東北楽天の山武司がオールスターゲームで2試合連続ホームランを放った。40代での球宴2戦連発は史上初だそうだ。
「中年の星」と呼ばれる山だが、かつては“暴れん坊”として通っていた。

 オリックス時代は監督の伊原春樹(現巨人ヘッドコーチ)とソリが合わず、監督室に殴りこみをかけたというウワサが球界を駆け巡ったりもした。
 あれは本当だったのか?
「いや、殴ったわけではないのですが、やっぱり合わなかったですね」
 苦笑を浮かべて、そう語った。
 しかし、人間、何が幸いするかわからない。
「中日時代も含め干されていた34歳から36歳までの3年間があるから今の自分がある」
 山はこう言うのだ。
「あまり使ってもらえなかった3年間というのは、精神的には地獄でしたけど、肉体的にはリフレッシュできましたから」

 昨年まで楽天の監督を務めていた野村克也はバッティング練習を見るたびに「まだ打球が若いのォ」と言って目を細めていた。
 40歳を過ぎても飛距離がいっこうに落ちないのは3年間の“リフレッシュ休暇”が要因かもしれない。
 元々はキャッチャーだったが、持ち前のバッティングをいかすため早々と野手に転向した。
 球界を見渡すと、キャッチャー出身のベテランが大活躍している。巨人の小笠原道大、中日の和田一浩が代表格だ。
 自身もプロに入ってキャッチャーから外野手に転向した金森栄治(千葉ロッテ1軍打撃コーチ兼野手チーフ)がこう語っていた。

「キャッチャーのスローイングとバッティングには共通点がある。ともに足腰が強くないと上達しないんです。キャッチャーのスローイングはコンパクトな腕の振りで強く正確なボールを投げることが基本。つまり力のまとめ方が重要になる。バッティングも同じなんですよ」
 なるほど、この説は目からウロコである。

<この原稿は2010年8月16日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

◎バックナンバーはこちらから