今朝、自転車の練習で荒川に行った。この季節は寒いのはもちろんだが、非常に厳しい風が吹き、上流に向かって走るのは辛い。こいでもこいでも進まず、自転車が嫌いになりそうだ。まさに人生向かい風……。
(写真:2009年、新たな年が日の出を迎えた)
 そう、現在の日本を、いや、世界を取り囲む環境は向かい風だ。レバレッジで盛り上がった米国経済は100年に1度というダメージを負い、その余波でゆるやかに上り調子だった日本経済も痛手を負った。米国という大物の風邪が世界中に広まり、まさに世界中の国々は風邪っぴき。いっそ、地球上を学級閉鎖にしたいくらいだ。報道もネガティブなものが相次ぎ、人々の気持ちもどんどん暗く、希望を持てない感覚が蔓延している。嘘の報道をしろという訳ではないが、こんなNewsばかりでは元気な人まで調子を崩してしまうかもしれない。

 そんなお正月、珍しく東京で過ごした私はTVから元気をもらった。別にお笑いや歌番組に感動したわけでない。そういえば在日外国人の友人が、日本のTV番組はバラエティーが多いことに驚いていた。日本語がまだまだな彼はTVを見ていても面白くないらしい。でも、お正月はそんな彼でも楽しめる番組があったのではないか。そう、スポーツ中継だ。実業団駅伝に始まり、箱根駅伝、大学ラグビー、高校サッカーとスポーツ目白押し。そして、これらの中継から素直にエネルギーをもらうことができた。
(写真:新春スポーツ中継の花形、箱根駅伝)

 スポーツで勝とうとしている人は皆、切磋琢磨、努力をしている。これはプロアマ関係なく共通のものである。ただ、プロの場合、勝つことにも負けることにもある意味慣れているため、選手たちの感情表現は大きくない。ところが高校生や大学生はどちらにも慣れていないし、勝負師としてのキャリアが短いために、感情が表に出ることが多い。そして、そのメディア慣れしていない彼らの純粋さ、ちょっと正直すぎるひたむきさが心を惹きつけるのだろう。悪い言葉でいうと「馬鹿正直」な、でもその「一生懸命」さがひしひしと伝わってくるのだ。

「一生懸命」、最近ではスポーツの世界でも効率とか科学とかが幅を利かして多用されなくなった言葉だ。しかし、こんな時代だからこそ「一生懸命」が心に響く。無理かも、無駄かもと判断して見切りをつけるのが大人のスマートなやり方なのかもしれない。だが、最後までもがき続ける精神力のようなものが物事を動かすこともある。先が見えないときこそ、最後まで希望を捨てずに頑張り続けることが重要なのだと……。そして、苦しいところを自分で乗り越えたもののみが知り得る強さを彼らは身につけていくはずだ。

 少なくともTVを見ていた私やその他の数千人、いや数万人はそう思ったと信じたい。
 そう、今年は「一生懸命」という言葉を大切にしようと思う。

 荒川は相変わらず風が強い。
 でも、上りを折り返し、下流に向かって走り出すと快適な追い風が待っていた。
 うーん、これなら自転車が好きになるかも!

 やはり苦しいことを一生懸命乗り越えたあとは格別。
 人生追い風もあるさ!?


白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール
 スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦している。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための新会社「株式会社アスロニア」の代表取締役に就任。
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