運営費を抑えつつ、チーム強化に成功した「SCフライブルク」の経営ノウハウも、是非とも手に入れてほしい。
(写真:SCフライブルクのユニフォームとペナント、マスコット)

 そして、世界的に進んでいるフライブルク市の環境政策も見習ってもらいたい。「サッカーとは、関係無いのでは?」と思われるかもしれないが、「SCフライブルク」のホームスタジアムである「バデノヴァ・シュターディオン(収容人数25000人)」の観客席を覆う屋根の上には、 ソーラー発電パネルが敷き詰められ、発電された電気はスタジアムで使われるほか、電力会社にも売られ、エコ発電が収入源の一部となっているのだ。まだまだ先の話かもしれないが、愛媛FCの新ホームスタジアムが建設される際には、大いに参考になる材料が「SCフライブルク」の周りには存在していると思うのである。
 
 何といっても観てみたいのは「愛媛FC対SCフライブルク」のエキシビジョンマッチである。できれば、“姉妹都市ダービー”として、毎年恒例のイベントにしてほしい。歴史的第1戦は、是非ともニンジニアスタジアムで開催していただきたい。試合当日は、スタジアムの周りにJ2公式戦で見られる「マッチシティ」のような地域物産品が味わえる露店を出店していただきたい。

 もちろん、その中には、フライブルク市の露店もあって、本場ドイツの美味しいソーセージやビールを味わいながら試合を観戦してみたいものだ(おっと、失礼。夢を語り始めたら、止まらなくなってしまいました……)。
  
 今年の春には、Dr.ディーターサロモン(フライブルク市)市長が、松山市を訪問される予定もあり、タイミングが合えば愛媛FCのJ2公式戦を観戦なさるかもしれないとのこと。スタジアムに来られた際には、心から歓迎したいと思う。

 国内だけではなく、よりグローバルな活動へと歩み始めた愛媛FC。今後の動向に注目していきたい。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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