野村萬斎×羽生結弦のラジオ放送後、脳裏によぎったミーティア
羽生結弦が7日、NHKラジオ第1「野村萬斎のラジオで福袋」にゲスト出演した。2人はこの3月7、8、9日にセキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)で行なわれた「notte stellata 2025」で共演。彼らはアイスショーに込めた思いや、鎮魂と再生などについて語り合った。
ラジオの後編は14日
2人はラジオ内で、東日本大震災当時の心境について振り返った。まずは萬斎――。
「3.11の日、実はパリにいたんです。日本のニュースを聞いて随分、歯がゆい思いをしました。私はその場にはいられない。家族も、東京ではありますけれども、いろんなことが心配になったりしました」
そして萬斎は、羽生に「どん底に落とされたような気持ちの中で見上げた星空が?」と水を向けた。すると彼は「まだ海外試合が多くない時だった……」と前置きし、続けた。
「流星群が見える、というニュースが流れてきて一度、山に行って流星群を見たことがあるんです。(被災後に見た星空は)あの時の星の輝き方とはまた違う神聖さがあった」
被災した羽生は、避難所で見た満天の星空から希望を見出した。ちなみに、アイスショーのタイトルになっているイタリア語の「notte stellata」は、日本語で「満天の星」「星降る夜」を意味する。
星空から希望を感じつつ、苦しかった当時の胸中を吐露した。
「生活の基盤が一切なくなった状況で、スケートというものを望んでいいのだろうか。そもそも、スケートという言葉を発していいのだろうか……。というところまでやっぱり当時は、考えました」
「舞い」という観点での類似
しかし、羽生はスケーターとして強い意志を持ち、立ち上がった。ラジオ内で萬斎と “フィギュアスケートと能狂言は舞いという点で類似点がある”と共鳴し、五輪を連覇したスケーターはこう語った。「3.11から、応援されてきた立場として、応援してくださる方々の期待に応えるために滑り続ける」
先の2つのコメントから、私の脳裏には「Meteor-ミーティア-」がよぎった。ミーティアとは、T.M.Revolution/西川貴教が歌う機動戦士ガンダムSEEDシリーズの挿入歌である。西川と羽生は、ファンタジー・オン・アイス2024の幕張公演(5月24、25、26日)、愛知公演(5月31日、6月1、2日)にて、この楽曲で共演した。
私は幕張公演初日を取材した後、当サイトにこう記した。
<ミーティアは日本語で流星などを意味する。かつて、被災したのち、避難所で見た星空から希望を見出した青年がいた。(中略)
このアニメ(※ガンダムSEED)の主人公は“戦いたくない。でも、自分が戦わないと大勢の人が報われない、助からない”という葛藤を抱えながら戦場に出ていった。
“こんな状況で自分はスケートをやっていていいのか。でも、たくさんの支えがあってスケートができている。自分が勝ち得た成果で人々は喜んでくれる”と覚悟を決め、王者になるため茨の道を歩んだ青年を、我々は知っている>
覚悟を決め、突き進んだ茨の道の先で、青年は五輪の金メダルを2つ胸に飾った。青年は大人になり競技の枠を超え、狂言師と異例の共演まで実現させた。次は、何を語ってくれるのだろう。
(文/大木雄貴)
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